第8ターン①
このセカイは今まさに産業の黎明期に入っているようだった。
アナベルの起こした全振りの内政、産業の政治手腕がマッチし、その所為もあってと言っていい。
魔導変換、印刷、通信の科学技術、工業、これらが飛躍的に伸び、街角には放送が流れ、映像投影機と言う物が街頭におかれ、やがて各家庭に人々は外国の様子や、世の中の推移を映す映像や、音声を市民が手に入れることが一般化するようになりつつあった。
☆
そんな時あの自称敏腕プロデューサーから連絡が入った。
この国だけでなく、アナベルたちの歌が巷では大変な話題だとの連絡が入った。
そして直接会って話がしたいとも。
日々の業務の合間、あのゴタゴタの合間でもアナベルたちの歌や、ダンスのレッスンは続いていた。
「ハハハ、ご無沙汰です、あれから連絡がないのでどうしたものかと、気をもんでいたんです。」
プロデューサーは言った。
アナベルたちは巡視のため地方に出向いていた。
あれから、と言うほど時間はたっていないはず。
地方の宿泊施設での談話室。
そこでの会話だった、調子いいし、こんな地方に来るとは熱心というか推して量れない所があった。
何だか本気なのか、不真面目なのか判断に苦しむ言動は前回知り合った時のままだった。
「アナタやメイドさん達にはお話しして頂いたんだろうか?」
あの時は突然声をかけられ、その内うやむやになっていた。
歌謡祭でのメインアーティストとして、プログラムの大半をアナベルと、コリーナ霧島、ミーナ神楽で進めたいとの事だ。
女の子ならやっぱりどの世界でも、一度はこう言った華やかな世界に憧れるもの。
だが、アナベルが職権で勝手に返事をしていいものでもない。
(ここは一度、彼女達の気持ちも考えないと。)
アナベルの思いを察知してかどうか、は分からないが。
「こう考えてはどうです。」
彼は話を続けていた。
「セカイの親善大使と。」
「セカイの親善大使。」
オウム返しに言った。
「戦もようやく終わろうとしている、何とか休戦状態の現在。
産業、農業、工業、建設と復興は急務であることは確かです。
しかし、光が必要です、エンターテインメントが必要ではないでしょうか?」
プロデューサーはそう語った。
(そうだ、確かにもといた世界でも、パンデミックで世界中が混乱していた時でもエンターテイメントは一定の効果、落ち込んだ気持ちを明るくしていたような気がする。)
アナベルが考えをまとめていると。
それを見て取った彼は、
「ファッションもそう、憧れもそう、尊さもそう、
それは大袈裟に言えば、生きる力と言っても過言じゃない。
それはこの国の力そのものに直結するはずです。
アイドルグループを一度本気で考えて下さい。」
プロデューサーが話を切り上げようとして席を立とうとした時。
アナベルはいつか義母が言事を思い出した。
「私の歌に何か知っている事はありませんか?私の義母は古の歌とか言ってましたが。」
転生者の所は言わず、歌のことに携わっている彼なら何か知っているのでは、と疑問をぶつけてみた。
「アナベル様の歌そのものについては存じ上げません、ただ、何かしらの力が、人智を超えた善き力がありそうなのは体感で分かる程度です。
もうすぐ、全ての国ではありませんが、その国の歌手、アイドル、アーティストたちが一堂に会し国の復興、再興を願い歌謡祭を開催することに賛同取り付けている最中です。
是非我が国から出場するアナベル様のグループが一番の隠し玉、最終兵器です、その国の令嬢がアーティストと出るのですこれほどの話題性ありません。
ですので、その善き力を全世界に広げる絶好のいい機会だとも言えます。」
アナベルは帰りのスチームモービルの中で、車窓を眺めながら、プロヂューサーの言葉を反芻していた。
(善き力)
もう一度、そう思い返しながら。
それと、プロデューサーが何か引っかかるようなことを言っていたが、それが何だったのか、ついに思い出せず
王都への帰途についた。
いつも、拙作に目を通していただき、大変感謝いたしております。




