13 作戦会議(8)
部屋に戻ったとき、どこからともなく、ピコンと音が鳴った。
目の前に前触れなく、グレーのプレートが現れる。
『30日経過
ボーナススキルを受け取れます』
待ちに待ったプレートに、私のテンションが上がる。
すぐそばにゼトアが立っていることを思い出し、慌てて平静を取り繕うように咳ばらいをした。
「ありがとう、ゼトア。今日はもう休むわね」
「はい、お嬢様。お休みなさいませ」
恭しく頭を下げたゼトアは、ちらりと、プレートが浮かぶ宙に視線を向けた。
もしかして、ゼトアにも見えてるのだろうか。私の中に緊張が走るが、ゼトアの反応は特に変化がない。私の視線を追っただけのようだ。
ゼトアが部屋を出ると、ようやくホッと胸をなでおろして、体から力が抜けていった。
(さて、と)
私は改めて、プレートを見上げた。
矢印キーを押すと、次の表示が現れる。
『スキルを選択できます』
そうだった、今回から、選べるようになったのだ。
何を選べるのかは分からないが、つい、期待してしまう。
『①透化(レベル1)
②砕化(レベル1)
③浄化(レベル1)』
三択だった。
この中から選ぶらしい。
それにしても、機能がいまいちわかりずらい選択肢だ。どこを探しても説明書きはない。これだけで選べというのは不親切ではないだろうか。
今、一番必要な機能は何か、ここは慎重に選ばないといけないだろう。
悩んでいると、ピコンッと音が鳴り、別のプレートが現れた。
『10』
何か分からず凝視する。
『9』
数字が減った。
『8』『7』
カウントダウンだと気が付いた。
(まさか、選ぶのに時間制限があるの!?短!)
『6』『5』
やばい、と思った。
頭の中はパニックだ。
何ももらえなくなるかもしれないという恐怖の中、私の目には選択肢の数字しか入ってこない。
『4』『3』『2』
(あー!もう!3!3でいい!)
ピコンッと音が鳴り、『1』でカウントが止まった。
『おめでとうございます
浄化(レベル1)のスキルを手に入れました』
これは何の機能だろうか。
何を選んでも使い道が分からないが、①の透化を選んでおけばよかったと今更に後悔した。「透」と書くなら、ものを透明にでもするのだろうか、何かの中身をのぞけるのかもしれない。②の「砕」は砕くだろうか。
(浄化・・・きれいにするってこと?)
何か試せないかと周囲を見回した。
ベッドわきのサイドテーブルに水差しがあるのを見つけて、近づいていく。
暗い室内では分かりづらいが、中には腐った水がはいっているのだろう。
私は水差しを持つと、窓辺に移動した。
月明りにかざせば、水差しの中は濁った水が入っている。
宙を見上げ、設定画面を出す。「スキル」画面まで移ると、新しいスキル「浄化」が加わっていることを確認できた。
レベル1というのが気になった。同じスキルでレベルアップがあると言うことだろう。1番低いであろうレベル1がどの程度かが問題だ。
私は「浄化」を選択する。
水差しをじっと見つめると、ぼんやりとした輝きが、水差しの中に揺らめいた。
その輝きはすぐに消えてしまった。
何が変わったのだろうかと、水差しをまた月明りにかざしてみると、中の水の中にぼんやりと月が映っていた。
今までの腐った水は濁っていて、水越しに月など全く見えなかったのに。
今は輪郭こそぼやけているが、月だと分かるものが水差しの中で確認できる。
(水が・・・きれいになってる)
浄化ができたということだろうか。
私は手の中の水差しを口元に持っていった。そのまま中の水を飲んでみる。
水が私の喉を通り過ぎていく。
(・・・やっぱり味は分からないか)
期待した変化を、私の舌と喉は感じ取れなかった。
(でも、ざらついた感じはなくなってる)
この機能をどこどこで使って役に立てるかは分からないが、とりあえず、もらい損ねる最悪の結果だけは免れたのだから、よしとしよう。
明日に向けて、シミュレーションをしなくては。
チャンスは多くはない。
だから抜かりなくやらなくてはいけない。
(とりあえず、寝よう)
私はベッドに体を沈めると、すぐに意識を手放した。




