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思いがけない出会い

ちょっとした騒動があった後、大臣たちはとにかく当面の問題をまとめてみることにした。


「伝説の種族を発見したとなると…

 さすがに、大事件になるでしょう。

 しかし、それを発見した位置というのがですね…」


内務大臣が困ったような顔をした。

ケイレスの目撃情報を追尾して見つけたわけだが、問題はケイレス側はその目撃情報を公表していないと言うことだった。


「確かに、いくら王父卿でもですね…

 ああ、そうか。

 もちろん王父卿本人には、ケイレス側も表立って不満を言えないでしょう。

 何より、『女王の友』ですから。

 しかし、その情報をどこから手に入れたのか、と言うことが問題視されるでしょう」


強行外交を好む外務大臣も、珍しく常識的な話をしていた。


「でもドワーベンの伝説に興味があって、ハーヤ・ナクマで調査に向かうーー

 とは、ケイレスを出る時、言っておきましたしね。

 別に、ケイレスとしても秘匿しなければならないような情報でもないでしょう。

 そのうち、噂ぐらいにはなるでしょう」


もっともらしい話をするセレステだが、問題はそこではない。


「問題は、その噂がここに至る前に、お主が本当にそこで見つけ出したってことじゃ!」


宰相のツッコミにみんなうんうん、と頷くが、セレステはケロッとした顔だった。


「いや、あそこにセクター17があるということは、『まだ』知りませんよ?」


「何?」


「私はケイレスの北方だけではなく、いろんなところを探し回った。

 そして、偶然にも『フェリデリアの鉱山地帯』から……

 このメインフレームを見つけ出した、それだけですよ?」


「おお?」


何か気づいたように、外務大臣が目を光らせた。


「ただし、見つけたのはこの休眠状態のメインフレームだけ。

 そこで、私の『有能すぎる』5次元の家臣たちが、色々と調査し倒して…

 休眠中だったこのメインフレームから、セクターを復旧する方法を見つけた。

 いや…『卵の中で眠っていたドワーベンを、フェリデリアが復活させた』

 いかがですか?」


いかにもスケールの大きい嘘を、顔色も変えずにスラスラ語るセレステに大臣たちが呆気に取られた目で見ている中、ただ一人、外務大臣だけは満面の笑みでそれに応えた。


「さすがはレギス・セレステ。

 確かに、その…メインフレーム?なるものはケイレスの北方で持ってきたものではない。

 これでケイレスへの負い目は、なくなりますな。

 我が国内で復活させたとなると、我が国の名誉にもなるわけだ。

 彼らとの外交で優位に立つのも、できましょう。

 しかし…それが卵になるとは?」


「それをこれから説明しますけどね…

 皆さん、驚くのはいいですけど、大声は出さないでくださいね?

 できれば、しばらくはこの場にいるヒトたちだけの秘密にしたいから」


「お前、また何をする気だ?」


胡乱げな目で自分を睨むダーハラトに笑い返しながら、セレステがテーブルにおいてあったメインフレームに触れながら言った。


「そろそろ目を覚ましてくれないか?」


誰に向かって言っているのだ…と大臣たちが怪訝に思っていた瞬間だった。


 – ドゥン


何か聞きなれない、低い音が聞こえたと思った瞬間。

その球体は、内側から発光しているかのように、より鮮やかな金色へと変わった。

そして、その球体はーー


すうっと、浮かび上がった。


「え、ええええ?」


大声を出さないで、と頼んではいたが、余計な心配だったかもしれない。

その場にいた大臣全員とその随行員たちはあまりにも驚いて、声を出すことも忘れていた。

かろうじて驚きの声を上げたのは、魔術師長、コミス・ナイランだけ。


「皆さんに、紹介させていただきましょう。

 ドワーベンのメインフレームです。

 自己紹介は、自分でするか?」


「ありがとうございます、アインガスト。

 皆様、お初にお目にかかります。

 メインフレームシリアルNo.0064。

 新たに担当ガストになったKN80679と申します」


「しゃ、しゃべったああああああー!!!!」


つい、我慢できず大声を出してしまうコミスナイラン。

でもその声は、驚きというか、どこか歓喜の声に聞こえた。


「こ、これ!

 騒ぐなと言ったではないか!秘密だぞ!」


「いや、あれぐらいは大丈夫ですよ。

 皆さん全員で騒がない限りは。

 さっき、ドワーベンの社会のことは説明したでしょう?

 こちらがその、社会全体の個体の生産を担う個体です。

 簡単に言えば、女王蜂、とでも考えてください。

 そもそも彼らの社会に『性別』はありませんけど」


その説明を聞いた内務大臣が、注意深く質問した。


「ではさっき、これ…

 いや、失礼。

 この方を『卵』と呼んだのは…

 そんな意味でしたか?」


「さすが、お察しがいいですね。

 そうです。

 まずは、適当な鉱山を見つけ出す必要があります。

 そして、このKN80679をそこに連れて行ってーー

 セクター17から、作業人員を派遣してもらうんですよ

 そうすればーー KN80679?」


「はい。

 フェリデリアの皆様に許しをいただき、鉱山を恵んでもらえれば。

 この国に、新たなセクター。

 皆様の概念では、ドワーベンの地下都市が、建設できます」


「わ!私の!

 私の領地に来てくださいませんかぁぁぁl!

 研究用の鉱山がいくつかあります!

 産業用じゃないので、あまり採掘していませんし!」


都市を建設する鉱山の話が出たら、真っ先に魔術師長が申し出てきた。


「いや、ご提案はありがたいと思いますけどね。

 彼らの必要とする鉱物が埋蔵されているかを確認するのが先ですよ。

 それに、立地条件も考えなければ」


「立地条件?

