第十一話:ふんどしと世界の謎と星力と
「オイなんかやべぇ奴がきたぞ。つーか突然出てこなかったか今」
「ファッションセンスがイマイチですね。【テル】さんレベルで変態です」
「まあまあ!せっかくこの私が話しかけて差し上げましたのに随分な物言いですこと!」
俺の前に座っている二人からは、俺の後ろから声をかけてきた人の姿が確認できるようで、好き勝手に感想を言っている。
というか【ひとみ】さんの言うふぁっしょんせんす?ってたぶん見た目のことだよな。
俺の花嫁衣裳姿を生み出した人が言えたことではないと思う。
いや逆に言えば声をかけてきた人の姿はいい感じの可能性もある。
でもなあ。
口調はお嬢様っぽいけど、声が野太いというか、男声にしか聞こえないんだよなあ。
まあこうして考えてるだけじゃ進まない。
意を決して振り返ってみるとそこにいたのは。
上半身は法被、胸部には晒、下半身は褌のみという出で立ちの、お祭りでよく見るような姿の人だった。
顔だけ見ると女性っぽくて、髪は綺麗にお団子でまとめられている。
でも・・・申し訳ないんだけど、でも声が野太いのが気になって仕方ない。
「ようやくこちらを向きましたわね!どうですこの姿!先程あなたを見て私感銘を受けましたの!いいでしょう!?」
しまった。
褌被害者を作り出してしまったのは俺だったらしい。
というか男声が気になるからお祭りらしく仮面でも被ってほしいところだ。
「ええと、そうですね。はい。いいと思います」
俺はとりあえず肯定しておいた。
初対面の人にそれ以外何を言えるだろうか。
というか、俺は既に下着としての褌から逃れて頭に褌を巻いてるんだけど、そこは気にならないのだろうか。
なんなら今は花嫁姿の奇怪な恰好なんだけど。
「ふふふ。そうでしょうそうでしょう!でもあなた、【てる】さんでよろしいかしら?褌一枚はおやめになったのですね。あちらの方が素敵でしてよ!」
「あなたもそう思いますか!先程イマイチだったと言ったのは撤回致します!あなたのセンスは素晴らしいです!」
やばい。
このままだと再び褌一枚になってしまう流れがきそうだ。
いやそもそも【ひとみ】さんは俺の褌一枚の姿を見て変態といっていたはずだけど。
いや、そうか。
褌を褌本来の用途として使っていることに意味があるんだろう。
だからと言って褌一枚に戻る気はないけれど。
なんなら花嫁姿でいる気もないけど。
ってとりあえず話をそらさないと。
「あの、それで何の御用でしょうか。俺たちの話を聞いていたようでしたが」
「あら!そうでしたわ!私、あなた方が黒い靄?というのや穴への分析を聞いてしまいまして、とっても面白そうだと思ったのです!」
すごく聞いてる。
盗み聞きというやつではなかろうか。
まあ悪意はなさそうだし、目くじらを立てることもないか。
「おー!わかってるじゃねーか!このまま星が死んでくのを黙って見てる奴らたー違えなあんた!」
「いえ、私が面白いと思ったのはその思考過程ですわ。私自身は滅びを受け入れることに肯定的ですわよ」
「ハァ!?」
なるほど、彼女・・・彼?まあどちらでもいいか。
この人は俺たちの話が面白いと思ったから話しかけてきただけで、何かを成そうという気はないのかもしれない。
あとたぶん、褌姿を見せつけたかったのもありそうだ。
「じゃー何で話しかけてきやがった!見せもんじゃねーぞオラァ!」
「まあ怖い。でもお聞きになってくださいな。もしかしたら、『星力』と穴、そして黒い靄。それらに繋がりがあるのではと考えたのです」
「あーん?どういうこった?」
なるほど。
【ひとみ】さんの話によれば、穴は『星力』の暴走によってできたとされているらしい。
そして黒い靄も関係しているとすると、『星力』の代償という可能性もあるのではないだろうか。
でもあの黒すまほの先祖・・・恐らく構成素材?は機械語で示されていたあたり、『星力』とは関係なさそうな・・・。
いや待て。
『星力』自体が何らかの機械的な構造から生み出されているとしたら。
もしかしたら『星力』は、超常現象ではなく、超常現象と間違われるくらいに発達した科学技術なのかもしれない。
まあ、証拠は何一つないけど。
「どういうことと言われてもわかりませんわ!なんとなく感じただけですもの!」
「オメェもしや勢いだけで話しかけてきやがったな!?嫌いじゃねーけどよそーいうの!」
