第7ターン③
「ッギャー、なんで、裸ですか?」
背中の広い筋肉の盛り上がりが汗で濡れて盛り上がっている背中が、まるで大陸が移動している様に見えた。
これは、見てはいけない物を見てしまったようで、思わず手で顔を覆い後ろを向いた、アナベルの心臓が飛び出るほどだった。
「いや、いついかなる時でもトレーニングは欠かしていないので。」
アナベルの叫び声を聞いてコリーナ霧島とミーナ神楽が飛び込んできたが。
状況を見て、その場に傅いた。
後継第一位アントン・ゲオルク・ラプス、は側にあったタオルを引き寄せ、
「それよりノックをせず入って来る方がいかがなものか、」
と、言いながら体を拭きながらそれを体に巻いた。
「あ、あ、ごめんなさい。」
心臓の高鳴りが落ち着かないせいもあり、その返事にアナベルは戸惑いの色を隠せないでいた。
「ははは、兄さん、ご婦人に兄さんの裸体は毒だよ。」
奥の方から、分厚い学術書を片手にそう言いながら、大人二人がかりで持たなければならない様な楯のようなそれを軽々と持ちながら、優し気な笑顔で、まるで女の人?と思う位のサラサラな長い髪に、そこいらの女性モデルに引けを取らない様な、端正な顔立ちの、でもその瞳の奥には鋭い何かが隠されている後継第二位のユルゲン・ゲオルク・ラプス、弟の令息が隣の部屋から入って来た。
「と、と、とにかく、我が国においでになったと言うので、ご挨拶をと思い。」
何とか、心臓の高鳴りを押さえつつアナベルは答えた。
「じゃあ昨日、お相手してくれた、ちょっとコミュニケーションが独特なご婦人方は?」
弟にそう尋ねられたので我が国の私と義母、義姉の関係を簡単に説明した。
「ああ、噂ではお伺いしていましたが、あなたがあの有名な国みるみる発展させ、しかも国民にあまり負担をかけず軍備も増強していると専らの噂、その影にはアナベル令嬢があると聞き及んでおります。」
弟は続けた。
「貴殿が、我々を接待してくれるものと思っていたのですが。」
部屋に改めて入って来た、あの筋肉モリモリが強烈なインパクトがあってあまり顔を落ち着いて見ることが出来なかったが、いつの間にか正装に着替えていた兄の方の、後継第一位アントン・ゲオルク・ラプスが、ツーブロックの長い髪を後に縛った少し尻尾のような後ろ髪がカワイイ、顎髭がワイルドな印象を醸し出して、アナベルに言った。
「あの、あの、ごめんなさい、今回はお姉さまにその権限があるので、」
アナベル。
「今回は、ですか、」
兄アントン。
「では、最終日の舞踏会には是非。」
「兄さん、僕も居てることをお忘れなく、こんなお美しい人をみすみす無仕合で不戦敗するつもりはありませんからね。」
そう、弟ユルゲンが言うと、片手で持っている分厚い楯のような学術書が音を立てて握り潰され二つに折れた。
アナベルは
兄弟の控室兼宿泊所を後にしながら、まだ胸の高鳴りを押さえきれないでいた。
「大丈夫ですか?」
心配そうに御庭番ミーナ神楽、コリーナ霧島が声をかけてくれた。
ジッと見ながら「やはりアナベル様あなたはもしかすると・・・。」
とそこまで言うと、あのヴァル君がやって来て、「やっと探しましたよ、あの御札のことが分かりそうですと、あの札について学術者が説明をしてくれるそうです、さあ、行きましょう。」
と黒い大きな瞳が澄んでキラキラしてそれを見て、なぜかまた、ドキドキしだして、どうしたのあたし、と、自分でも自分自身に何が起こっているのかさっぱりわからなかった。
さあ、とヴァル君はアナベルの手を握ると前を歩く。
(あれ、あれ、あれ、私?何んで彼に手を引かれてるの?)
とアナベルが困惑しながら、後を歩いて行く。
「あ、すみません、」と気が付いてパッと手を放した。
「あの、・・・。ラプス兄弟にお会いになったそうで。」
俯きながらヴァル君はアナベルに言った。
「ええ、それが何か?」
アナベルのその問いに、直接答える代わりに、ヴァルは学術者が待っている部屋にアナベルを通した。
アナベルは学術者に霊廟での出来事を手短に話すと、「そんなことがあったんですか。だから、我々学術師の呼び出しがあったんですね。でも、祟りだとか、呪いの類は気を付けて下さいね。」
そう言うと学術師は加えていった。
「呪いの類ではなさそうです、」学術師はそう言って、袋に入った御札を見せた、「でも、念が封入されているようだから、実際どんな効果だ出て来るかは分かりません、触らぬ神に何とかです。」
「念?」
アナベル。
「良い事が訪れるようにと祈るための物、お守りに近いもの、これは霊廟に張られた物と聞き及んでます、そこで考えられるのは、故人を守るため、悪霊に誑かされず、バルハラに導かれますように、との書式がここにあるようです。」
「バルハラ?」
アナベル。
「そうです、我々で言う天国に相当する所。」
続けて学術師。
「国や、民族でその呼び名が変わるが、一般的には天国と呼ばれる所、
そこで天国をバルハラと呼ぶ民族はラプス王朝しかいない。」
「え。」
アナベルの思考が固まった。
(どういうこと?)
何と何がどうくっつければいいのかさっぱり分からなくなった、隣国ラプス王朝国、父の霊廟の幽霊騒ぎ、御札、義母義姉、ラプス兄弟、ヴァル君の黒い瞳。
あ、最後は違うか。
それぐらいアナベルの頭の中は混乱していた。
続けて、目を通していただき誠にありがとうございます。




