表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

お昼寝

title by 確かに恋だった



バカップルへ30題

13.お昼寝

土曜日の午後。

特に部活に所属しているわけでもない二人は、基本土日は休みだ。

今日は今年一番の暑さになると天気予報で言っていた。

そんな中、わざわざ外で志月が会おうとするわけもなく、いつものように伊織の一人暮らしのマンションに二人はいた。

人一人分空いた距離で、お互いに雑誌や本をパラパラとめくる。


「ねぇ、志月」

「何?」

「暇じゃない?」

「別に」

「映画とか行かない?」

「いや」

「映画館きっと涼しいよ」

「行くまでが暑いじゃない」

「……」


伊織の家から最寄りの映画館までと、志月の家までの距離は大して変わらない。

これは、映画館に行くまで歩くのは嫌だが、伊織の家に行くのは暑さに耐えられる、と言っているようだ。

その考えに達した伊織は緩む頬を抑え切れないまま、手元の雑誌に目を落とす。

まぁ一緒にいられるからいいか、と。




しばらくして、伊織はやっぱり恋人同士が同じ場所にいるのに、お互いが別々のことをしているのはいかがなものか、と思い直す。

一緒にいられるのは、もちろん嬉しい。

学校ではクラスが違うから四六時中一緒にいられる訳じゃない。

帰る方向だって違うから、一緒にいられる時間は短い。

だから、休みの日くらいもっといちゃいちゃしたいものだ。


「志月ー」


伊織は雑誌に目を落としたまま、愛しい彼女の名を呼ぶ。


「……」

「しづ……き?」


返事のない志月を覗き込もうとして、肩にかかった重みに目を見開く。

志月がコテンと伊織の肩に頭を乗せていた。

いつも必要以上に近付かない、手を繋ぐのすらあまり好まない志月からの急な接触。

伊織は、らしくもなく心臓が高鳴るのを感じた。


「志月……って、寝てるし!」


高鳴る心臓は急激に冷え込む。

伊織が志月を覗き込むと、すーすーと穏やかな寝息をたてて眠っていた。

確かに昼食を食べ、今は午睡にはちょうどいい時間かもしれない。

外からの厳しい日差しもいい具合に遮られた部屋の中。

何をするでもなく、本を流し読み。

昼寝の要素はいっぱいあったけれども、彼氏の家で、彼氏と二人で、寝るのか!?

思わず突っ込まずにはいられない。心の中で。


「しづきー、こんなとこで寝たら襲っちゃうよー」


半分冗談でゆらゆら揺すりながら声をかけるが、起きる気配はない。


「志月チャン」


伊織は思わず溜息をつくが、寝てる彼女には通じない。


「ん……」


小さく呻いて身じろぐ志月に起きるか、と様子を伺うが態勢を少し変えただけで、眠ったままだ。


「起きる気配ないなー。座ったまま寝ると起きた時体痛いよー」


なんだかんだ彼女の穏やかな睡眠を邪魔する気にはなれなくて、伊織は小さく話し掛けるが、大した意味はない。


「仕方ないな」


起こさないようにゆっくりと肩から、志月の頭をどかし、彼女の背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。

そのまま立ち上がると隣の寝室の扉を足で押し開け、部屋へ入る。

自分一人で寝るには広すぎるベッドに志月をそっと下ろすと、伊織は離れる――ことができなかった。


「えっと、志月チャン?」


もちろん寝ている本人からの返事はなく、伊織は下を見下ろした。

志月がギュッと伊織の服を掴んでいたのだ。

軽く引っ張ってみたが、離れない。


「いおり」


小さく漏れた呟き。

伊織は驚愕の眼差しで、志月を見つめる。

志月は無意識なのだろう掴んだ服をキュッと引っ張る。

驚きに固まっていた伊織は思わずバランスを崩してしまった。


「う、わ!危なっ」


どうにか志月を避けてベッドに手を付けたが、間近に迫った志月の顔。


「っ」


またも心臓がバクバクと鳴る。


いいだろうか。


ふと思い至った考えに慌てて首を振って否定する。

息を詰めた後、長く深い溜息をつき、伊織は志月の横に寝転んだ。


「無防備過ぎだよ、志月」


そっと志月を抱き寄せて、伊織も眠りの淵へと旅だった。

今はまだ。

この穏やかな一時を。

二人でお昼寝。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