希望
この町に取り残されて二日経った。食糧は家にある分で何とかしていたがそろそろ限界だ。
その間、なにか連絡があったりするかもと思ったのだが、特になし。
そんな中での俺の楽しめることは、テレビ位しかなくなった。
一応まだ、この地域以外はアリがでかくなったりはしていないようだ。最近はこの町の惨状を報道したりしている。
だが直接乗り込んでくる記者はいない。いたとしてももう死んでいるだろう。
今日はスーパーとかで食糧調達をしようと思う。そのついでに、冷凍室に閉じ込めた大蛇の確認にきた。
ぐるぐるととぐろを巻いていたが、完全に凍っていた。そりゃ二日も放置してたら固まるよ。
動き出されてはたまらないのでバラバラに分解する。これで本当に大丈夫だろう。
さて、このスーパーになにか食糧が無いのか見に来たわけだが、残念ながら見つからない。
「二日前に大体持ってかれたか……」
早々に切り上げて次の場所へ向かう。距離的にはそんなに変わらないが、こっちにはいろいろある。
ガサッ
「!」
どうやら俺以外にも何かが居るようだ。
バットを構えて、棚に隠れながら移動する。すると生き物が目に留まった。バットを振り上げる。
「ま、待て待て待て!人!人だから!」
どうやら俺以外にも取り残された人が居たらしい。両手を上げて敵意が無いことを示している。
「ていうか、直人じゃん」
「え?あ、一誠じゃん」
そこにいたのは学校で同じクラスだった片浜直人だった。
「学校はアリに占拠されたんだろ?よく無事だったな」
「ああ。俺もダメだと思ったけど、逆にあの混乱を利用して逃げてきた」
直人は深刻そうな顔で言ったが、一つだけ俺は気になった。
「待て、じゃあ由奈はどうなったんだ?無事なのか?」
「……分からん。すまん」
「いや、いい。必死だったんだろうしな」
俺は鞄に日持ちしそうな食糧を詰め込み始める。あまり多すぎると持って帰るのが大変だからある程度にしておく。
「しかし、俺以外にも取り残されてる奴が要るなんてな。寝坊でもしたのか?」
直人は少し考えるような素振りを見せて「そんなとこだ」と答えた。
「そういや、なんで一誠は取り残されたんだ?時間には間に合ってたんだろ?」
「俺?なんか蛇の化け物に襲われてる人が居て、助けたからおいてけぼりを食らった」
菓子パンは日持ちしないんだよなぁ……でも消費期限じゃないしいっか。
「な、お前アレを倒したのか!?」
急に驚いたように声を上げた直人に少し驚いた。
「倒したってか……冷凍室に閉じ込めてそのまま凍死させただけだしな。倒したとは言わんかもな」
クラッカーとか良さそうだよな。日持ちするし。持っていこ。
「まさかアレを殺したなんて……どうりでほとんど生きてるわけだ……」
直人は一人でブツブツと独り言を言っている。相手にするのも面倒だな。
水とかも必要だな。あと一応消毒液とかその他持っていくか。
「直人、俺はある程度集めたしもう行くわ。じゃあな。気を付けて帰れよ」
「あ、待ってくれ話が、」
直人が話をしようとしたその時、入口の方から巨大化した蜘蛛が二匹入ってきた。
身長は俺の腰位はあるから70センチ位だろうか。
たくさんの毛が生えている足は、伸ばせば実際よりかなり大きく感じる。
アリ以上に不気味な複眼がこちらを見据える。
「蜘蛛とはまだ戦ったこと無いなぁ。直人、戦えるか?」
直人が肩をビクッと震わせる。
「無理無理無理!なんで一誠は平気なんだよ!」
「うーん、あれだ。まだマシだなって思ってな」
荷物を手放してバットを構える。
「直人、悪いが戦ってくれ。二対一はさすがに厳しいからな」
「ま、マジで?ほんとに言ってるのか?」
「生き残りたいなら戦え。ここで死にたかないだっろ!]
言い終えた瞬間手にした缶ジュースを投げつける。それを戦いの合図に、蜘蛛は缶を避けてこっちに迫る。
一匹の蜘蛛にバットで殴りかかる。蜘蛛は素早く回避して逆に押さえつけようと前足で掴もうと動く。
掴もうとしてきた足をバットで防いで一旦距離を離そうと下がる。
だが蜘蛛は距離を詰めてなお攻撃してくる。目で追える限りで足を避けていく。
右の足を大きく振り上げてわずかにできた隙を突いて、右前足をバットで根本からへし折った。
蜘蛛が近くにきた俺を押さえ込もうと残った足で囲むように動かす。
「お、らぁ!」
降り下ろしていたバットを、無理矢理方向を変えて打ち上げる。
蜘蛛は後ろに飛ばされて、こちらを見つめていたが、入り口から逃げていった。
「一誠、助けてぇ!!」
直人が組伏せられて今にも食われそうになっている。
「はなせぇ!」
バットで横から殴打して直人から引き離す。倒れて足をバタつかせてまだ立てていないところに、渾身の力でバットを降り下ろした。
蜘蛛の胴体に命中して少し足を動かしていたが、すぐに動かなくなった。
「大丈夫だったか?直人」
「なんとか死なずに済んだのか……」
直人に手を貸して立ち上がらせる。
「そういや、なんか話があるとか言って無かったか?」
蜘蛛の襲撃で忘れそうになっていたが、直人がなにかしら言っていたような気がする。
「ああ。実はな、明日ここから脱出出来るかもしれないんだ」