「あらうれしい」
「でも一理あるのではないでしょうか。【テル】さん、聞きそびれていたことですが、【テル】さんは複数の『星力』を使われていましたよね。あれはどういうことなのでしょう。それも繋がりの一つとして重要なのではないかと感じます」
そういえば俺の『星力』についてはまだ話してなかったか。
考えてみれば俺だけが複数の『星力』を使えることと、全ての黒い靄に遭遇したのは俺だけということに関係があってもおかしくない。
「お!そういやそうだったな!聞いて驚け【ヒトミ】!【テル】の『星力』は他人の『星力』コピーして自分のもんにできんだぜ!」
「それは・・・聞いたことのない『星力』ですね。歴史上、人間1人が持てる『星力』は1つであって、例外はなかったはずです。・・・そういえば【アマノ】さんの『星力』は合成ができますよね・・・もしや」
「さっすが【ヒトミ】!冴えてんなー!そうだぜ!『ぼくのせんぞたち』は【テル】が持ってた『星力』を合成して作ったやつだ!」
俺が話す前にだいたい説明されてしまった。
まあ隠しているわけでもないし、手間が省けたと思おう。
「まあまあまあ!とっても面白いですわ!でも【てる】さんだけが毎回黒い靄に遭遇してらっしゃるということは、【てる】さんの『星力』に関係がありそうな予感がしますわね」
おっと、面白がるだけじゃなくて、俺と同じような考えをしてるのか、このお祭り褌お嬢様。
「あぁーたしかにありそーだな!やべえ奴だと思ってたけどけっこうやるじゃねーか!」
「そうですね。可能性としてあり得そうです」
「そうだ!もしよろしければ、【てる】さんの『星力』、見せて頂けませんこと?私とっても興味がありますわ!」
褌お嬢様が俺の隣に座ってきた。
中々図々しい。
そうだなあ。
できれば実践してあげたいところなんだけど・・・。
「すみません、今は見せることができないんです」
「は?今は使えないってことか?あー条件が厳しいとかか?」
【あまの】さん鋭い。
そう、俺の『星力』は強力だ。
だからこそだと思うけど、使うための条件も、代償も重い。
「その通りです。複製するための条件としては―
一、対象の『星力』が発動中に『おれもそれつかいたい』を使用すること
二、対象が自身の『星力』を複製されることを受け入れること
三、前回複製した時から三十日以上経過していること
四、保持している複製した『星力』が二つ以下であること
になります。特に三つ目が厳しいですね。あと二十日くらいは使えません」
「なるほど・・・。ということは、最大でも複製した『星力』は3つまでしか保持できないのですね。時間の制限もありますし、そうそう使えない。使いどころが難しい『星力』ですね」
「あら残念ですわ。見てみたかったですのに。でも仕方ありませんわね!」
期待に沿えず申し訳ない。
「つーことはあたしの『星力』で合成するときの結果も考えながら複製しねーとだな!まあランダムだからあんま関係ねーかもだけどよ!」
ふむ。
そのらんだむ、というのも少し疑問がある。
「いえ、【あまの】さん。『あわあわふわふわ』と『せんぞのしんぱい』を合成した結果は『ぼくのせんぞたち』で、効果的には泡も先祖も含まれていました。つまり―」
「あー!完全にランダムじゃねーってことか!?オイオイやっぱ複製する『星力』選ぶの超重要だな!」
うん、【あまの】さんはやっぱり頭が良いと思う。
猪突猛進なところがあるだけで。
「それでは、これからの予定としては、二十日以内に合成して有用そうな『星力』を見つけることに致しませんか?仲間を探すのも同時にやれば効率的です」
【ひとみ】さんが秘書っぽい見た目通りに予定を立ててくれた。
そうだな、それがいいと思う。
恐らく一気に穴を塞げるような『星力』合成は無理だと思うけど、少しずつでも進んでいくべきだ。
「よっしゃー!やる気出てきたー!あ!仲間で思い出した!あんた名前は!?一緒に行こーぜ!」
おお、さっそく【あまの】さんの勧誘が始まった。
こういう即断即決は【あまの】さんらしいよなあ。
「お断りしますわ!」
えぇ・・・。
これだけ会話に参加しておいてまさかの拒否。
この人ほんとに何なんだ・・・。
【あまの】さんは褌お嬢様に詰め寄ってさらに勧誘してるようだけど、とりあえずぎゅーしょくを出て複製する『星力』と仲間探しにでかけよう。




