その十、山の中でグルメしよう
ただの飯テロのような話になっちゃいましたね。
山籠もり生活をして一週間が経った。フィは相変わらずけがで飛べないようだが、段々と元気を取り戻しているようで、最近はテント周辺をぴょんぴょんと跳ね回っている。そして何より、光翼にすっかり懐き、どこへ行くにも一緒にいようとする。飛べないのだが、空を飛ぶときもついてきたがったため、買い物で手に入れた竹かごの中に入り、運ぶように飛んでいる。地上では肩に乗ることが多く、今もなお肩の上に乗っている。それは良い、それは可愛くてよいのだが、
「あの、痛い…、重いです、フィちゃん。」
「フィー!」
これくらい軽いもんだろう!と、抗議の声を上げるかのような鳴き声をあげるフィ。体格の大きなシマフクロウが大きなカギ爪のついた足でこうもがっしりと肩に乗られるとこちらとしては非常に痛い。あと重い。あまりにも長時間乗っていられるのはきついので、
時々下すか抱っこする形で我慢してもらっている。光翼がそろそろ本気で痛重くなってきたと見て、フィは仕方なしに降りることにした。
「今日はよく晴れてるし、フィの様子も元気そうだし、久々にまともな食事を作っちゃおっかぁ!」
「フィ?」
天気は晴れ、気温も暖かく、最近は昼頃に体を動かすとやや暑いくらいだ。こんな穏やかな日に、何もしないで終わるのはもったいない。光翼はかねてから欲していた、美味しいものを今日こそは自分の手で作ることにした。思い返せば、山籠もり初の食事は味のない魚の素焼きとこれまた味付けのされていない山菜のみ。買い物を経てからはよりまともな食事にありつけることができたのだが、生き抜くために必死になり、美味しく調理するという精神的な余裕がなくなっていた。ようやくここでの生活に落ち着いて初めて、自分がグルメだったのを思い出したかのようである。
「今日はいつもの川で魚を取る前に、山菜もとって炊き込みご飯とかにしてみよう!山菜リベンジだぁい!あとは玉ねぎとニンジン、ジャガイモが少しずつに…あ!里芋があるじゃん!…よし、今日は炊き込みご飯と里芋の煮物に山菜のおひたし!今日は御馳走だよフィ!」
「フィィイイュ!」
なんだか嬉しそうに話しかける光翼に、何を話しているかははっきりは分からないがきっと良いことなのだろうとフィも嬉しそうに返事をする。相変わらず鳴き声は掠れていて、顔つきも顔周辺の羽のせいで少しふてぶてしく見えるがこうして暮らしているととてもかわいらしい。
「いくよ!」
翼を広げ、山菜を入れる予定の籠にフィが入った途端飛び立つ。ここにきてから周辺の山の地形は大分覚えてきたため、木々の間をスイスイと通り抜けてあっという間に目的の山菜が多く生えているところへ来た。フィは夜行性のため傍の木の枝ですぐお休みモードに入った。フィがお休みモードでも、光翼は活動モードだ。すかさずスマホで調べ上げた山菜リストを見比べて必要な量だけ採っていく。ウドにタラの芽、コシアブラ、フキにゼンマイ、ネマガリダケ。これだけあったら十分だろう。採った山菜を籠に入れ、間違ってフィが中に入って踏んづけてしまわないように蓋をする。お休みモードで動きたくないフィを抱き、川で魚を獲る。そこで何かの異変を感じた光翼
「ん...?これって靴の跡よね。泥がカピカピだからだいぶ前に来たようだけど、私の釣り場と全く一緒なんて...。」
こんな山奥の小さな川まで人は入り込むのか。人間として20年生きていながらもこの山に住む動物たちの人間に対する恐ろしさを少し共感した。何と言っても今の光翼は極力人に見られてはいけない姿。ここに人が来る可能性がある限り、なるべく別の場所を探したほうがよさそうだ。
ということで少し上流部まで戻ったのだが、ここには人が来た形跡は無いようだ。少し安心してフィが見守る(お昼寝しているのだが)中でアマゴを数匹釣り、少し早めに撤収した。
大分前に来たっきりかもしれないとはいえ、なるべく人と遭遇するリスクを避けるために大人しくテント周辺にいたほうが良いだろう。今日は早めに帰って御馳走の支度!と気持ちを切り替える光翼なのであった。
早速調理スタート。頭の中で某マヨネーズの料理BGMが頭に流れながら山菜の泥を洗っていく。里芋は皮をむきフライパンの水にさらす。アマゴはすべて内臓を取り、そのうちの一匹だけ頭を取る。お米を研いだら下処理は完成。
別の竹筒に水を入れて沸騰させ、その中に塩と山菜を入れていく。アクを取り除きながら色が変わるまで茹でたら、フキはミシン切りと3㎝の長さのものに切り、ネマガリダケは千切りに。ゼンマイ、タラの芽、コシアブラは食べやすい大きさで。最後に残ったウドは4㎝の長さに切っていく。そして最後にアマゴの頭を取ったやつを下茹でする。
炊き込みご飯を作るため、お米を竹筒に入れ、みじん切りしたフキと千切りにしたネマガリダケ、ゼンマイを入れていく。竹筒なので量が一気に入らない。なら2つだ。2つの竹筒に材料を入れたら、醤油、みりん、砂糖、塩を適量加えて最後に下茹でしたアマゴを散りばめる。簡易な蓋をして弱火の位置になるよう焚火に引っ掛けた。あとは待つだけ!
