第10話 市場調査
翌日、わたしは屋台を開くのではなく、市場調査をしに来ていた。
時刻は11時の鐘近くのため、ほとんどの屋台が動き始めていて、客の呼び込みもしている。
わたしはソラ達も皆連れて、これから商売をする相手の情報を集めるのだ。
ということで、わたしはゆっくりと歩きながら、他の屋台の料理を観察していく。
「カレン。その格好はどうにかならなかったのか?」
「おかしいですか?」
わたしは九尾の指摘で自分の格好を見直す。
ドレスはいつものだから問題ない。
顔は市場調査とバレるとまずいので、目深な帽子を被り、サングラスもしている。
サングラス……という名前ではなかったけど、サングラスのような見た目なのでそう呼んでもいいだろう。
後は布で顎から鼻の頭まで覆い、身バレ対策はばっちりだ。
「どう見ても怪しい格好だと思うが、周囲の視線も君を見ているぞ」
「ニャニャ!? みんなボクの可愛さに見とれているんじゃないのかニャ!?」
「わたしもそうだと思っておりましたわ」
ソラがショックを受けた。
わたしもみんながソラの可愛さを見ていると思っていたのでちょっと信じられない。
「ツッコミは俺の役目ではないんだがな? 普通に怪しいから、やめた方がいい。ほら、あそこで話している兵士は怪しい奴がいると聞いて遠巻きに見ているよ」
「普通にしますわ……」
「うん」
ということがちょっとあったが、わたしはいつもの姿で市場調査をしていく。
串オーク、串オーク、オークパイ、魚の丸焼き、串オーク、オークパイ、オーク……ピザ?、魚のパイ、串オーク……。
他にも何種類かあったが、とりあえず思ったこと。
「オーク肉多すぎませんか?」
わたしは通りの屋台を見て、思わずそうつぶやいてしまう。
それに答えてくれるのは九尾。
「仕方ない。ここはダンジョンが近いから、そこから取れるオーク肉が一番安価だし美味しい。魚もそこそこ売っているだろう? 漁港に近い屋台ならあれらがもっと増えるはずだよ」
「ああ……やはり地理的条件は大きいのですわね……」
「同じ街だからそこまで大きくはないがね。他の食材に関しても、氷魔法の使い手も多くはないから他の土地から新鮮な物を運ぶということも難しい」
「ですわねぇ……」
わたしはそう言いながらも、屋台を見続けていく。
気になった料理や、店主の手際のいい屋台には心の中で目印をつけておいた。
「それに……一つ一つが大きくないでしょうか?」
「屋台に何回も並んでいる時間もないだろうし、手軽に食べられて満足感があるもの。っていうのが大きいだろうね」
「なるほど……」
地球でも、昔の人は昼はそこまで重要視しなかったとも聞いている。
ここは観光で多くの人が来て、さらに料理を大事にしているからこそ、食べる人がそれなりにいるのかもしれない。
それか、こっちの肉の方が大きいぞ! というアピールの末の結末か。
まぁ、それは考えすぎかしら。
「では、次は気になったのを食べてみましょうか。どれが食べたいというのはありますか?」
「ボクはあれニャ!」
「ピー?」
「俺は君が食べたいのを選んでほしいかな」
ソラはわたしも目をつけていた手際のいい屋台を選び、フェニックスはわたしを指……羽差し?、九尾は助かることを言ってくれた。
「では、ソラが選んだ物と、フェニックス、今回は我慢してくださいな。九尾はありがとうございますわ」
フェニックスはガーン! と擬音を立ててショックを受けているが、市場調査なので許してほしい。
わたしは手早く目当ての料理を買い集めていく。
「俺が魔法で持つから他も買ってくるといい」
「助かります」
「ボクも持つニャ!」
「ピー!」
みんながそう言って手伝ってくれるので、食べてみたいと思っていた物は全て集まった。
「これだけ集まれば十分ですわね! 早速食べましょうか」
「ニャ!」
「ピー!」
「だね」
ということで、わたし達はそれぞれを皆で分け合い、味の品評会をする。
「これは美味しいですわね!」
「斬新だニャ」
「ピ」
「刺激的だねぇ」
「こっちのは……なんだか良く分かりませんわ」
「もにょもにょするニャ」
「ピ……」
「落ち着く味ではあるんじゃないかな」
等々、なんというか、自分の知らない食材もあるような気がしていて、とても楽しみ。
だが、同時に知っている食材などもあるようで、とりあえずはそちらで生計を立てるべきかとも思う。
「なるほど、どの店もしっかりと選ばれているだけあって、強みはありますわ」
「屋台で出すメニューは決まったのかニャ?」
「ピー!」
「次は何を作ってくれるのか楽しみだ」
ソラもフェニックスも九尾もみんながわたしが作る料理を楽しみにしてくれている。
なら、腕によりをかけて作らなければ。
ただ、そのためには食材の調達にも気を遣う。
でも、今なら頼りたい人がいる。
「では、早速食材調達に行きましょう」
ということで、わたし達はアミアさんの所に来た。
昼もそこそこ過ぎているからか、人通りもそれなりで暇をしている店主等もいる。
「アミアさん、今お時間よろしいですか?」
「お! もう来てくれたのか!?」
「はい。屋台を出したらあなたの所の食材を使わせてほしくて」
「あん? 串オークを出すんじゃないのか? あれだけでも十分流行ると思うぜ? それとも約束を気にしてんのか? 串オークで人気が出てからでもいいぜ?」
「そういう考えもあるとは思いますが、やはり、アミアさんの所の食材を使って調理がしたいと思いまして」
「嬉しいねぇ。好きなの選んでけよ。つーか、裏で調理してもいいぜ」
アミアはニカッと笑うと、店の奥を親指で指す。
「本当ですか? ではまずは食材について教えてほしいのですが」
「任せろ」
ということで、今並んでいる魚介類について全て詳しく教えてもらう。
知らない物も当然あったが、知っている物……というか、同じような存在もあった。
「あの……これとこれとこれ。使ってみてもよろしいですか?」
「いいけど……あんまり人気ないぞ? 言うのはあれだが」
「そうかもしれません。ですが、わたしが人気にしてみせますわ」
わたしはそう言ってそれらを持ち、裏の調理場に案内をしてもらう。




