表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/88

遊び心だったのに

初めては、あくまでもロボヲタの遊び心がなした出来事だった。


「量産型?ですか?」


「そうだ。私たちのカスタム仕様3機だけじゃ物足りないと思わないか?」


「いや親父、そもそもあれ何に使う気だよ?

 ヤルデマラセナも言ってたけど、戦闘兵器としては過剰戦力だし」


それに、『カスタム機』というセレステの認識自体が、間違っている。

まず量産機があってからのカスタム機で、この場合、3機のナクマシリーズはプロトタイプ、もしくは先行生産機と呼ぶべき…


「…なんかどこかのロボヲタの同胞がうんちくを傾けている気がするけど…

 まあ、作っておけば使い道はついてくるんだよ?

 地震と大火事とか山崩れなどの大災害への対応とか、救護とかね?

 重装備代わりにも使えるし」


「それらしいことを述べてはいるけどね。

 親父それ、『作りたいから』言っているだけだろう?」


「でへっ」


バレちゃった、という表情のセレステを、ノルガーがジト目で睨んではいるが別に猛反対、とか責める気はないようだった。


「もう作ってあるんだろう?その量産型とやら。

 確かに兄上が何かやらかさないように、随伴する必要があると、ボクも思ってはいたよ」


「おお?わかっているじゃないか。

 さすが我が愛しのツンデレ次男坊だ」


「何か気持ち悪いこと言っていない?」


なんだか仲がいいのか悪いのかわからない二人のやりとりに、ラシオンが何か理不尽でも感じているかのように、割って入った。


「やらかすなんて、私が何をー」


「「ヒャッハー!」」


珍しいことに、セレステとノルガーが完璧にハモってツッコミを入れていた。


「ふ、二人、なんか急に仲良くなってない?」


「元々仲良し親子ですー」


「…いや、これは兄上が悪い」


『三人寄れば派閥ができる』とは実によく言ったものだった。


「量産と言っても…何個?何台?ぐらい作り気だ?」


「ロボットは『機』で数えるんだよ。

 そうだな…15機ぐらい?」


「多すぎない?」


「ハーヤ、パーラ、カームにそれぞれ5機ずつ従わせようと思ってな。

 合わせて6機編隊が、三角編隊で飛べるから様になるし」


「ロボットのことなら父上に任せるべきだろうな。

 何せ、私たちには全然慣れていないものだし。

 随伴機というのも、理にかなっていると思うよ。

 あれに乗っていると言っても、やはり一人で動くのは反対があるから」


…と、ラシオンがずいぶんまともな話をしているように聞こえるが、実のところあのダイブ(落下)事件以来、ナクマに乗り込むのを厳重に禁じられていて、乗りたくてムズムズしているから、爆走しないように制御する随伴がいれば許してもらえるかも、と思ったからだ。


「宰相殿に酷く叱られ、イーシャには引っ叩かれて1ヶ月おやつ禁止の刑にされていたなお前…

 私も大変だったよ。あの二人の機嫌を直すのは」


「それは言わないでくださいよ父上。

 しかし、あんなものを15機も保有するとなると…

 父上って、このトゥシタ最強の武力を従えることになりますね」


「あ?」


自分の黒歴史を掘り起こさないようにというかと思ったら、いきなりとんでもないことを言うラシオン。


「それって、どういう…」


「だって、そうでしょう?

 ナクマ3機だけでも、過剰戦力だとヤルデマラセナが言っていたそうですね。

 それの五倍もの軍団を従えているなら…誰がいて、父上に逆らえます?」


さすがのセレステも、言葉が出ない。

『本物のロボット』に乗れるとだけ思ってウキウキしてて、作り出すことを楽しんでいただけだが…

それが『過剰すぎる戦力』になるということは、忘れていたというか、無意識で知らんぶりをしていたかもしれない。


「そこは盲点だった…

 いや、でも15機全部従えさせる気は…」


「何かあった場合、ヤルデマラセナが全機のコントロールを奪えるでしょう?

 『父上のために』

 父上にはですね、そろそろ自覚していただきたいと思いますよ。

 あなた自身、この世界にとってどれだけイレギュラーなのか」


エメラルドの瞳に、鋭い光が宿る。

度々軽い言動を見せ、おっちょこっちょいな面も見せているけど、さすがに王は王だった。


「そうかー

 そうだな。

 じゃ、やめようか!」


「いや、なんでそうなる!」


先程まで見せていたラシオンの王者の風格が、一瞬で跡形もなく消え去った。


「だって、イレギュラーだって言ったじゃん?

 なんか色々不味そうな言い方だから、お前たちのことを考えてね」


「そうじゃなくて!

 私たちを考えるからこそ、イレギュラーでいてくださいよ。

 『得体を知らない恐怖』が王家の味方って、頼もしいことこの上ない!」


「あ、そっち?」


「そうだよ。

 別に恐怖政治を敷くつもりは、兄上にはないだろうけど…

 近隣諸国への力の誇示や、フーマニタへの抑止力。

 一人でそれができる存在って、他にいると思う?」


二人がそれぞれいうのを聞いたセレステは、どこか切なくも、誇らしい気がした。

あの小さかった(相当語弊がある気がするが)猫たちはもうこのトゥシタにはいない。

だが、立派な大人に、国家の未来を考える立派な王者に、育ってくれたな、と。


「そう…いつまでも、地球のお前たちと同じ扱いをしては、いけないね。

 お前たちは、もう立派な大人だ。父として、これ以上嬉しいことはない。

 お前たちがそこまで成長したなら…私も腹を括らなければならんだろう?」


三人の親子は、視線を交わし合い、ニッと笑った。


「では、王の父らしく、そのイレギュラーの任を慎んで引き受けよう。

 異国のアンテロだろうが、フーマニタだろうが、お前たちには指一本触れさせない」


「慎んても何も、親父ずっとイレギュラーだったよ?

