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第6ターン①

 ドカッと、相手の顎を打ち抜いて、膝から崩れたのを見ると、ステップを踏んで次の敵、次の敵と、撃破していく。

 アナベルの、プロ級のボクシングの拳が放たれていく。


 今度は左拳を自分の顎下に持っていき、ガードしながら右の肘を曲げだらりと降ろし、左右に振って、近づく敵をその垂らした膝から鞭打つ様に、右ジャブを目に見えない速さで繰り出し次々撃破していく。


 フリッカージャブ。


 それでも兵士が後から後から出て来る。


 アナベルの後ろには義母義姉が震えながら。身を寄せていた。

 二人を守りながら、敵を次々撃破していく。


 ミーナ神楽とコリーナ霧島が後方を守っていた。

 断罪官の煽る命令で、次から次へと兵士がやってくる。


 数刻前。


『自治都市連合国、代表補佐アナベル・ド・へーニング令嬢、度重なる不義によって、追放とする』


 断罪官がそう宣言した。


 しまった、どこかで、間違ったか。

 断罪シナリオに突入した?そうか、今6ターン目のはずだ。

 しまった、折り返しだから、想定しておくべきだった。

 そう思ったが、すでにシーンは進行していた。


 突然呼び出されて、気が付けば玉座の間。


 断罪シーンに突入してしまっている。


 亡き父がその権勢をふるっていた大広間でもある、存命の時は此処から、各出先に指令を直接出していた。

 今はその空の玉座の何段も下がったところにアナベルがいて、それを取り巻くように家臣団、行政官、武人、文官などおおよそこの国を運営している者たちがこぞって集まっていた。アナベルを取り巻くようにしているその輪の外れにはあの義母、義姉がほくそ笑みながら離れてユリアを見ていた。

 その周りには取り巻きも、同じ様に厭らしい笑みを浮かべながら、こちらを見ている。


 断罪官はなおも続けた。


『先代の大王が崩御なされてから、代表補佐アナベル・ド・へーニング令嬢の不実はなはだしく、申告により断罪を皆に問う。』

 チラと、義母と義姉は勝ち誇ったように、扇を開きこちらを見ている。

 どうして、一体どこで。

 頭を必死に回転させた。

 前回までの、順調なシナリオ運びなのに、いったいどうして?

 今まで順調とまではいかないが、とにかくこなすことはできていたはず

 義母、義姉の怒りゲージも気にしておくべきだった。

 強制的に、この場面はステージの構成上、必ず強制的に発現するターンかもしれない、ある意味分岐点で選択またはクリアによって破滅ルート、または溺愛ルートにの分岐点。

 選択を間違えば取り返しのつかないルートに突入するかもしれない。


 そう考えているうちに、玉座の間に引き出された私は家臣団や、貴族連中や議員連中の奇異な眼差しの中白い目で見られている。


 どこかで、何かし忘れているところがある、多分見落としているところ、どこだ、思い出せ、この今の私の乗り移る前は確かチュートリアルや、取説では悪徳、冷徹、奔放、浪費家と権力だけで世を渡っていたと言うどうしようもない令嬢として設定されている

 浪費、悪徳は十分気を付けてクリアしたし、冷徹は、何も誰も陥れた形跡もない。


 じゃあ。

 何なんだ、


 口上がまだ鳴り響いた。

『・・・男達を、貴族から、他の国の男子まで漁るいかがわしい所業の数々、不貞の調べはついておる。貞操を軽んじる事。改めてこの国から追放とするものである・・・』

 そういえばまだこの令嬢には、まだ断罪されるべきところがあったのかと、

 それは貞操観念の破綻。

 滔々と、私の断罪にかかる口上を、断罪主は巻物を広げのたまっている。


 この、口上が終わるまでに、何とかしなければ。

 考えろ、考えろ!


