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彼女の頭の中にある寓話 8


 今朝までこれほどの危機があり得るなんて知りもしなかった、私の全てを終わらそうとする衝撃を感じ続けていた「愛」の恐怖は、今まで腹の底から湧いていた怒りをとっくに凌駕していました。この抜き差しならない極限は果たして自分を試しているのか、逃げ出せないだけなのか、分からなくなっていました。一方、巨木は歩き出さずにまだ我慢していました。「愛」が残っているからです。しかしこちらも言葉をかけて説得するだけの余裕はありませんでした。


 事態を動かしたのは「影」です。巨木の「影」は、予想される世界の大迷惑より優先すべきことは「愛」を連れ出すことと決めたのです。「影」が「愛」と共に生き延びれば、それはそれで世界のバランスを崩すことになるはずですし「愛」の「形」も複雑になるだろうと承知しています。しかしこのまま全員が倒れでもしたら、何がどう転ぶのか全く予想できません。あるいは巨木が「愛」ごと乱暴者になって動き回りでもしたら世界は外形だけではなく、相互関係にある(万物の)内部がより深いダメージを受けかねない。巨木自身もこの巨木を選んで宿る「愛」自身も、どれほどの何者になってしまうのか全く分かっていない気がするのです。

 いままでは彼らが巡り合った「大きな偶然」をそこらの「運命」だとか「必然」だとか思っていた二人の幼さを、密かにそして呑気に呆れていただけでしたが、いよいよ局面は詰まってきました。


 「影」は非常事態がピークを迎えるなか、あくまでも冷静に、しかしなるようになれ、と決意し行動に出ました。



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