告げ口の刑――ジャン・ヴァルジーがやって来た!
★救世主登場回です。
闇夜の中、ぼぅ〜と松明が灯る庭を横切って、屋敷の門らしき場所に出た。庭師のオジサンが見当たらないけれど、誰が松明を灯しているんだろう?
庭のまわりは低い石垣になっている。
今夜は曇り気味で月はあまり見えないし、道もよく分からないし、とにかく暗い。
あ〜、これは無理だわ。
無理無理、無理。
買い物以前の問題。
生命の危機。
『ホゥ~ッ』と、フクロウの鳴き声がした。バサバサッという羽音も。
「ヤバッ、獣に出会ったらどうしよう……」
森の向こうにぼぅ〜と明るくなっている場所があるから、あそこが町かな? あそこへ行けば、お店があるのかな? 露天商とかそういうの。
仕方ないから行ってみよう――森を通り抜けなければならないけれど。
「う〜、寒い……暗くて怖い……足元がよく分からない……誰か……」
そんなことをつらつらと思いながら、狭い道をひたすら足元を見ながら歩いていたら、石につまづいてすっ転んだ。
「いった〜い……」
チャリ〜ん!
「えっ? 落ちた? お金が……ポケットから落ちた!?」
ヤバいよ、パン買えないよ、お菓子も……お金、どこ行った?
薄暗い中、手探りでお金を探す。
「無い、無い無い……どうしよう……」
あるのは絶望だけ。
もう、このまま死んじゃおうかな~。あんな屋敷に戻るくらいなら、死んだ方がマシかも。
そのとき、ガタガタガタ……と、馬車の音(?)がした……と思ったら、『どう、どう!』という掛け声と馬のいななきと、数人の話し声が聞こえた。
「誰かいるの? 誰でもいいの、助けて……しんじゃう……まだ死にたくないよぉ……」
一週間のあいだほとんど食事をしていなかったわたしはその場で力尽き、フラリと倒れてしまったのであった。
今ごろ元祖コレットは、お母さんの作った美味しいゴハンを食べてるんだろうな。羨ましい……。
お母さん、毎日お料理してくれてありがとう……。
※
「もし、大丈夫ですか……」
な、なんか、お姫様抱っこされてるぅ?
「はい……?」
気が付くと、おヒゲを生やした身体の大きなイケオジに抱っこされていた。四角い顔で、ガタイがすごい。二メートル近くあるような? NBAの選手かな? お目にかかったことはないけれど。
高級そうだけど少しくたびれた感じのコートを着ている。
な、何か、柑橘系の香水もすごいんですけど。
ジャン・バルジャンもとい救世主オジサマきた~!!!
※
「わたしの名前はジャン、ジャン・ヴァルジー」
「えっ、ジャン……ばるじー?」
な、なんだか聞いたような名前だわ。
かもし出すオーラと威圧感がすごい。ひと睨みで相手を屈服できそう。どことなく……あの肖像画のイケオジに似ているような……。
「我々はこの先の屋敷に用がある。もしかしたら、君はコレットかい? 髪の毛や瞳の色が弟の妻に似ている」
「確かにわたしの名前はコレットだけど……まさか、わたしの伯父さん?」
「やはりコレットだったか! どうしたんだこんな夜更けに、それもやせ細って、しかも、こんなに小汚い格好で?」
「小汚い……」
ほんのり失礼だな!
でもラッキー、今のうちにアイツらの悪行を言いつけてやる!
「あのね、あのね……」
ということで、クズ一家と哀れな自分の状況を、尾ひれをた〜っぷり付けながら告げ口したのでした。
ざまぁ。
「何という事だ! 手紙ではリュミエールも娘も元気で、コレットには家庭教師をつけていると書いてあったのに……コレットには毎月相当な金を送っていたというのに!」
エエェッ、そうだったの?
あの人たち、コレットについて嘘の申告をしてたの? しかもコレットのための金をチョロまかしてたの? コレットを生かしておいたのは、お金が欲しかったから?
最低だな!
ネット小説なら爵位剥奪で追放だな!
死刑だな!
ところで、リュミエールって誰? コレットの母親?
「リュシアン、コレットを頼んだ」
「はい」
後ろで様子を見ていたひとり、リュシアンというイケメン青年がわたしをお姫様抱っこした。天パ黒髪で、映画版ハリー・ポッターみたいなカッコカワイイ感じ。
イケメンにお姫様抱っこされるなんて、ちょっと恥ずかしい。
で、でも、この人は何となくあの肖像画に……。
「ずいぶん軽いんだね。あまり食べられなかったのかな? 屋敷へ行ったら軽く食べてゆっくり休んで」
「ありがとう……ございます」
リュシアンかぁ……。
アンタいい奴だな。
「ロンダ、屋敷に行ったらコレットの世話を頼む」
「もちろんですわ、ジャン」
ひょっこり現れた、黒髪ロン毛で品のよさげな、宝塚風美人お姉様。この人も何となくあの肖像画に……。
この三人は家族なんだろうな。
品のないクズ野郎一家とは全然違うな!
☞爆笑ものの手書きイラストを載せました。背景はphotoshopです。半分あの有名な挿絵をパロって、あとの半分は作者の画力の限界です^_^;。想像の世界を書いているだけなので、背伸びする必要はないかなと……AIに頼るのはやめようかな~と……。
☞次回は超バイオレンス・リアルざまぁ回です。警官?そんなものはいません。




