8月4日に出会った彼女ー彼女の一人称 6ー
柳がトイレから戻ってくるまで、互いの性感帯を探り合うかのように繰り返された「おしぼり合戦」を傍観するでもなく、いつかは後悔することのない誰かに「シロミノ万両」を話すことがあるのだろうか? とそういうことについて考えていた。
とは言え、頭の中の思案と腹の中の波風は干渉なく独立していたので、四六時中繁殖期の「猫くん」「猫ちゃん」に嫉妬していただけだったのかもしれなし、無精ひげの坊主頭の代わりにあてがわれた「配達くん」がいなくなると、突如その「落差」を再認識させられ、それで腹の中を時化させていたのかもしれなかった。
そんなわけで、どうやら私の溜息はおしぼりによる性感帯事前調査を強制的に中断させてしまったようだった。血走る目で相手の尻の匂いを嗅ごうとしている夜中の猫に水をひっかけてしまったような気がした。ざまぁみろ、という感じといくらかの罪悪感を持った。でもあのまま調査が続いていたらテーブルのグラスや皿、仮に醤油など倒れでもしたら一大事だった。
棄民色に染めてしまった空気のなか私は壁を見つめ続けることにした・・・・・・
空気の読めない植物学者で宇宙物理学者でもある「荷捌きのバイト」は、これまでの会話というかほぼほぼ相づちだったが、私に与えていた印象をガラリ変えた。私は思った。たとえば、比喩としての手形や足型、身体のどこかの一部がこれほどフィットする「予感」を感じることはなかった。広い海の回遊を経て同じ川を遡る仲間のような気がした。私はそれを試してみたくなりトイレでの用が済むと階段を降りたのだった・・・・・・