 まさか自重していたとでも思う?」


「いや、いいじゃないか格好ぐらい付けさせても!」


「はいはい、そこまでにして。

 で、例の15機ですけど、いつ準備できます?」


「うん?まあ、そうだな。

 そもそもナクマのバリエーションだから、ひなかたはもうできている。

 あとは組み上げて、塗装するだけ」


「じゃ、軍務大臣と師団創設の件で話をしなければ」


「…師団?」


何か、また大袈裟な話になる気がしたセレステが反問した。


「全く新しい兵力だから、既存の編制では収められないと思いますよ?

 独立師団と編成して、父上に師団長を」


「えええええ!?」


              ***


「陛下のご判断が、理に叶っていると思います」


「ダー…いや、軍務大臣殿?」


後日の大臣会議でロボット師団創設の件を出されて、ダーハラトが王の意見に同意していた。


「国防を司る身として、戦力に過剰はありません。

 しかもあのような非対称…というか、相手にはない絶対優位の戦力は尚更のこと」


セレステ以外の大臣全員、うんうんと頷いている。

特に外務大臣が、妙に愉悦に浸っているような気がするが…セレステは見なかったことにしていた。


「それを作り出して、運用できるのはレギス・セレステだけ。

 だから、独立特殊師団である同時にテンゲル領軍、ということで、マルク・テンゲルを師団長にするのが、当たり前かと」


他のはダーハラトの言う通りだから諦めていたけど、少なくとも師団長の座を自分に任せることだけでも反対してくれないかな、と最後の希望をかけていたセレステは、完全に裏切られたような気がした。


『見てろよーウイスキー飲まして屋敷の外に放り出してやー』


「しかし、さすがに軍務の経験がない彼に、師団長は務まらないでしょう。

 軍務担当の副師団長をつけてやるべきだと、そう判断します」


「友よー!」


「…公の場です。お弁えを」


キッパリと言い切るダーハラトだったが、周りの大臣が必死で笑いを堪えている中、商工大臣だけがメラメラ燃え上がる視線を、二人に向けていた。


「では、軍務大臣。師団の編成はそなたに任せて良いな?」


「はい。陛下と王弟殿下付きの兵力は親衛隊からの選抜になりましょう。

 マルク・テンゲル付きは…多分、募集すると精鋭が我先にと飛びつくでしょう」


「そうか。それは安心だな。

 では、師団編成と運用の予算編成はー」


「恐れながら、それは私めにお任せを。

 私の遊戯で作り出したロボットで、自領の軍でもあります。

 国から予算をいただくなど…財務大臣が許してくれないでしょう。

 ただ、軍の給与だけはこのまま国から出していただければ、と存じます。

 所属はあくまでもこの国、フェリデリアという意味合いとして」


もちろん、単身赴任の彼らに賞与ぐらいは自腹を切る気満々なセレステだが、こうして所属を明白にしておく方が、後ろから変なことを言われないためには重要なことだった。


「策士よの」


財務大臣がうるっとした目で『いつでも夜伽に参りますよー!』といいたそうな顔をしている中、宰相がぶつりとそう言った。言葉にはしていないけど、他の大臣たちも、だいたい似たような感想を持っていた。


「承知した。

 何もかも卿に投げてしまうようですまないと思っているが、それだけ卿に頼っているぞ」


「ははあ、ありがたき幸せ」


そうして会議を終え、会議室を後にしながら、セレステはため息をついた。


「トホホホ…」


「どうした?」


そんな彼に、いつの間にか後ろに来ていたダーハラトが話しかけて来た。


「いや…遊び心で始めたことが、まさかここまでくるとはな。

 私が軍の師団長って、あり?」


「その超常の力を、見境もなく使いまくるからだ。

 全く、お前という奴は…」


「いや、そこまで使いまくったわけ…

 あり?」


「オレに聞くな」


キッパリ言い切るダーハラトにまたため息をつきながら、セレステはふと思い出したことを彼に聞いてみた。


「そういえば…私は師団長で…君は軍務大臣…

 君の部下になるのかな?」


「編制ではそうなるけどな、位はお前が上だからな。

 そうはならない。

 運が良かったと思えよ」


「うっわ、なにそれ」


「オレの部下だったらな、コキ使い回って、そのひん曲がった根性を直してやったがな」


「あらやだ、その体育会系思考」


「軍人だからだろう?」


クック笑いながら歩いていたセレステが、気にしていたことを言い出した。


「そういえば、あの高所恐怖症さえなかったら、お前の専用機も用意してやっていたけどねー陸戦専用機でも作ってあげようかな?」


「いや、遠慮しておく。最高指揮官あんなもので戦線に出てどうする」


どこかの赤い大佐は、総帥のくせに自ら最前線に出ていたけどーと、オタクの妄想に走るセレステだったが、『あ、あいつ結局あれで詰んだな』と思い、それ以上誘うことをやめた。


「そういえばお前、さっき一瞬だけどオレを恨む視線で見ていたな?」


「いっ?」


「なに考えてた?」


「いや、なんでもない」


…彼の酒癖を悪利用しようとしたなんて、口が裂けても言えないセレステだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