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13 作戦会議(6)

 本当は、拒絶されるかもしれないと思っていた。いつ断られるかと、怖かった。

 普通の人なら「ミリア」には関わりたくないと思うだろうと、分かってる。私だってそうだ、もし私と「ミリア」が別であったなら、私は「ミリア」を見ないふりしただろう。面倒ごとには巻き込まれたくないから。

 だから、付き合いきれないと言われたら諦めるしかないと思っていたのに。

 強引に巻き込んではみたけど、ちゃんとすぐに引けるように気持ちの準備もしていた。いつでも二人が撤退できるように、近づく距離は測っていた。

 それなのに。

 ゼトアは、距離を縮めることはしないけど、私が近づいてこれるように警戒を解いてくれた。私が求める距離感が保てるようにしてくれたのだと感じた。

 私の負担にならないように。

 きっと、ゼトアは私の考えを正確に汲み取っている。いつでも離れられるようにと考えていることもばれている。

(それでも私に付き合ってくれるなんて)

 改めて、負けるわけにはいかないと思った。

 勝って、私の目指した場所を、見せなければいけない。

「私の目的は・・・」ここだけは、誤魔化してはいけない。自分勝手な目的だけど、「自立よ」


「この公爵家を出て、自分で稼いで、自分で歩く道を決めたい」

「どれだけ稼ぐおつもりですか」

「上限は決めてないけど、稼げるだけ稼ぎたいと思ってる。稼ぐための事業計画は、いくつか考えてるの。いずれの拠点も」

「それが北部なのですね」

「そう、私の求める条件が1番揃っているから。利便性の低さはこれから改善していけばいい。その過程も商売になるし。まずは鉄の採掘と、製鉄の工程を軌道に乗せる。鉄は、北部のスヴェルニーチェ公爵家からの信頼を得るために使うの。スヴェルニーチェ公爵と手を組むために」

「スヴェルニーチェ公爵家と、ですか」

「そうよ。・・・そんなに驚くこと?」

 ゼトアは黙ったまま、思案する。

「ゼトア、スヴェルニーチェ公爵を知っているの?」

「会ったことはありませんが、噂程度には」

「どんな人?」

 私が知っているのは、プレートに書かれた経歴だけだ。そこから人物像は想像できても、人となりは分からない。会って話してみると、印象は変わるかもしれない。

「あくまで噂ですので。信ぴょう性もないので申し上げるほどのことはありません。直接お会いした時にお嬢様が判断なさるのがよろしいでしょう」

「・・・そうね」

 偏見は思考を鈍らせる。それが分かっているから、ゼトアは現段階での発言を控えたのだろう。

「じゃあ、まずは当面の資金調達から始めよう」

 話が振出しに戻ると、それまで黙って聞いていたマロウが、心底嫌そうな顔をした。


 マロウは、あまり知略策略といったものには興味がないらしい。

 私とゼトアが話をしているとき、ほとんど口をはさんでこない。聞いているのかいないのかも分からないほどに存在感を消している。場所が調理場ということもあってか、調理器具の整備をし始めていたりと、我関せずといった様子だ。だが、全く話を聞いていないわけではないようで、自分に火の粉が降りかかる話題になったとたんに反応を見せるあたりが面白いと思う。

「どうしたの?マロウ」

 分かっていて聞いてみる。私がわざと分からないふりをしていることに当然気づいているマロウは、さらに眉間のしわが深くなる。

「やっぱり俺は反対だ」

「レオルド・オブリス・サロンで稼ぐのが最短で、確実な方法なのよ」

「だからって危険すぎるだろう。この前は早々に切り上げたから、連中も深追いしてこなかっただけだ。次に行けば、店に入った瞬間からマークされる。桁違いに稼ぐつもりだろうが、絶対に邪魔が入る」

「いかさまがあっても、私が外すことはないわ」

 ルーレットでは、必ずどこかに玉が入る。どれだけ裏で操作しても、玉がどこにも入らないという結果だけはない。だから、入る場所がどこか、プレートで結果を見ている私にとっては負けることがあり得ないのだ。私こそが最大のいかさまだから。

「勝ち続けることが問題なんだっ。何かあったらどうするんだ」

「その何かを回避するのが私たちの役目ということだ」

 ゼトアが言う。

「怖いなら、お前は下りればいい」

 淡々とした口調だった。

 マロウが黙り込む。

「この厨房で、一介の調理人として終わりたいのなら、そうすればいい。ただ、今のお前はここにいたところで、お嬢様の食事すら準備できない下っ端だろう」

 重苦しい沈黙が流れた。

 私が悪いことをしたような、申し訳ない気持ちになってくる。

 何か言った方がいいだろうかと思い、何を言えばいいのか思いつかない。

「やらないとは言ってない。俺は反対だと言っただけだ」

 ぼそぼそと、マロウが言う。

 その言葉を聞いて、ゼトアは横目で私を見ると、にやりと笑んだ。


 さすが、息子の性格をよく分かっている。

(ちょっと、マロウが不憫に思えるけど)

 私に協力したことが得策だったと、必ず思わせてあげなければと、強く思った。

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