 所謂、奔放すぎて、男をとっかえひっかえ男漁りしている、と言った噂、

 確か取説にも彼女は冷酷で浪費家で奔放な女としてキャラ設定されていた事を思い出した。

 ゲームガイドブックにも載っていた。

 正面にはまだジッと私を見ている義母、義姉。

 この二人の暗躍も当然あったのだろうと、二人を見てそれは確信した。

 陥れられたのなら何とかしなければ、多分二人は度重なる自分たちの行動が裏目に出たり、アナベルがことのほか善戦している事を見て、早い目に手を打とうとしたに違いない。その証拠にさっきから、家臣や、家来、召使をことある毎に側に呼びつけ、耳打ちをしてその度懐から何やら手渡している。


 金貨の袋だ。


 ここまであからさまに買収をするなんて、逆にすがすがしい。

 多分、その袋から、義母や、義姉の或ること無い事に賛同する為の金をバラ撒けという事なんだろう。

 そんな汚い手はここまでくればどうしようもない、とにかくこの状況を何とかしなければ。何か思い出せ、思い出さなければ、終わってしまう。



 この、断罪は、わたしの、不貞を働いた事についてだ、浪費ぐせや、不良行為ではないようだ、

 断罪官はまだ、口上を宣っている。

(・・・そこで、かのアナベル令嬢は、夜な夜な、正体、身分が怪しい男のもとへ足繁く通い、逢瀬を楽しんだものである。しかも・・・)

 まだ続いている。


 チラッと義母義姉をみると、もう勝ち誇った様に、ニヤニヤ笑っている。

 いつにも増して嫌な薄ら笑いだ。

 多分、それなりの証拠があるのかもしれない、どこで突きつけて来るかだ。

 その前に、何かしらの手をうたなければ。

 なにか、ヒントのなるものは。


 確かセーブポイントに一か所どうしても鍵がかかっていて開かない棚があった。

 それにこの世界に攻略本と手帳を偶然、カバンに会社に置いてあったから、家に持って帰るため、たまたまもって帰っていた、この令嬢が今後するであろうことが載っていた。


 チュートリアル、セーブポイント、ガイドブック、どこだ、たしか、本棚が、不自然なほど本があった、沢山。

 このアナベルのイメージでは、浪費家や、着飾ったり、化粧品、宝石の類いがところ狭しとあるはず。

 不自然さは多分最初からあった。

 本棚いっぱいの本、着飾るには程遠いほどの服が少ないウォークインクローゼット、衣装ケース。

 ほとんど、最小限度の化粧品しか置いていない鏡台。

 アクセサリーと言うには、貧祖な宝石箱。

 これが噂の浪費家、荒淫、不良令嬢か。

 と。

 本棚。

 本。

 日記。

 そうだ、日記。


 断罪席に座らされているがまだ自由に行動できる、断罪の間ずっと立って聞いているわけではない。

 アナベルは御庭番を呼んだ、ステージが進んで自分の為に仕えるようになっていた。

 御庭番、これへ。


 はっ、ここに。

 メイド、ミーナ神楽、コリーナ霧島が影の様に来た。


 え、あなた達、御庭番だったの。

 アナベルが驚いた様子で言うと、


 ハイ、突然昨日から、御庭番頭からの命令で、アナベル様の手足となり、目耳に徹せよと賜わりました故、ご下命下さればどんなことでも命に代えて。

 二人は声を揃えて宣誓した。


 アナベルはある指令を出した。

 私の部屋にある本棚から、日記や、その類いの物があるはず。

 チュートリアルでは動かせなかったが、ステージが今進行中なら違うはず、そうならきっと動かせるはず。

 それをここにもってきてほしい、そこにはきっと不義でない事を証明するなにかが載っているはず。


 状況は、刻々と進んで行く、断罪内容が滔々と述べられている。


 やってくれるか?

 アナベル。


 御意。

 コリーナ、ミーナ。


 義母と、義姉はいよいよ薄笑いがひどくなって、勝ち誇ったような表情をこちらに向けていた。

 それを見ていたアナベルはハッと気づいた。

 いやまて、証拠がわからなければ、断罪なんて動けないはずなのに。動くと言う事は証拠を掴んでいる。


 アナベルは突然閃いた。

 イや違う!


 ブラフだ!私が動くことを見越して。

 証拠のありかが分からなかったから、私が動くことでその証拠を押さえようと言うのか。

 そうだ、証拠を押さえていればすぐにでも、断罪に移るはず。

 それをしないのは何故?

 手元に無いから。


 動くな。


 多分それが正解。

 そうアナベルは気が付いた。


 その時。

 急に扉を蹴破るように、この玉座の間にバラバラと武装した兵士が雪崩れ込んできた。


 何事!とアナベルは義母マリアとエリザベート義姉の方を見ると彼女達の周りにも兵士が取り囲んでいる。


 義母と義姉、二人は喚いていた。

 何なのあなた達!

 こんな事、頼んでないわよ!



 この兵士たちはいったい何?

 アナベルの周りを取り囲んだ兵士を警戒しながら、思った。


目を通していただき、誠にありがとうございます。

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