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びっくりするほど無能

執筆がうまく進まず、丸一日も更新Gはおそくなってしまいました。

お読みになってくださる読者の皆様に、お詫び申し上げます。

「…ずっとファンタジーだと考えていたけどな…

 急にSFじみた話になるかと思ったら…

 肝心なところでまた運命から逃れただのなんだの…

 本当何なの、この物語?」


「…メタ発言は自重してください、マイロード」


「……で、元々は死ぬ…というか、そのまま停止し、消滅するはずだったラガマダさんが…

 どうなったのかは定かではないけど、私が地球に連れて行ったせいで…

 まさか、想定していない環境変化によって不具合を起こした、とか? 」


「その可能性も、否定できませんね。

 そしてその不安定な位相に、『生きろ』というマイロードの命令がインプットされ、それが最優先遂行課題になった、と考えれば辻褄が合いますね。

 マイロードへの愛着を見せるのも、同じく」


自分にとってラガマダは、どう考えても『ヒト』、『生き物』だった。

それを機械のように扱う話し方には、どうにも慣れない。

だが、超自然現象とか、『奇跡』の介入を排除したいと思うなら――

できるかぎり機械的に、『合理的に』考えるしかない。

だからセレステは、そんな仮説を受け入れ、『そういうこと』にしておきたいと思った。


「……?

 待てよおい?

 あれは地球で、二人きりの時に言ったんだよ?

 どうしてわかる?」


「既にお分かりだと思いますが…

 ダルカルヌピカの一部機能が、地球に随行していくことがあります。

 マルク・メンゲンの時のように」


「…ああ、やっぱりか。

 どうして自然に日本語で話せていたのかと思ったらそういう…

 で?その一部機能に、私の監視も含まれている?」


多分そうだろうと思ってはいたが、本当に密かについて…尾行のようなことをされたと思うといい気分にはなれなかったので、少しは皮肉を込めてそう聞いた。


「とんでもございません。

 突発事態においての非常通訳支援措置にすぎません。

 ただ、今回ばかりは、まったく予測できなかった出来事がありましたので…

 当時の記録を、閲覧させていただきましただけです」

 

「予測できなかった…

 なら、ラガマダさんの変化は、君たちのその…

 非線形的時間でも、起きていなかったことだと?」


一見、能天気に見える態度でセレステがそう聞いた。

しかし、彼の目はアリメカリセスの翼がビクンと、一瞬だけ揺らぐのを逃さなかった。

あれは、動揺している兆しだった。


「はい。

 今では記録が更新されておりますが」


その言い方からすれば、すべての時間に遍在する彼らにとっても『知らない未来』は発生するようで、それはリアルタイムで情報という形で更新、もしくは上書きされるみたいだった。


『あれか、ゲームのサイレント修正のような…

 ということは、いざという時に一発くらわせてやることもできるってことだな。

 大体、何が決まった未来で、何が不確定未来か私には知る由もないけど』


未来のことなど、3次元の人間である自分がわかるはずがない。

だったら、アリメカリセスたちに悪いと気にしたって、しょうがないではないか。

とセレステは考えた。


「ううむ、そうかー

 私が未来を変えてしまって、君たちには色々と迷惑をかけるかもな。

 でも仕方ない!私には、未来なんか見えないから!うん!

 だからね、これからも迷惑かけまくるかもしれないけど、よろしくな!ね?」


「はい。マイロードの思うがまま…」


「は――――い!

 未来がどこに転ぼうが、私たちがちゃんとフォローしますから!

 マイロードは、思うがままに、勝手に、気まぐれに、横暴に!

 私たちのこと、こき使ってくださいまし!ああん!」


「………」


いきなり割って入って、困った性癖を全開にするラガネマパイサに、セレステとアリメカリセスは頭が痛くなる気がした。

…その状況でも、アリメカリセスの場合、頭に当たる部位…?区域?形状?のどこが痛くなるのかが気になるセレステだったが。


「いや、ご自由なのは大いに結構ですけど!

 仮にも、一国の開祖ともあろうお方がそんなはしたない態度はどうかとおもいますが?

 なあ?聖母龍殿!」


わざとらしく、というか愛想が尽きた上に、実質今日初対面だから、そう他人行儀で言ってしまったら、これはどういうことか。

うなぎ、ミミズ、アナゴなどと呼ばれるぐらい、なんだかよくわからない奇妙な生物…?にしか見えていなかったラガネマパイサが、小柄ではあるが、ラガマダの前に現れた時と同じ、透明に透けて見える龍の姿になった。


「何だ、本当に龍だった?」


「ああん、あんなわけのわからない下等生物の姿にされるのも新鮮な経験(プレイ)だったのに!

 仕方ありませんね…もう、龍として認識されてしまって…」


「はいはい、遊んでないで、どういうことが貴殿の口から説明して欲しいと思いますけど」


「そんな他人行儀な…」


「…納得のできる説明をしてくれたら、身内と認めて、ご褒美としていじめてあげましょう」


 ‐ キリッ


なんか、そんなオノマトペが聞こえたような気がした。

そのまま、再びラガネマパイサに視線を向けたら…


「いいですか?

 これから説明しますから、よくきいてください!」


…どこから出したのか、いかにも凄腕秘書のような眼鏡までかけたラガネマパイサが、なにかプレゼンテーションに見えるもののホログラム?幻像?のような物を虚空に映し出していた。


「……どういうやつなんだよ…」


              ***


「…………で、要約しますと…

 そちらにいる奇妙な生物が、実はバリアーダの開祖である聖母龍殿で…

 バリアーダのプライ・マハが『法術を司る』存在であるのは、その方の主観する『力』とこの世界との契約の要石のような存在だから、で…

 そんな『理そのもの』とも言える方だから、元々決まった姿はなく、相手の認識する姿に『感じられる』と…?」


「おお、それを一発でわかった?

