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暇だから言ってみた。「光あれ」  作者: アインソフ
いざ行かん、新世界
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おとぎ話の中から

ほぼ1日、更新が遅れてしまいました。

まことに申し訳ございません!

「今日は、大変でしたね~」


バリアーダ宮廷勢のテンゲル視察もそれなりに順調に終わり、全員引き上げた後、セレステとノルガー、ナデントはテンゲルの第2白亜館の応接室でお茶を飲みながら寛いでいた。


「まあ、無理もないでしょうな。

 スプラ・ヌベスの施設は、私たちは慣れてはいるものの、どれもこの世の物と思えない先進技術ですから。

 フェリデリア国民だって、まだ経験していない者は、あれと同じ反応を見せるでしょうし」


「デュエマ…の基地まで見せてもよかったのか?」


ノルガ―が気になっていたことを聞いたが、セレステは別に気にすらしていなかった。


「見せたって、どうにもならないんだろう?

 肝心の格納庫は見せていないしな。

 むしろ、軍の幕舎までもがあんな技術レベルだとわかって、結構ショックを受けたみたいだったよ」


「普通は秘密扱いだろうが、軍基地はよ」


「なぁに、こちらは許可をもらっているとはいえ、バリアーダの国中を空中から観察させてもらった。

 どうせ、侵入したくても方法がない所にある、見てくれだけの基地なんか、見せてやって損することはない」


一見能天気そうに聞こえることを言うセレステに、ナデントが相槌を打った。


「ですな。相手側としては、我らが相当自信満々だから、軍基地まで公開したと勝手に勘違いするでしょう。

 実際、あそこは兵力の生活空間以上でも以下でもないというのにですね」


「なに、自信満々というか、あれは我が国の正規兵力でもないので、軍事力把握に全然役にたたない情報でしょうけどね」


「ですな。あれは名目上には『レギス・セレステの領軍』ということになっているから」


なにかウキウキしてて楽しそうに腹黒い対話をしている二人を、無表情で眺めていたノルガーが気になることを口にした。


「しかし、プライ・マハなんだが…

 あの人、明らかに『歩いて』いなかったな?

 顔も見えないように、なにか奇妙な…傘?みたいなのを頭にかぶっていたし」


輿から降りたプライ・マハは、その顔を隠すために時代劇で見る市女笠のような帽子を被っていたが、帽子文化のないアンテロのノルガーの目には物珍しそうに見えたようだった。


「あ、それに気づいたか?

 あの人な…地面に、足がついていないよ」


「え?」


「ほほう?それはまた興味深い新事実ですな?」


「あれ?外務大臣殿はご存知だと思っていましたけど?」


「いえ。前にも言いました通り、私がここに来ていたのは新米の若手外交官時代のことで…

 謁見と言っても昨日のような、簾越しでのものしかできませんでしたのでね。

 それに、プライ・マハが王宮から出るとなると、いつもあのような乗り物の中ですし」


そういえば、そうだった。

だからプライ・マハの正体も隠されて来たわけだし、情報が制限されるわけだが。


「へえ、だったら私…

 いや待て、プライ・マハの秘密を知ってしまったから…

 私、今結構危なくない?」


「まあ、普通ならそうなるんでしょうけど…

 レギス・セレステ。この世界であなたに危害を与えられるような者は、そうそういないと思いますけど?」


今更何を、と言いたそうな顔のナデントだったが、張本人のセレステとしては安心していられない問題ではあった。


「あの人には…何かできるのでは…と思いますけどね。

 いやいや、私が見たくて見たわけでもないし!

 あの人が勝手に見せてきたんだから!私は悪くない!うん!」


「見せてきた?何を?」


「あ、いや、知らない方がいいかも」


ノルガーが怪訝そうに聞いてきたが、セレステはプライ・マハの素顔を見たことに関しては二人には伏せておくことにした。

万が一の場合、自分以外の者にまで被害が及ぶのは止めたかったからだ。


「何があったー」


 ‐ コンコン


ノルガーが何かあったのか聞こうとした瞬間、ノック音がした。


「お館様、マルク・メンゲンがいらっしゃいました」


「ああ、通してくれ」


扉が開かれ、フェリデリア王都にいるはずのダーハラトが入ってきた。

扉の外には、彼を案内してきたラインバルトが立っていた。


そう、これこそがセレステのゲートと2棟の白亜館からなる、もっとも恐ろしい能力。

テンゲルがどこを飛んでいても、2棟の白亜館はリアルタイムで繋がっている。

ただ、テンゲルの第2白亜館に別の使用人を雇うのが面倒だからという理由で二つの白亜館を、アリメカリセスに作ってもらったデバイスを利用した常設ゲートで繋いで、指定した一部の使用人に開閉権を与えておいたら、こんなとんでもない芸当ができるようになっていたのだ。


「よ!ダーちゃん、久しぶり!」


「…久ぶりも何も、いつまでその変な呼称で呼ぶ気だ。

 しかもヒト前で」


「いやここ、うちの部屋だもん」


「…

 お変わりはありませんか、王弟殿下、外務大臣」


「ああ。兄上はお大事ですか?」


「はい。今日もご同行なさると仰るのを止めるのに、一苦労しました」


「…兄上が迷惑をかけました」


「いや、陛下は相変わらずのようで何よりですな。

 ここで随時報告を聞いてはいましたけど、特に気に留めておくようなことはなかったでしょうな?」


ほぼ毎日、ラインバルトが大体のことは報告しているが、王宮内でないと伝えられないような、諜報関連の話もあるので、そんな話はこうして直接言いに来るか、戻ってきて聞くしかない。