 お隣事情とか、そういうものか?」


宰相の質問に、KN80679が応えた。


「それもあるにはありますが、もっとも重要な問題があります。

 私たちのエネルギー源の補給するため…

 地熱チャージができるところを必要とします」


「エネルギー源ですか?」


技術関連の話になると、最近発電プラントの件で財務大臣と競い合って、そちらに関心を持つようになった商工大臣が質問してきた。


「ああ、そうですね。

 …私もつい先日分かったことですけど、ドワーベンの動力は…

 『電気』でした」


「「「はあああああ!?」」」


今度は、魔術師長以外に、商工と財務までが、驚きのハーモニーに加わった。


「しっ、静かにしてくださいよ。

 まあ、私の大体似たような反応でしたからお気持ちは分かりますけど…」


「い、いや、電気といえば機械の動力じゃないですか?」


商工大臣のその疑問も、もっともなことである。

しかし、ナイラン魔術師長はすぐその原理に気づいた。


「あ、いや、待ってください。

 確かに、電気はプルゲ系統の魔術のエネルギーと同じ力…

 ああ、そうか!

 生体プルゲ!筋肉を動かせるあの!」


セレステも、ニッコリ笑いながら応えた。


「ご名答。

 私たち有機生物は、食物を摂取して体を動かす力を得ますけどーー

 彼らドワーベンは、電気そのものから体を動かす力を得ます」


その説明を聞いた瞬間、三人の大臣がまた、目を見開いた。


「ということは…」


「ドワーベンは…」


「自然から電気を得ている!?

 それ、ただですよね?ね!?」


いつものごとく、『ただ』という話にすぐ飛びつく財務大臣を見ながら、セレステは苦笑いをした。


「まあ、ただといえばただでしょうけど…」


「私たちは、ある種の鉱物から、チャージできる結晶を作り出せます。

 それと私たちの装置で、地下深くの熱からエネルギーーー

 皆様の言葉では、『電気』というエネルギーを、チャージできます」


「いわば、地熱さえあれば充電ができるわけです。

 ですからねーー」


言尾を伸ばすセレステに、大臣の全員が固唾を飲んだ。


「太陽光プラントのただ一つの欠点、ご存知でしょう?」


「雨の日には、蓄電した電気に頼らないないといけないことでしょう?」


商工大臣が即答した。

今ではまだ、電気をそんなに大量には消耗していないから、プラントで発電できないことがあっても蓄電分で賄えていたけど、将来のことを考えるとプラントの増設などを考えなければならないのが彼女の悩みだったから、即答できたのだ。


「ですよね。

 しかし、地下に、雨が降ります?」


「そんなことは…

 え、ちょ、まさか…?」


「そうですよ。

 彼らがチャージに利用する地熱って…

 プラバサの光がただで、プラバサがある限り無限に使えるのと同じく…

 地熱もまた、トゥシタが存続する限り――

 無料で、ほぼ無限に使えるエネルギーなんですとも!」


セレステがちょっと芝居かかった大袈裟なセリフを吐いた、その時。

財務大臣が席から立ち上がり、ダダダとセレステに突進してきた。


「私の領地でも!探してみます!鉱山!

 どんな鉱物でしょうか!

 何なりと行ってくださいメインフレーム殿!」


「いや、早い早い!

 いきなり抱かないでくださいよ!

 とにかく、落ち着いて!席に戻ってください!」


また抱かれて嫌がるセレステをみていたダーハラトが、静かに財務大臣をセレステから引き離して、席に連れて行って座らせた。


「…気持ちはわかりますが、落ち着いてください、財務大臣。

 ことには順番というのがあるでしょう」


騒がしくなった場を片付けてくれたダーハラトに感謝しながら、セレステが話し続けた。


「それで、彼らの地下都市が国内に出来れば…

 彼らのエネルギーチャージ技術を共有してもらい、太陽光発電の短所を補完できます。

 その上にーー」


「その上に?」


また何かあるのか、と思った商工大臣がメラメラ燃え上がる視線を送ってきた。


「さっき、電気のことで機械を思い出しましたね?

 その通り、彼らはある意味、『意識を持っている自律機械』ともいえます。

 その証拠に、新しい個体を『産む』わけではなく、『生産』します。

 その生産を担当するのもまた、ドワーベンですよ。

 商工大臣殿、あなたならこの意味、わかりますね?」


商工大臣がビクッと止まっては、瞳孔が大きくなった。


「え、それ……

 でも……いや、まさか……

 ………もしかして、生産設備として機能するドワーベンの方も…

 いる、と?」


「はい」


「ええええええ!!!」


半信半疑の質問だったのに、いとも簡単に肯定してしまうメインフレームに、商工大臣は驚きの声を上げるしかなかった。


「…静かにしてください、って予めおことわりしておきましたけどね…とほほ」


「無理じゃよ。

 それより、お主もそろそろ気付けばどうじゃ?

 お主が会議に出席する日にはいつもこうなんじゃよ。

 外の連中も別に気にはせんじゃろ」


「私が何をしましたって!?」


本当に身に覚えのない濡れ衣だと抗議するセレステを見て、ダーハラトは頭痛そうな表情をしながら、王に話しかけた。


「あいつって、いつになったら自分の異様さに気づくのでしょう」


「……さて?

 そんなところも含めて、父上だと思うがな」


ちらっとダーハラトの方を見たラシオンは、薄く微笑みながらそう応えた。

彼が見たダーハラトの尻尾は、間違いなく揺れていた。

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