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元人間の天狗徒然紀行  作者: 唐墨 いくら
第一章 山籠もり編
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その十四、気晴らしに池

明日から新生活ですね。皆さん体調管理だけはしっかりとしましょう

 滝つぼを住みかとしてしばらくが経った。未だ香音との連絡を取る手段を見つけれていない。フィは香音を知らないし、自分が香音の元へ行くとまたあの山の付近を通らねばならず、休憩も挟まなければならない距離まで来てしまった。住宅街という人里に降りることも今では怖くてできない。

しばらく人と接触していないため、若干人間不信に陥ってしまったのだ。


 「どうしたもんかなぁ…」


 考えながらも木々の間を飛んでいく。もう季節は梅雨が始まろうとしている。むしむしとした空気が山にまで伝わってきている。その間に光翼の翼も飛行能力も飛躍的に成長し、今では羽は広げると身長の3倍になるかと思うくらいだ。しかし、飛ぶさまはまさしくツバメの様に、高速で低空飛行も難なくできる。


 慣れた羽つきで飛んで行った先には最初の山にはなかった池がある。目的はおなじみの食料魚獲り。

池というよりは、湖かと思うくらいの大きさだ。標高は高いが、ここに釣りに来る人も多いのだろうか。幸い今の時期は休暇が少ない。しかも今日は平日だ。池には誰もいなかった。


 裸足になりそっと、池に入れてみる。水は綺麗な分、冷たい。全身入るのは無理だが少々蒸し暑くなってきたこの頃、こういった場所が必要だ。


 「フィ!気持ち良いよ!入ってごらん!」

 「フィィイイイ!」


 待ってました!と喋れるなら言っているであろう。光翼の近くを目掛けてバッシャ――――ン!と飛び込んだ。


 読者はすでにお察しいただけるであろう。光翼は案の定ずぶぬれだ。水は冷たく、飛び込んだ勢いで泥が舞い上がりで光翼は考えるまでもなく――


 「やったなぁああ!可愛いからって何でも許されるわけじゃないわ!」


 と水かけ合戦が始まった。木陰から静かにのぞく視線には気づかずに。しばらく、今までの考え事や悩みを無理やり忘れようと、全力で遊んだ。


 ひとしきりじゃれあって遊んだ後、一人と一羽は岸辺の草むらに横たわった。春が終わりそうなまぶしい光が彼女たちの体を温めていく。風はそよぎ、水面はキラキラと反射して地面のシャンデリアと、一瞬光翼は思った。


 光翼は山が好きだ。山の中だととても落ち着く。不思議なことに、山で生活してから一日たりとも食べ物や飲み物、生きるのに必要なものが見つからずに終わるという日はほとんどなかった。まるで山が、森が、川が、光翼を支えているかのような感覚があるのだ。そのような感覚に見舞われるたび、光翼は心が安らぎ、安心して今まで暮らすことができた。


 「人と距離を置いたから、山が励ましてくれてるのかな」


 そう呑気なことを言いながら、このような穏やかな日々が続いたらどれほどこの先の人生が楽かとも思った。

 休んだ後はせっかく池に来たことだしと、前の山での暮らしでおなじみになった釣りをした。


 「水辺と言ったら釣りよね!フィも何かいたらとってきておいで。」


 フィが反対側まで飛んでいき、狩りモードに入った。ならばこっちも狩りモード。ここではニジマスがいるらしい。前の川では虫を針に付けたが、今回は昨日の食事の残りを固めたものをつけてみた。食いつきがとても良く、入れた瞬間にすぐに引きが来た。


 竿に込める力が高まる。この引きの瞬間がとても楽しい。毎日のように釣りをして、光翼はすっかりこの感覚の虜になった。

 遊ぶように魚は右往左往に引っ張り、光翼は糸を巻いて距離を縮める。水面に見えてきた魚体は太陽に照らされてキラキラと光る。とても色鮮やかなニジマスだ。


 魚は一日に一匹あれば十分だろう。今日は半分を刺身にしてみるか。ビチビチ言わせる魚を掴み、献立を考える。米も調味料も残り少ない。素材の味を生かした調理でなるべくしのごう。米の代わりに、芋のようなものがあればいいんだけど、と思うが芋はなかなか見つからない。


 早めに引き上げて芋でも探すかな。


 「フィ!満足したら戻っておいでね!私先帰るから!」


 そう呼びかけ、彼女は滝の洞窟まで戻りながら芋散策に移った。そして、一人の人影も同時に動いた。


 まるで彼女を追跡する陰の様に――



ところで、今日3月31日は私の誕生日です(笑)

平成の区切り、年度の区切り、人生の区切り、4月からは色々新たなことが始まり、それまでのことが終わりそうですが日々目の前のことをしっかりとやっていこうと思います←

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