表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元人間の天狗徒然紀行  作者: 唐墨 いくら
第二章 蛍恋祭編
36/37

その九、目が覚めたら

いつも読んでくださりありがとうございます。

光翼視点の続きです。


 暖かな光が目を刺激する。それに風に乗ってなにやらワーワーギャーギャー何かの泣き声が聞こえる。


 「んぅ…ふみゅ…?」


 なんだ?今の声は。あ、私か。と、自分の声を判別できないほど、光翼は寝ぼけていた。

 薄ら目を開けると、自分は蔦で創られたハンモックの上で横になっていた。そこへずいっと小さな顔が覆い被さってきた。


 「あ、おねーちゃん、起きたんだ。おはよー。お寝坊さんだね。おーい、山の!光翼おねーちゃん起きたよ!」

 

 「おぉ、目が覚めたか。おはようさん。」


 コツ、コツと杖をついて寄ってくる音の方向を見ると、見慣れてきた小さな老人の姿があった。


 「おじいちゃんじゃん、おはよ。なんか疲れて寝ちゃったみたい…?」


 「随分な寝坊助のようじゃ。今はもう昼過ぎじゃぞ。」


 「山の、光翼おねーちゃんは昨日の晩本当に大変だったんだから。誰かさんの元眷属さんのせいで。」


 「蛍の、それは悪かったとさっきから謝っておるじゃろうて…。」


 「あんたんとこの天狗の大暴れで数年私、眠ったままになる羽目になったんだからー。」

 

 「すまんかった、儂の教育が足らんかった…。じゃが、その大暴れの元天狗に儂の新たな天狗は勝ったぞい!」


 「うれしそうだね。山の。」


 「そりゃーな!儂の目に狂いはなかったのじゃ!天狗となり修行して間もないのに!」


 小声で「いやー正直聞いたときは光翼はもうダメかと思っとったが…イヤーよかったよかった」となんとも呑気なことを言っている。それを聞いた光翼の心の声はまさしく


 ―――こんの爺さん!一回同じ目に合わせてやりたい…!―――


 である。

 

 「ホタルちゃん、随分おじいちゃんと仲いいんだね。」


 「うん、私が生まれた時から山のはいたの。元は別のそれは大きな山そのものだったらしいけど、こっちに引っ越したんだって何も聞いてないのに自己紹介してきてね…」


 「まて、蛍の、なんか儂に対する態度が…涙で塩辛くなりそうじゃ…。」


 「だって!光翼おねーちゃん聞いて!かわいい眷属が命の危険に合っているのに、私が山のを呼びに行ったとき山のは何をしてたと思う?!のんびりキイチゴつまみながら月見酒楽しんでいたんだよ!」


 こののんびりしてそうな見た目の翁から、その晩酌風景が容易に光翼には想像できた。


 「それは、楽しそうだったね?おじーちゃん?」


 「光翼…?お主の笑顔はいつも輝くばかりだが、今回ばかりはなぜか怖いなー。山神の儂でも怖いなー。」

 

 「ホタルちゃん、そのあとはまだ何かあるの?」

 

 「うん!本当自分の領域なのに警戒感無い上に、酒で感覚鈍っているからか、私が「光翼ちゃんが危ないから来て!」って言っても、「はれぇ?ほんなはずなかろー?」ってとぼけて!光翼おねーちゃんのところまで連れていくまで本当に大変だったの。」


 「へぇ、それは、それは…。」


 「み、光翼…。」


 光翼の笑顔がさらに深くなる。


 「ホタルちゃん、これ正座ものってことでいい?眷属だけど、良いよね?」


 「良いよ。私が眷属だったら正座よりもっと厳しいのに、良かったね山の。光翼おねーちゃんは優しくて!」


 「と、トホホ…何も言えぬわい。」


 光翼はハンモック型の蔦から降りると、先ほどから少し向こうでバタバタギャーギャー騒ぐ音の方へ近づいていった。

 見るとそこには竹で作られた鳥かごに羽の毟られた白ガラスの迅空がいた。


 「迅空、こんな姿になると最初にあった時の威厳や凄みも何もないわね…。」


「うぅ…ちくしょう、俺をこんな檻に閉じ込めやがって…。やいジジィ!とっととここから出せってんだ!」


バタついて話す迅空はなんとも滑稽な姿であった。毟られた箇所は頭の羽にまで及んでいた。普通なら痛々しい姿であるが、昨晩のこともあり、光翼は少し意地悪をしてみたくなった。


 「ふぅん、今そこから出して、人型に戻ったらあなたの頭、どんな感じになるんでしょうねー。見てもいいですか?せ、ん、ぱ、い?」

 

 恥ずかしさと、修行もまだ初めて間もない雛鳥のような天狗に馬鹿にされ、悔しさで迅空は涙目であった。


 「ふん!誰がお前みたいな元人間の言うことなんか聞くもんか!俺は本当はお前なんかよりずっと――ヘブ?!」


 檻の上からいつの間にかいたフィが迅空を睨んでいた。迅空は途端に小さくなり、涙目から本当に涙が出てきていた。


 「どうやら、迅空は儂の折檻よりお主のパートナーであるフィの攻撃がよっぽど堪えたようじゃ…。儂よりも…。」


 それはそうだろう。自分より大きい個体の梟が何十羽も襲い掛かり、足蹴にされ、羽を毟られてしばらく恐怖を覚えないカラスはいないだろう。彼は妖怪だが。


 「僕のご主人が昨晩は世話になったな。」


 フィが普段のかわいらしい声から一転、最大限にどすの効かせた言葉を上から迅空に投げつける。迅空はトラウマになっているのか、既にちびりだしていた。


 「ご、ごべんなざい!いや、ぞんなづもりじゃ…!」


 「僕に謝られてもなぁ?さっきご主人に向かって元人間とか馬鹿にしたような口聞いちゃってさぁ?檻に入れられただけで許されるとでも思ってんのかなぁこのカラスが!」


 フィが片足で檻をぐらぐら揺らす。今までここまで怒ったフィを見たことがなかったため、怯え泣いている迅空以外の一同は唖然としていた。が、すぐに光翼は「これはいけない」とすぐ割って入った。


 「フィ、フィ、私のこと心配してくれてありがとう!でも、あまりやりすぎるとなんか可哀そうになってきたんだけど。」


 「はぁ?!ご主人お人よしが過ぎる!なんで自分を殺そうとした奴の情けなんかかけれるんだよ。自然界じゃ、生きるか死ぬか、殺すか殺されるかなんだぞ!僕納得いかなーい!」


 「でもでも!あ、ほら!脅かしすぎると迅空から直接話が聞けないじゃん!なんでここに来たのか、なんで私を襲ったのかとか。お爺ちゃんの結界に細工したっていう疑惑もあるし。人間でいうところのこれは事情聴取!そう!事情聴取ができなくなるから!」


 気だるげにフィは足を止めて今度は光翼の肩に移った。


 「うーん、ご主人がそういうならいいけどさぁ。でも、なんかあったら僕次は全部の羽毟ってやるからな!」


 「うん、ありがとう。」


 「ふぁああ、僕ご主人が起きるまで起きてたから疲れちゃった。ちょっと寝よ。」


 「ごめんね、フィ。心配してくれてありがと。お休み。」


 「お…俺の羽が全部…今度こそやられる…っいーーーーやーーーーーーだーーーーーーーーー!」


 悲しいかな、円形ハゲがところどころにあるカラスの絶叫がまたしても森にこだました。

迅空、ここまで来ると可哀そうになりますね。(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