 やっぱり、私の説明が…」


「…説明は殆どビカリ・テンゲリデがしていましたけど?」


再び、第二白亜館に来ているラシオン王とナデント。


セレステがちんぷんかんぷん説明というか、言葉を垂らしているそばで、アリメカリセスが随時に割って入って説明した結果、どうにか二人も理解できる説明ができていた。

ちなみに、『奇妙な生物』と認識するのは、ドラゴンのフォルムをしている『アレ』は普通にいても、東洋の龍のフォルムをした生物はトゥシタにはほぼいない。

だから、ラガネマパイサはセレステが認識している自分の姿を『発散』し、龍という概念が掴めていないふたりに『認識させて』いた。


「奇妙…まあ、確かに珍獣ではあるけどね」


「父上!」


ラシオンとしてセレステが他国の開祖に失礼なことを言っているのが気になって仕方がないが、その開祖様はどうかというと、セレステに貶されて悦ぶように身をよじっていた。


「聖母龍殿、父の無礼を…」


「いいえ!無礼だなんて、ありえません!

 マイロードと私の関係です、お気になさらず!」


そのとんでもない答えに困ったラシオンは、助けを求める目でアリメカリセスを見た。


「ビカリ・テンゲリデ…」


「承知いたしました、陛下。

 ラガネマパイサ、席を外しましょう」


ラシオンの頼みを聞いて、すかさず妹の首根っこを鷲掴みにすると、ラガネマパイサが反発しようとした。


「お姉さま!邪魔しないで!マイロードの傍に…」


反抗しようとするラガネマパイサに、セレステがさらっと言い放った。


「ラガネマパイサ。

 罰を与えよう。私から離れろ。

 遠距離で、身を焦がすようなじれったさに悶えろ」


「!!!

 ありがたき幸せ!

 お姉さま、行きましょう!」


嬉々としてアリメカリセスと一緒にどこかに消えてしまうラガネマパイサを見ていたラシオンが、眉間に皺をよせながらセレステに聞いた。


「説明、お願いできますか?」


「全部したけど?」


「いや、聞いたのは彼女…彼女?彼女で合っている?

 とにかく、あのお方の素性のことしか聞いていません。

 そんな大したお方が、なぜ父上に臣従するか、のことです!

 なに?世界の理で、バリアーダの開祖?法術と魔術の根源になる力の管理者?

 そんな存在を、個人が従えて…いいわけがないですよ!

 バリアーダとの外交にも問題が…

 さあ、どうしてこうなったか、弁解でもしていただけましょうか!」


「弁解って、別に悪いことはしていないぞ?

 それに……聞いたって…私にもわからないよ!

 さすがに、プライ・マハの母后と聞いた時にはぎょっとしたけどね。

 アリメカリセスには絶対頭が上がらないようだし、他の兄弟たちは全部私のことをマイロードと呼んでいるのに自分だけそう呼べないのは不公平だそうだし…

 今更だけどよ、アリメカリセスたちがなぜ私のしもべや家臣を名乗っているか、未だにわからないだろう?」


「それはそうですが…

 でも、ビカリ・テンゲリデとは比べ物にもならないほど…」


「無能だ」


「…は?」


一言で言い切ってしまうセレステに、ラシオンもナデントも当惑した。


「レギス・セレステ?

 あのお方は、法術や魔術の主観者だと仰っていませんでした?」


「言いましたね?」


「なのに、無能って…」


「あ、それがですね。

 法術と魔術の根源になる自然の力を『管理する』権限はあっても…

 『行使する』権限はない、とのことでした」


その説明を聞いても、ラシオンとしては納得できそうにない。


「そんなことが…あり得ますか?」


「いくらでもな。

 例えばな…フェリデリアの国家予算、マハッサ財務大臣が『管理』しているんだろう?」


「はい」


「だからと言って、予算を自分の私用に勝手に使っていいか?」


「あ」


ようやく、ラシオンたち二人はわかる気がした。


「だから、自分では魔術も法術も使えない。

 しかし、トゥシタの知的種族にその有用性を伝える必要があってな。

 六千年前に『使用権契約』として立てたのが最初のプライ・マハだ。

 そして、ほぼ千年単位で契約書の効力が尽きて、その都度更新…したわけ。

 それがバリアーダと、マハ制度だよ。

 だから、世界の理という面ではとても重要な存在だけどね…

 即座に役に立つ力は、皆無。

 ……そんなところだ」


「はあ…」


そうはいっても、何か怪しい力を隠していそうで気になるが、とにかくセレステ、ひいてはフェリデリアが余計に巨大な力を手に入れたわけではないという事実に、ラシオンはひとまず安心した。


「しかし、プライ・マハとの親子関係は?」


でもナデントは、せっかく手に入れた手札を手放し気はないようだった。


「それはですね…

 …私が今上のプライ・マハに父扱いされているから、自分とも夫婦同然の関係とかふざけていますけど…」


「……は?」


「でしょう?とんでもない。

 でも脱皮する前のマハとはあまりいいとは言えない仲だったようで…

 いまのマハって、定期更新できる契約書ではなく、契約仲介人のような立ち位置に移動してしまってですね。

 特に、あいつのいるいないでバリアーダとの外交には影響がないと思いますよ」


「はああ…それは惜しい。

 まあ、でもいざという時には、我が国にはルアファン殿(セレステ)がいる!」


「…ヒトをこき使う気満々でいるの、やめてもらえません?」

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