第22話 スケボーも急には止まれない
子ブタはマフェスタと名乗った。しかし可愛らしい外見とは違い男と聞いて、アドラスはあひる、いや、うわの空であった。シェードはというと、マフェスタの話に食いついて何やら2人で盛り上がっていた。なまじマフェスタが女の子っぽい外見なので、側から見たらそれこそカップルのように見える。
「…アオハルかよ」アドラスは下唇を噛みながら、空を見上げた。悔しかったんじゃない。ただ、ほんの少し目にゴミが入っただけ。
「そろそろ、その、なんだ、あのぉ、行きませんか。」なぜか、丁寧語になってしまったアドラスの呼びかけに2人は応じて、再びマジレグンを目指すことになった。
「あそうだ、今度はアドラスさんがブエナビスタに乗ってみます?」シェードが屈託のない笑顔で聞いてきた。彼にしてみれば本当にただただ好奇心で聞いただけであったが、アドラスにしてみてれば「俺とマフェスタの邪魔しないでもらっていいすか?」としか聞こえなかった。
「お、おぅ」そう言い返すのがやっとであった。「乗ってプッシュ(片足で地面を蹴ってスケートボードを走らせる)したら後は勝手に走り出すんで」シェードの説明を聞いてはいるが、俺の、いや、うわの空であった。
説明もそこそこに、シェードとマフェスタは仲良く喋りながら即席の車両に乗り込んだ。マフェスタにいたっては、もう子ブタの被り物すら身に付けていない。筆者もこれ以上「子ブタ」と打ち込むこともないのだろうと思うと、少しセンチになった。寂しかったんじゃない。ただほんの少しいい歳した大人が小説で子ブタって書くのってどうよと思っただけ。
そして、勢いよく大地を蹴って走り出したアドラスはふと思った。
これ、どうやって止まるの?




