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ダメなわたしが転生したら、やっぱりダメでした――ドアマットヒロイン勝利のお知らせ!  作者: 赤城ハルナ


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衣装崩壊の刑

 シュッシュッ……。


 早朝からお約束のエントランス前の掃き掃除。

 何だかな~、こんな感じの古い挿絵があったような気がするな~。


 昨日、屋根裏部屋での監禁が解けたばかり。


「人手不足だから仕事をしなさい!」と、髭の生えた執事みたいな人に叱られて、部屋を出されたの。


 この屋敷の人たちって怒りっぽいの? カルシウムが足りないんじゃない? 鳥の骨でもしゃぶればいいんじゃない?


 ウ〜ン、エントランスの葉っぱは相変わらずですけど。

 全然やる気ないんですけど。

 というか、庭のお掃除なんてする意味があるの?

 そういえば、親切な庭師のおじさんはどこへ行ったんだろう?


 一体いつまでこんなことをしなければならないんですかね。

 元祖コレットは今頃どうしているんでしょう。


「ハァ〜……ダル〜……お腹空いた〜……」


 十分な食事を与えられていないので力が出ない。

 最近、ロッテンマイヤーさんみたいな怖いオバサンを見かけない。

 いなくなったのかな?





「お帰りなさい、オドレイ。寄宿学校の休暇はいつまでなのかしら?」


 エントランスでそんな会話を耳にした。

『オドレイ』とは?


「来週までよ、お母様」


 あっ、この屋敷のリアル『お嬢様』でしたか。どれどれ、どんな人か見てみよう。

 波打った茶髪と茶色い瞳。わたしとは全然似ていない。どちらかというと階段落ちしたオバサン――たぶんお嬢様の母親に似ているかも。オバサン、まだちょっと歩きにくいみたいだな。


 でも……少し……というか、ぽっちゃりしてない?

 まさかと思うけど、あのオバサン、コレットの母親じゃないよね?

 あのお嬢様はわたしの姉じゃないよね?


「あら、コレットじゃない。超久しぶりね」


 ゲッ、見つかった。


「相変わらずみっともない姿。ドブネズミみたい、キャハハ!」


 誰のせいだと思っているのか。

 思い切り殴りたいわ、ここの住人全員を。





「コレット、このドレスの裾が少しほつれてしまったわ、直してくれる?」


 は?


「あさって伯爵家でパーティーがあるの。それに間に合わせてちょうだい」


 は?


「いいからさっさとやって!」


 監禁の刑が解け、二階の窓拭きをしていたら、オドレイとかいうお嬢様に縫い物を指図された。

 自慢じゃないけど、わたし、縫い物なんてできません。小学校の家庭科でティッシュケースを縫ったことがあるくらい。縫い目が不揃いで不格好だったけど、何とかイニシャルも入れたよ。


『何だよコレ、KM? 琴美のイニシャル? 読めね〜ワッハハハ!』と、同級生からバカにされたっけ。


 お嬢様から裁縫道具を渡されたけど、難しすぎる。

 琴美だったら、ここまでほつれた服は捨てていたんだけど。

 どうすればいいの?





 ほつれていたのはクリーム色のドレスのボトム、裾から縫い目に沿って五センチくらい縦に裂けている。何かで引っかけたみたいな感じ。ドレスは絹で作られた高級品のようだけど、何だろう……裾に何ヵ所か直した形跡がある。


 もしかしてここのお嬢様はそそっかしいのでは。

 新しく買えばいいんじゃないの? だってここ男爵家なんでしょう? お貴族様なんでしょう? お金持ちなんでしょう?


 使用人がだんだん減っている気はするけどね!





 裂け目を合わせてピンで止め、最後にグイッと生地のシワを伸ばそうとした。


 ビリリッ!


 裂け目が広がってしまった。


 あちゃ〜。


 と、とにかく、裂けた箇所を縫い合わせればいいんだよね。というか、ミシンはないの?


 なさそうなので手縫いです。

 白い絹糸を針に通してほつれた所を合わせて縫っていく。

 チクチクチクチク……。

 ええ~、つるつるしてやりにくいよぉ。時間がかかるよぉ……。


「できました!」


 翌日の昼下がり、わたしは居間にいたオドレイお嬢様にドレスを渡した。お嬢様は母らしき例のオバサンとティータイム中だった。


(わぁ~、おいしそうな……何かな? ジャムを挟んだパンケーキ?)


「遅かったわね! まったくアンタは鈍くさいんだから! まぁいいわ、あさってのパーティーには間に合ったから」

「コレット、お裁縫ができるのならわたくしのドレスも直しなさい」

「……」


 もう嫌です。


 誰かに仕事を言いつけられる前に、屋根裏部屋に避難しよう、そうしよう。その前に、厨房からパンを拝借しよう。


 そういえば、最後の糸止めやったっけ?


 まぁいいか。





 翌日の深夜、満足な食事を与えられずお腹が空いていたので、浅い眠りでうとうとしていたとき、いきなり屋根裏部屋の扉が開いて蹴飛ばされ、ベッドから落とされた。


「痛い~!」


「どうしてくれるのよ、コレット! あんたの縫い方がダメダメだったから、わたしのドレスが破れてしまったじゃない!」


「痛い……眠い……」


「すっとぼけてるんじゃないわよ、伯爵家のパーティーだったのよ、皆から笑われたじゃないの、どう責任を取ってくれるの!?」


 そんなこと言われましても……。


「もうコレットは生涯監禁しましょう、これ以上何かされたら屋敷が無くなってしまいますわ」

「そうね、お母様。今後食事は一切与えないことにしましょう!」

「ここで反省して朽ち果てなさい!」


 母子揃って酷い。


 わたしの餓死フラグが立ったのです。

☞次回は『毒メシの刑』です。住人全滅の予感が……。

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