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15 コスモナイト(2) ※この回は性的表現が含まれます。

(最高法官・・・って、何?)

 分からないときは、検索だ。


『最高法官

 高等法院の最高権力者』

(また分からない言葉が出てきた)

『高等法院

 帝国議会から独立した司法機関、帝国法に基づき審議する裁判権と判決権を持っている

 裁判における帝国議会の介入を拒否する権限も持っている』

(裁判所と判事みたいなものか。しかも独立機関・・・そのトップの愛人か)

 多分、今は違うのだろう。

 投獄されたときに別れたのかもしれない。もしくは、

(捨てられたとか・・・)

 また、知らなくてもいい過去を知ってしまった。


 さて、どうするか。

 先ほどまでの感情的な思考は、熱が冷めたように鳴りを潜めている。

 頭の中にはそろばんをはじくように計算が始まっている。

 コスモナイトと、イリノア。

 なぜか惹かれる二つのワード。

 会ってみたいと、思った。

 イリノアという女に。

 女性の権利を主張するような指導者の資質を持っているのか、教育こそが文化の発展につながると思想する先導者か。

 世界史で学んだフェミニズムの概念を持っているのか。

 この「世界」、エストアル帝国は厳格な階級社会だ。その階級の中での社会的役割を担えるのは男だけである。完全なる男尊女卑の思想が根付いている。女は男に従うもの、子を産むことが存在の意義であり、それ以外の価値はないとまで言われるほどだ。参政権もなければ、自分で生き方を決める自己決定権もない。すべては家主である父親や、夫が、決めるのだ。仕事も、結婚も、離婚すらも。そういった性差別はどこの世界にもあるということだ。

 そういう性差別的な搾取や抑圧から女性を解放しようと生まれたフェミニズムは、過去の偉人たちの手で広められ、解放と自由を手にした現代で私は生まれた。だから女性軽視の概念は馴染めない。

 この「世界」で成り上がろうとすれば、女であることも障害となるだろう。それが現実として突きつけられた気がした。

(別に革命家になろうなんて思ってないし、そんな横道に逸れてる暇ないし)

 私の目的は、私自身の自立だ。他人のことなんて見ている余裕はない。社会を変えなければなし得ないほどの大層なものではないから、革命とかフェミニズムとか言わなくても手段はきっと他にもある。イリノアという女がそれを模索する一つの要素になるだろうかと、思いついただけだ。


「マロウ」

 私はマロウの服を引っ張った。

「あの女の人と話がしたい」

 マロウは深くため息をつく。

「最近ため息ばっかりね」

 そう言うと、睨まれた。

「関わらない方がいいってのに・・・必要なことなのか」

「必要なことよ」

 また、マロウがため息を吐く。

 マロウは騒ぎ続ける二人に近づいていった。

 女を蹴っている男の襟首を掴むと後ろへ投げ飛ばした。ぬいぐるみのように投げ飛ばされる男を見て、人間って軽いのかと勘違いしそうになってしまう。

 突然暴力がなくなった状況に、うずくまっていた女が呆然とマロウを見上げた。

 そんな女に、私は近づき、声をかけた。

「ねえ、コスモナイトに案内してくれる?」


 女はあからさまに警戒していた。

 当然だろうと思うから、気づかないふりをする。

「どうせ逃げきれないんだから、自分から戻ったほうがいいわよ」

 背負わされた借金だからと見逃してもらえることはないだろう。捕まれば、さらに酷い待遇が待っているはずだ。それは女にもわかっているようで、悔しそうに唇を噛み黙り込んだ。

「私を案内してくれたら、今日のことは見逃してもらえるように話をつけるわ」

 でも、コスモナイトから解放されることはないだろう。その体に付けられた値段相当のお金を用意できない限り。

「あんたがあそこに何の用があるんだよ」

 女はマロウを見る。マロウは興味なさそうにそっぽを向いていた。

 確かに、私のような娘が娼館に用があるとは思えないだろう。身を売る以外には。今の私はゼトアが用意してくれた黒のドレスを身に纏っている。いつもの見窄らしい装いではないから、身売りするようには見えないはずだ。

「イリノアに会いたいの」

 その名前を出した途端、女は敵意をむき出しにしてきた。

(思った以上に収穫ありそう)

「あんた、姉さんに何の用だよ」

「それはイリノアに言うわ」

「・・・目的も分からないやつを連れてくわけにはいかないね」

「じゃあ、客として行くわ。イリノアを買えばいいだけだから」

 イリノアもコスモナイトの娼婦だ。接触するのは簡単だ。ただ、警戒心を少しでも下げるために女を使おうと思っただけなのだ。

 女は悔しそうにうつむく。自分の立場を思い知っているのだろう。

「どうする?自分の今日の運命を変えてみる?」

「姉さんに何かするのか?」

「これ以上悪くはならないわ。それだけは約束する。ちょうど私の待ち人も来たから、移動しましょう」

 大きな布袋を抱え、興奮で顔を蒸気させたオルドが走ってくる姿を確認して、私は笑んだ。

「おい!やったぞ!言われたこと全部やってやったぞ!」

 オルドは上擦った声で叫ぶ。

 腕の中の布袋を突き出した。

「見ろ!きっちり半分!まだくすねてないからな!ちゃんと報酬は払ってくれるんだろうな!」

「もちろんよ。悪いけど、まだしばらくそれ、持っててね」

「はあ?おい!どういうことだ!どこ行くんだ!」

 オルドの叫びは無視をして、私は女を見た。

 女の様子から、抵抗がなくなったのを感じた。

「さあ、行きましょう」

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