第7ターン①
転生者とばれてしまい、そこから義母のアナベルの見る目が変わった。
かと言うと、そうでもなかった。相変わらず、義姉と一緒になって、アナベルをいかに蔑もうか虎視眈々と狙っている。
官吏や、行政官が忙しく右往左往している執務室の中、そう思いながらアナベルは、小さく溜息をついた。
相変わらず反乱を起こした大臣は行方知れずとなっていて、あの御庭番衆を頼んでも未だ確かな足取りが分からない状態だった。
その調査とは別に、国王霊廟に変な噂が上がっているという報告があった。
あの反乱騒動の後のため、墓荒らしの類を警戒して報告が上がって来たとのことだ。
それにしても。と、アナベルは騒がしい執務室で日記帳を広げていた。
あの反乱事件の時、ミーナと、コリーナに取りに行かせたものだった。
大臣側の手に渡らずにここに在ることが幸運だった、転生前に元のアナベルが集めていたものだ、びっしりとあらゆる人物の情報が書き記されていた。
この国に隠遁している、兵法者、ある者は数学者、経済学者、化学者、科学者、魔導士、錬金術師、学術者、医学者、武道家、風水師、陰陽師、社会学者、などありとあらゆるその界隈では第一人者と呼ばれている人物の住まい、家族構成、経歴から、趣味、人となりまで、詳しい情報が記載されていた。
もし、これらが反乱大臣の手に渡ってしまっていたらと思うと、粛清されてしまうことを想像してゾッとした。
多分、彼女、元アナベルは男を漁りにではなく、人材を漁りに各地を飛び回っていたのだろう、今と違って義母義姉に目を付けられ、目を盗みコソコソと行動しなければならなかった、故にその行動が逆に怪しまれてしまい誤解を生んでいたのだ。
そう思うと、元アナベルほど、この国を思っている人はいないのではないのだろうか。
そう思って、日記を閉じた。
入れ違いでヴァルがやって来て、もうすぐラプス王朝国の国賓がお越しになると、伝えに来た。
ヴァルは目を伏せがちに、そう言うとすぐ執務室の雑踏から抜け出そうと足早に出て行こうとした。
そのオドオドした彼にスッと立ち上がりアナベルは、近寄った。
ヴァルは急に近寄って来たアナベルに戸惑いを隠せなく、視線を泳がしていた。
彼は直視できないでいた。
顔を真っ赤にしたまま俯きながら、あの時手を掴んでしまいそして、強引に引っ張って連れまわしてしまって、代表補佐、いえ、王女様に大変失礼な事をしてしまった事に、と掻き消えるような声で子犬が叱られられた時の様に、恐縮して縮こまっていた。
そんなことで、恐縮しなくていいわ、逆にあれくらいの強引さも必要よと言って、ハッとしてアナベルは真っ赤になった。
自分は何を言っているのだろうと。
相変わらず周りの雑踏は、うるさかったが、二人には聞こえていないようだった。
その空間を壊すように。
節約、節約って質素倹約もいいんだけど?
今度の迎賓館パーティーに出席するドレス新調したいんだけど?
と、義姉が執務室に怒鳴り込んできた。
その後ろから義母も合わせたように、私もこの国の代表として、恥をかきたくありませんことよ。
と、被せてきた。
こんどはラプス王朝国、歴史のある国で、経済も発達している大国の後継第一位アントン・ゲオルク・ラプスとその弟後継第二位のユルゲン・ゲオルク・ラプス兄弟が国賓として来ていると言うからだろう。
噂では、兄アントンは武芸に優れた武人で闊達なスポーツマンタイプ。
弟ユルゲンは知的な学者肌のスリムな知的タイプ、文官だと言う。
父王は早くに亡くなり、母である皇后がいるが、ほぼこの二人が国を切り盛りしている、この戦国の世で、他国に比べ兄弟が仲良く一国を治めている珍しい国だ。
今回表敬訪問で来るのは、やはりこちらが小国で、急に発展しだしたから、体のいい敵情視察として来ているのだろう。
大体こんな小さな国放っておいてほしいのだが、そうもいかないようだ。
結局、義姉の無理が通った。
前回のターンで、私を陥れることに失敗して、暫く義母と義姉は大人しくしているだろうと、思っていたのだが。
どれだけ面の皮が厚いのか、今回もしゃしゃり出て、ご希望通り、特に義姉はここぞとばかり、体の線、胸を強調したドレスを身に纏い、フガフガと興奮冷めやらぬと言った感じだった。
それを見てアナベルはまた、小さく溜息をついた。
拙作に目を通してくださいまして、誠にありがとうございます。