「国内には、これといったことはありません。

 平民街の街路灯設置が、いよいよ始まるということぐらいでしょうか。

 …北からの風の便りで、何人かの貴族が転封措置にあったとか」


「ほほう、それはそれは」


ムアを外務大臣として、オディーリネが率いる使節団に加えて国外派遣した時からそうなるだろうと推測はしていたが、ケイレスを離れてまだ1週間ほどしか経っていないのに既に後始末ができたというのは、さすがというべきだったのだ。


「何か、怖い女王様が爆誕された感じ?」


「否定はできなさそうだが、お前、その怖い女王の『友』とされただろう?」


「不本意だったけどね」


「少なくとも、お前がいる限り向こうから攻めてくる確率は低くなったということだ。

 誇りに思ってもいいぞ」


なんだか照れくさそうだと思うセレステの傍で、ナデントが続きはないか、セレステに聞いた。


「他には?」


「バリアーダのことは、あなた方が今いるところだからお分かりでしょう。

 ケイレスも、『女王の友の介入で』王権が確固たるものとなり、胡散臭かった情勢も安定してきたわけですが…」


決してフェリデリアが介入したわけではなく、セレステ個人の助力ということを、ここでも強調するダーハラトの態度に苦笑いしたセレステだったが、何か言い淀んだのが気になった。


「ケイレスになにか?」


やっぱりその言い方が気になったのか、ナデントがそう聞くとダーハラトが答えた。


「いや、ケイレスそのものには特に問題はありませんが。

 ドワーベンが、現れ始めたとの噂が流行っているそうです」


「ドワーベン、ですか?」


訝しそうな顔でノルガーが聞く。

そばで聞いていたセレステとしても、何かわからないがどこかで聞いたような気がした。


「ドワーベン?なんだそれ…

 …って、あの時!」


初めてデュエマ、ハーヤ・ナクマを作り出したとき、実体化する前のロボット模型だったのをみてダーハラトが『ドワーベンか』と言っていたのを、思い出した。


「あの時はあのまま忘れていたけどな。

 いったいなんなんだ、その『ドワーベン』って?」


妙な顔をしていたノルガーが、セレステのその疑問に答えてくれた。


「いや、親父、それがな…

 簡単に言うと、『鋼のヒト型』だ」


「…なにそれ」


「ぼくも、昔話の中の存在としか思っていなかったけどな。

 ケイレスより遥か北方、水もなく、草も生えない不毛の大地に…

 鋼の身体を持つ、ヒト型の存在が生きているって」


なんかおとぎ話のようで、それにしては妙に索漠で荒んだ話。

こんな場合、おとぎ話の中になにかしらの真実が隠されている場合が多い。


「『鋼の身体』って、あのような荒れた大地でも生存できるほど頑丈な肉体って話?」


「いや、なんでだよ。

 文字通り、鋼の身体だそうだ」


「…それ、生き物と言ってもいい?」


「どうしてだ?」


ノルガーとの会話を聞いていたダーハラトが、割って入った。


「え?」


「鋼の身体を持っていて、生き物であってはいけない理由でもあるか?」


「え、それは…

 普通…それはロボット…」


「ロボットとは…デュエマのことだろう?

 あれは、お前たちが乗って初めて生命を得るものだろう」


「生命…とは言えないけどね。うん」


「ドワーベンは…

 あれほど巨大な存在ではなく、我らとさして変わらない大きさの種族だそうだ。

 それに、自ら考えて、自ら行動する、知性を持つ存在とも伝わる」


ダーハラトはああいっているけど、聞いているセレステとしてはどこからどう考えても、自律型人工知能ロボットとしか思えない。

そんなセレステの頭の中を読んだかのように、ダーハラトが追い打ちを食らわせた。


「お前、トゥシタに来る前までには、アンテロ…お前は何と言っていたんだろう。

 そうそう、その『ジュウジン』というのは、想像の中の存在だと言っていたな?」


「えっ、あ、うん」


「しかし、我らアンテロはここに、現実として存在している。

 エイヴィアも、ラプティもだ。

 だったら、地球の常識ではあり得ない存在でも、このトゥシタではあり得て当然だろう?」


まさに、筋が通っているダーハラトの話に、セレステは気圧された。


「…なによ、ダーちゃんのくせに、体育会系と思ったら」


本当に体育会系の脳筋だったら、大臣なんか務まるはずがない。


「何を考えていたかは知りたくもないが、そういうことだ」


珍しく、セレステがダーハラトに言い負かされるのを興味津々と見ていたノルガーが、ふと思い出したことを口にした。


「でも、昔話の存在とされていたというのは…

 これまで、ほとんど接触がなかったという話ではありませんか?

 なのに、なぜ今になって…?」


「その通りです。

 ケイレスの北方と言えば、我らアンテロの生存には適していない環境なので、あえて行こうともしなかったこともあり…

 我が国としては、彼らの領域とされるところと我が国の間に、ケイレスがあるからさらに接触する機会そのものがなかったわけです。

 だから、彼らがあの向こうに実存していても…」


その説明を聞いていると、確かに、とセレステも理解できた。

テラ・インコグニタ(前人未踏の大地)とか、アネクメーネ(永久居住不可能地域)など。

地球の歴史にも、人知を超えた環境や、未発見の新種はいくらでも存在していた。

ましてや、ここトゥシタは、『地球人の常識』がまったく通用しない異世界なのだ。


「そうか…カモノハシやシーラカンスのような…」


合っているようで、少しピントのずれたことを口にするセレステだった。


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