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彼女の頭の中にある寓話 1


 ねぇ、どうして幽霊には影がないのか知ってる? 

 布団に敷いた胡座の上で隣の部屋に声が漏れぬよう歯を食いしばり続けた女は、白くて細い身体から赤みが抜けたころ裸のまま微笑んだ。

 男はこの四年の間、間違いなく月よりも見慣れていた、薄いモルタルの天井を見上げながら髪を金髪に染めた女の髪の中に手の指を入れて首を振った。



 ・・・・・・みんなが待っていた恵みの雨を一人でガブガブ飲み、みんなが不安な台風の雨や風には無関心なときもあり、そういう時はむしろありがたかったのでした。

 どういう理由なのか、いやきっとただの気分次第だったのでしょう、温まった遠くの海で生まれる一つ目の巨大な渦が、気圧の縁に押されてやってくると迷惑な乱暴者は、どこか近場にある傾斜の上か、最悪なのは川の上流などでごろり横になることです。

 徐々に風の音階が上り、雨粒はサイズを変え、歩くようだったり走るようだったりする厚い雨雲を見上げます。そして、あっという間に端から端まで、頭上の空が巨大な渦になってしまうと、大地を殴りつける強い雨は水柱のようにさえ感じます。乱暴者はすっかり横になった身体でそんな雨をたっぷりと貯め込むのでした。防風に役立つはずの太い沢山の枝は意地悪く、可能な限り幹にくっつけてしまいます。強風に引き千切られた、数限りない緑の葉は当然派手に舞うのでしたが、まぁ、夏毛に変わるときの犬の抜け毛と変わらないものでした。

 そのうち、場合によっては渦に開く空の一つ目と無言の対峙をするのでしたが、いつだって心は動きません。

 風向きが変わり最後の風がヨロヨロ過ぎ去るころ合いを見計らう乱暴者の巨木は貯め込んでいた大量の雨水を一気に放出するのでした。水は必ず下へ流れるもので、斜面の下は何もかもが滅茶苦茶でしたし、全くあろうことか! 彼は泥の大滝と化した傾斜を滑り降りるのでした。また川の上流で横になっていたときは、貯めていた水と一緒に流れるプールか地域によってはスライダーのように自分も下流へ流れるのです。最悪でした。下流の土地は一旦水に沈むだけではなく、時が経ってから泥水の引く土地は何匹もの竜がのたまう形にえぐられてしまうからです。

 泥遊びが終わると、ぶるるっ、と幹や枝を散々に振り全身にまみれていた泥をまき散らします。大量の濁流に沈んだ世界へ更に泥の艦砲射撃を試みるようなことを、何一つ悪びれもせず行う、ほとほと困った巨木なのです。


 世界一美しい池の鏡を割り、世界一親切な岩山を粉々にし、世界一優しい心で咲くバラの園を踏みにじり、最後には世界一貴重な火の鳥の最後の群れをまとめて吹き消してしまいました・・・・・・




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