里芋の煮物は簡単だ。醤油、砂糖、みりんに水を加えて里芋を煮る!フキと残ったネマガリダケを加えたらこちらも煮えるまで待つのみ。
待っている間におひたしを。塩ゆでしたタラの芽、コシアブラ、ウドを洗ったビニール袋にだしの素と醤油を少し入れてよくも見込んで放置!
山菜や調味料のいい香りがしてくる。塩をふったアマゴを串に刺して焚火にかざしている、その串からも魚が焼ける香ばしい匂いがしてきて、光翼に食欲が急激に襲ってきた。まだだ、食べるのはまだ早い。
漸く炊き込みご飯も魚もできたころ、そこには空腹で今にも食べんとする、目をランランとさせた翼付き人間と梟がいた。フィは魚食なので焼いていないアマゴ2匹と、焼いたものを味見程度に大きな葉の上に置いた。フィはすかさずがっついて嬉しそうな鳴き声を何度もうなるようにあげながらんまんまと食べた。
一方の光翼はと言うと、炊き込みご飯を美味しそうに竹の皿に装い、里芋は、そのままフライパンから食べる気だ。
ふーっふーっと、熱々のご飯を少し覚まして口に頬張る。目を閉じ、頬を緩ませ出た言葉は
「ハフッ…うっま…来ててよかったぁ…」
涙流さんでもというようなフィの目にも構わずじっくりと味わう。山菜の独特な香りが口に入れた瞬間充満する。山に生えているためか、香りがとても強い。が、それを竹筒の香りが移った柔らかな味のご飯が包み込んでくれる。そしてなんといっても楽しみはアマゴ。アマゴの淡白な白身は炊き込みご飯に旨味を与え、アマゴ自身も山菜や竹の香りを吸い込んでいてなんとも言えない美味しさ。お店で出せる味だと確信する。
数口食べた後里芋にターゲットを移す。里芋大好きな方ならあのねっとりした触感と甘じょっぱいタレが絡んだ時の美味しさは御存知だろう。そのいつもの美味しさにフキとネマガリダケを追加されているのだが、これまた目からうろこの美味しさであった。フキは後から入れたのだがそれが良かったのか、あまり味は濃い過ぎずフキ本来の味も楽しめる。ネマガリダケのシャキシャキと里芋のねっとりが交互に来て幸せに身悶えする。
お次はアマゴの塩焼き。素焼きで食べるより、やはり塩は少しでもあったら美味しい。どんどん食欲が進む。
一通り食べたところでおひたしで口をさわやかにする。山の香りが炊き込みご飯の時よりも強く広がり、今いる山と一体になっている感覚がする。美味しいものを食べてこんなに幸せになったのは山に来て初めてだ。余裕がある限りできるだけ美味しく作ろうと決めた。
ふとフィを見るともう全て平らげており、美味しそうに食べている光翼の食べ物を
じーーーーーっ
とみている。はい、お代わりと予備にとっておいたアマゴを置くが、焼いたアマゴも気に入ったのか、今齧らんとする手に持っているアマゴをつぶらな瞳で見つめておねだりしてくる。可愛さには勝てない...。焼いたアマゴの残りをすべてフィにやり、光翼自身は山菜尽くしコースを堪能したのであった。
ちょっとバタバタしてしまって更新がなくてすみません!
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