15 コスモナイト(3) ※この回は性的表現が含まれます。
コスモナイトは、娼館が立ち並ぶ一角の奥に建っていた。
建物は古く、異臭も漂っているようだ。私には匂いがわからないけど、マロウたちの表情から察するに結構な強い異臭が立ち込めているのかもしれない。出入りする男たちの装いは、あまり綺麗ではない。つまり客層の品位が低いということだ。
建物の前に立つと、呼子らしい男が怒鳴りながら駆け寄ってきた。
「スーザン!てめー、どこにいってた!」
掴み掛かろうとしたところで、私はマロウの背中に触れた。
マロウからため息が漏れる。
すぐに、マロウは呼び子の男の腕を捻り上げた。
「いてー!何すんだ!誰だっ、てめーは!」
言葉遣いも品がない。
まあ、誰かと聞かれたから、答えてあげよう。
「お客様よ」
男が私を睨む。
「お前が客だっていうのかよっ」
「ええ、性別なんて関係ないでしょう。大事なのは、お金を持っているかどうかよ」
扇子で口元を隠し、仮面もつけたままの私がどんな表情をしているのか、男にはわからないだろう。それでも勢いに押されるように、唾を飲み込んだようだ。
男に案内されて、私たちは店の中に入った。
廊下が続く各部屋の入り口から、女たちが伺うように顔を出す。マロウやオルドに媚びる視線を送り、私に気づいて不愉快な態度を見せる。頭からつま先まで、値踏みをする視線を隠すことなく投げつけてくる。その、不躾な反応も、ストレートすぎて可愛いと思った。
店の奥から、物の壊れる音がした。
「金払ってんのは俺だぞ!」男の怒鳴り声が響いた。「ごちゃごちゃいってねーでさっさと股開けよ!」
聞くに耐えない雑言だ。だが、女たちの反応は何もない。誰も騒ぎの場所へ向かわないわ。だからこれが彼女たちの日常なのだと知れた。
私のヴィスコス公爵家での扱いと、どちらがマシだろうか。
少なくとも、マロウやゼトアがいてくれることで、私は彼女たちより救われているのだと思う。
「ねえ、イリノアはいる?」
「はあ?お前、あんなババアに金払うつもりで来たのか!?」
男が笑う。
「どうせならもっと若い女にしとけよ。うちで1番人気を紹介してやるぜ」
「・・・馬鹿な上に、察しも悪いのね」
「お嬢ちゃん、馬鹿だから空気を読めないんすよj」
後ろでオルドが笑った。「俺は読めるけどな」と挑発するように言った。
「なんだと!」
オルドに噛みつこうとした男だが、マロウにひと睨みに怖気付き、後ずさった。
「イリノアはいないの?」
「私に用かい?お嬢ちゃん」
廊下の奥から歩いてくる壮年の女性。
顔も首もシワが目立つが、頭上のプレートには45歳と書かれている。年齢よりも老けて見えるのは、苦労しているせいだろう。
(イリノアだっ)
着ているドレスも、痛んでくすんだ色の髪の毛も、しわの目立つ肌も、すべてがみすぼらしい場末の女を連想させる。だが、その目には自分の本質を見抜かれてしまう不安を感じさせる鋭さがあった。こんな場末の娼館にいるような女性ではないと、感じさせる貫禄があった。
「あなたを買いに来たの」
私はイリノアを見て、言った。




