第17話 屋台ランキング
「これ見て!」
ハンナさんがそう言って一枚の紙をわたしに見せつけてくる。
「屋台ランキング?」
紙の一番上にはそう書かれていて、一番上から屋台名、おすすめ料理、味の評価という感じで書かれている。
「そう! カレンのお店がこれに載ったの!」
「え?」
わたしはざっとランキングを見ると、一番下……の、特別企画的な所に今話題の屋台! ということで紹介されていた。
「わ、本当です! わたしの屋台名がありますわ!」
「すごいでしょ!? このランキングって基本的に新規の屋台は半年間は載らないんだけど、カレンくらい噂になると特別枠っていうことで載せてくれるんだってね!」
「こんなランキングがあるのも知らなかったですわ」
「ほんと? まぁ、毎日あれだけ忙しくしてたから知らないのも無理はないか」
そう話を聞きつつも、フライの揚がり具合からは目を離さない。
「揚がりましたわ。突然失礼いたしました」
わたしはそう言ってお客様に頭を下げる。
うれしいお話ではあるが、接客中にすることではなかったかもしれない。
「いいって。通っているここがランキングに載ってくれて嬉しい」
「ありがとうございますわ」
優しい言葉をかけてくれる人で助かった。
「あ、ごめんなさい。仕事の邪魔をしちゃって」
「いえいえ、嬉しいお話でしたので助かりました。詳しいお話は夜でもよろしいですか?」
「ええ、そうしましょう」
ということで、彼女も仕事に戻っていく。
わたし達はそれから仕事を続けて、ハンナさんの家に行った。
「おめでとー! これでカレンの料理が認められたわね!」
「だな! こんなあっさり載るとは思ってなかったぜ!」
ハンナさんの家にいた本人とアミアさんにそうお祝いをされる。
「ありがとうございますわ。正直、まだ実感が湧きません」
「それはこれからよ! これからは観光客とかもこのランキングを見てくるようになるからね。場合によっては貴族が来ることだってあるんだから!」
「そんなことがあるのですか?」
貴族とは基本的に家で食事をするもの。
もしも外でするとしても、レストランでそれも品格のあるところでするものだと思っていたのだけれど……。
「この都市だとあるわよ。ま、そうは言っても来るのは下級だろうけど。そうじゃない場合は……」
「そうじゃない場合?」
「家……屋敷で料理を作ってほしい。そう言われて臨時で作ることを依頼されるのよ」
「なるほど……」
「あたし達料理ギルドが間に入らない依頼は受けちゃダメだけど」
「そうなのですか?」
それは……何か入らないといけない理由があるのだろうか?
「そりゃ料理人だもの。敬語がおぼつかなかったり、料理に混ぜ物がないかとか色々とチェックするのにも大変だからね。後は、料理ギルドに所属しているっていうことは、領主であるウェリス侯爵に守られているっていうことでもあるの。だから、多少のやらかしなら守られるのよ」
「なるほど。それは知りませんでした」
「だから、この街で料理店を構えることには意味があるし、料理人の目標でもあるの」
「では、もっと頑張りませんと。お父様とお母様の目に届くように」
わたしは気合を込めてそう言うと、ハンナさんが首を傾げる。
「どういうこと? そもそもカレンってどうしてここに来ることになったの?」
「あーそうですわね。お2人であれば言うべきでしょう」
わたしは異世界の記憶がある……ということだけを隠して、海でタルに詰め込まれて放り出された所から話す。
ないとは思うけど、頭がおかしいとは思われたくないから。
「ということがあり、わたしはこの街に来て、店を……料理店を出そうと思ったのですわ」
「うぅ……そんな……苦労したのねぇ……」
「てやんでい。別に……同情なんてしねーよ」
ハンナさんはハンカチで涙を拭いていて、アミアさんは上を向いてそう言っていた。
「ここまで順調に行っているので、このまま店を構えられるといいのですが……」
両親に届いて欲しい。
そう思うと、気持ちがはやる。
けれど、そんな簡単なことではないとも思う。
屋台の料理でまずいと思った所は一つもなかったし、他にも屋台を出している場所はある。
そちらの方の情報も集めてみないと。
「つーか。この街でカレンの祖国を知っている奴っていないのか?」
「お客様に聞いたりしているのですが、みな知らない……とお答えになられますわ」
「そっか……商人ギルドとかどうだ? あそこなら色々と知っている連中もいるだろう?」
「受付の方に尋ねましたが、そんな国との取引はないと言われました。もちろん、商人独自に取引のある場合は別だけれど、彼らでは今の所知らないと」
「そっか……」
これでも色々と聞いたりしている。
ただ料理のことだけを考えているわたしではないのだ。
次に、これまで黙っていたハンナさんが口を開く。
「そっか……それなら、暗黙の了解だけど、ちゃんと言っておこうかな」
「何がですか?」
「カレン。あなたがこのランキングに載ったことによって、これから貴族からの招待を受けることがあると思う」
「はい」
「そういう時はなるべく受けなさい。金額が低くてもいいから」
「それは……どうしてでしょうか?」
「詳しく言うとね」
ハンナさん曰く、料理ギルドの中でも料理人ごとのランクがあるらしい。
いわゆる貢献度……というものだろうか。
そして、貴族を通しての依頼を受けると、ランクは当然上がりやすくなる。
すると、店舗を構える権利を得られやすくなるらしい。
それだけ、料理ギルドに貢献をしていることの証明として。
「だから、できるだけ受けるといいわよ。屋台を閉めないといけないから、嫌だ。っていうことで断る人もいて、理解はできるけどね」
「ああ、なるほど……」
確かに今は常連さんになってくれている方々もいる。
今は毎日営業をしているが、それを止める時も必要になってくるのか。
「うーん。あんまり営業を止めたくはないのですが……」
「カレンならそう言うと思った。だから、先に言っておいたのよ」
「……ありがとうございます」
「ただね。街の連中はそんなの慣れているから、大丈夫よ。次の日から普通に営業する屋台もたくさんある。だから気にしないことね」
「わかりました」
そうまで心配してくれるのはとても嬉しい。
わたしとして返せるのは……。
「では、お食事にいたしましょう」
「やったー!」
「待ってたぜ!」
「今日はなんニャ!?」
「ピー!」
「無理はしないようにね」
「ええ、料理はわたしの一部。無理など一切ありませんわ」
こうして、みんなが嬉しそうに食事を期待して待ってくれている。
わたしは、そのためにも料理を続けているのだ。
今日は何を作ろうか。
色々と食材を見ながら料理を考える。
屋台ランキングの順位を上げたり、両親を探したり、元の国を探すということもしなければならない。
けど、今わたしができることは料理。
そのために、わたしは行動していく。




