↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/27

第7ターン⑤

 翌日、舞踏会の準備で手が離せないと言って自身を着飾ることに余念がない義姉と、勘違いしている義母にほとほといい加減にしてほしいと思いながら、アナベルは国賓の兄弟の接待、と言ってもこの国の今の状況を案内するため、広い田園地帯で広域農業の持ち株化の手法や、王都に集中した経済の活性化のため、株式を導入し一般の民に財産を分配するための株式市場の運用、工業地帯の自然との共存方法、今準備中の歌謡祭の現場など、余すことなく紹介や案内をした。


 逆に包み隠さずさらけ出すことによって、他国に対する考え方、つまり、侵略ではなく、あくまで自国の繁栄にのみに特化した国家運用を示すことで、他国に対する敵対心が無い事をアピールする狙いがあった。


 当然、軍備は捨てることはせず、逆にある方が独立国として認められるとアナベルは考えていた。

 ひとしきり、案内が済み、宿舎である迎賓館に戻って来たのだが。

 そこで気になることがあった、確か迎賓館の宿泊室は三つ取っていたはず。

 アナベルは担当者に確認すると、兄弟のほかにもうひとり、居られるはずだと言うことだった。

 最初の御挨拶からいなかったので、てっきり兄弟だけかと思っていた。

 その事を兄弟に聞いてみると、思い出したように、奥から一人案内されて出てきた。


 長い黒髪に、銀の髪留め、神々しく輝くように見える青い瞳。

 その魅惑の完璧なプロポーションに羽織っているシルクだろうか、ドレスがより強調していた。


 顔を上げたその人の顔を見ると思わず声を上げそうになった。

 昨晩の、王墓で拳を交えたその女性が立っていたからだった。

 そして、彼等兄弟の母君と紹介され、再び驚くことになった。


 そう彼女はラプス王朝国、皇后サファイア・ゲオルク・ラプス。

 実質的にその国の元首である。

 夫のゴウシャ・ゲオルク・ラプスは先の大戦で戦死し未亡人としてその国を牽引してきている、補佐として、兄弟が支えていたこともあり、国としては安定していると聞く。


 若すぎる、それが第一印象だった。


 その晩、約束通り王墓裏門にてラプス王朝国、後継第一位と後継第二位の兄弟の母君であるサファイア皇后が玉砂利をゆっくり踏みしめながら夜の闇からやって来た。

「約束を、守っていただき感謝いたします。」

 皇后はゆっくり挨拶すると、満願成就の最後の儀式に移った。

 今まで貼っていたであろう、呪符がそれぞれ輝き出しやがて収束したひかりが天高く昇って行った。

 思っていた儀式より、あっさりとした印象だったが、いつまでも舞い上がった光の行末を望んでいる皇后にげんしゅくさが宿っていてこえがかけづらかったのが正直なとこだったであろう。

 スッと仰いでいる状態からアナベルたちに視線を戻し、

「それでは、お約束通り説明をさせて下さい」


 そう皇后は言った。


                       ☆


 アナベルの国、自治都市連合国の王の今は亡き妃は結ばれる直前まで、このラプス王朝国のサファイア王女と恋の鞘当て、というか、恋敵として片や拳神、片や軍神として、戦いの日々を繰り返していた。

 ある時は、妃の骨を砕き、ある時はサファイア王女の肉を切り裂き、周りの国々の戦乱の世とは別次元の戦いの様相を呈していたと言う。

 そこまで王に恋焦がれていたのは小さな国であっても、威厳があり、決して他国に媚びない雄々しい、先帝を幼少の頃から知っていた彼女達はその尊敬が愛情になり、命を賭して添い遂げようという炎のような恋愛に、お互いの女としての矜持を賭け王を奪い合っていた。


 慣例として、女性の戦いに異性は絶対的な不可侵を貫かねばならなかった。一切の口出しは万死に値すると言う不文律もあった。


 そんな、何戦目かの有る戦いのとき決着がついた。

 サファイア王女は倒れ膝を付いたのだった。

 敗れし者は潔く、身を引くことを誉とする。

 敗れたサファイア王女は別の男を夫として娶り皇后となり、それなりの自身の幸せを掴むことが出来た。


 が、人の感情はそう割り切れるものでは無かった。


 そうこうしているうちに、戦乱の世が本格化となり、自治都市連合国の妃が亡くなり後を追うように王が亡くなってしまった。

 残されたサファイア皇后は、恋の戦友でもある自治都市連合国の妃の冥福を祈らずにはおられなかった。

 青春の一場面を共に作った者同士それは友情にも似たものであった。

 そこで、バルハラという天国に亡き王と共に昇天してもらいたかった。

 ゆくゆくはラプス王朝国のサファイア皇后自身も行くことになるバルハラにいて欲しいと言う、願い、祈りにも似たものがそこにはあった。自身が天国に行ったときに誰もいない事は耐えられず。

 また恋の闘いの続きをしたかった。


                     ☆


 そこまで言うと、アナベルを見て、貴女やはりお母様とよく似てらっしゃる、でも貴女本当は・・・。

 少し言葉を濁したが

 貴女は王の忘れ形見、どうです?我が息子の嫁に。

 私を片膝つかせたのはあなたしかいません。

 その様な力のある女性こそ我が国の次期妃にふさわしい。

 どうです?

 そう言いながら戦いでない、間合いの詰め方でグイグイ来られるのは、拳を交える以上に難しい。

 アナベルは拳で交える方が簡単だと改めて思った。


目を通していただき、いつも誠にありがとうございます。感謝に堪えません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。