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第5ターン③


「国際問題になるぞ、」そう言いながら、大臣連中は走り回っていた。

「衛兵を片っ端から集めて町中を探せ、」と長官は怒鳴る。

 官僚たちは官吏を集めて「隈なく城内を探せ」と、狂ったように喚く。


 義母は、「目を離した隙に、いや、私の所為でなくってよ!そう、あの令嬢が勝手に居なくなったのよ!」と、誰も聞いていないロビーで、右往左往する役人に叫んでいる。

 義姉はただ顔を真っ青にして、ガクガクと震えているだけで、アナベルを見つけると、ツカツカ寄って来て、「あなたこんな大事な時にどこをほっつき歩いてるのよ!城内が大変な時に!」とあたりかまわず怒鳴り散らしあたかもアナベルがその原因を作ったかのように突き掛ってきた。


 そんな、義母や義姉を放っておいて、直ぐあるところに向かった。「ちょっとどこ行くのよ!」と後ろで遠ざかるアナベルに向かってまだ義姉、義母は喚いていた。

 が、放っておいて、あるところに向かっていた。


 御庭番(おにわばん)の詰所。


「御庭番衆(おにわばんしゅう)、何処(いずこ)?」と手を叩くと、

「ここに。」

 と影の様に、その姿を現した。


 御庭番。


 令嬢直属の諜報機関及び親衛隊であり、国家存亡の時に運用が認められている独立した組織であると、ゲームガイドブックにあった。

 それを使えるのは限られた回数で、クリア条件で回数制限は解放されるとあった。

 用が無い時は絶えずその姿を隠し、事が起こり主であるアナベルが呼びつけると寄り添う影の如くその姿を現す。

 秘密保持のため、その正体を主にも分からない様に、影のように顔を隠している。

「知っての通り国賓の妹君ターニャ・シュルツェ・ルードリッヒ御令嬢が行方不明となった、直ぐ探してきてください。」

 影に向かい、そう告げると。


「御意。」

 と、影は短く答えたと同時にその姿は消えた。


 御庭番のネットワークを使えば何てことはない、この国はもとより、他国の情報収集力はこのエクストラシナリオが始まってすぐに力を入れた一つだった。


 暫くすると、影が戻って来て、隠れているところを突き止めたので、メイドに案内させるとの事だった。

 入れ違いでやって来たのは、ミーナ神楽とコリーナ霧島だった。

 メイドたちも、総出で探索しているところへ、

 そこへ御庭番がやって来てアナベル様を案内するようにと言付かったという。


 御庭番の情報ではそこは郊外の保養所として、人気のある風光明媚な湖のほとりの宿屋だった。

 今もお城での騒ぎをよそに観光客で、ごった返していた。

 景気が良くなってきたので、こういった観光やレジャーにも活気が出てきている。

 観光客の間を潜り抜け、一件のホテルの前に立った。


 ある部屋の扉をノックし、中からメイドが応対してきた、アナベルの顔を見るなり、驚いた様子で部屋の奥の主の下に駆けて行った。

 

 暫くすると、驚いた様子もなくターニャが出てきて、部屋の奥に案内した。


 特に動揺する事も無く、当り前のようにアナベルに、席をすすめ、向かいに座り黙っていた。


 アナベルは、ミーナとコリーナに席を外すように目配せをし、人影が無くなると、「どうしたの?」とターニャにやさしく声をかけた。


 するとポツリ、ポツリと話し出した。


 本当は、表敬訪問に来たこの国は表向きの隠れ蓑で、本当は結婚が嫌で逃げてきたと言う。

 正確に言うと、彼を信用できない、もしかしたら浮気されているのではないかと。

 日々思い悩んでいると言う。


 その薬指には美しい指輪が光っていた。


 彼を愛している事は変わらない、折角手に入れた幸せ、結婚を心待ちにしている。

 それなのに、急に不安に襲われた。

 彼が、急によそよそしくなり、将来の事もうわの空で、生返事で、心ここに在らずと言った事。


 そして、決定的なのはある日、とても美しい綺麗な人をお城に呼んで、二人きりになっていたところを見てしまった。

 思わず、逃げてしまった。


 そう言うとポロポロ涙をこぼしていた。


 アナベルは元いた世界の事を思い出した。

 親友が結婚を間近に迎えた時、彼の浮気が発覚し、破談となった。その時の悲しみを知っているが故に怒りが込み上げてきた。


 その時だった、この部屋をノックする者がいた。

 ターニャのメイドが対応していたが、何やら騒がしく「ダメです・・・、お帰り下さい・・・、姫様は・・・お会いにはなりません」と、セリフがアナベルの耳に届いていた。


 すると、メイドを押しのけ、一人の青年が乱入してきた。

 アナベルは、ターニャをかばうように席を立ち、その青年と対峙した。

「ヨハネス様!」

 声を上げたのはターニャだった。

「どうしてここが!」

 ターニャは続けて言った。

「ぼくは、君を追いかけてきた、こんな置手紙なんて、誤解だ。」

 その、ヨハネスと呼ばれている青年は声を荒げていった。


 アナベルは自分の背中越しに、隠れているターニャに言った。

「もしかして、こいつが。」


「そうです、婚約者のヨハネス様です。」

 ターニャは自分の自身の手をギュッと握り締めていった。


 それを見ると、ザワッと逆立った。


目を通していただき、そして物語にお付き合い下さり、感謝申し上げます。

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