機転
明日ここから抜け出せるかもしれない。と、直人は言った。
明日の午後五時ジャスト。小学校近くの公民館で僅かに逃げ遅れた人を助ける人達が来るらしい。
だが、そんなニュースは何処にもない。そもそもネットでは、生存者ゼロとか言われてる始末だ。なのに助けが来ると言う。
まあ、俺が生きてるからゼロじゃないしね。
直人曰く、たまたま非常連絡が繋がったとの事。
昨日の話を聞いた後でも、もしかしたら今日行った所で無駄足になるかもしれない。
だがこの町に居続けてもいつかは食糧が無くなって死ぬだろう。それならば、僅かな望みを頼ってみた方がいいかもしれない。
「行ってみるか」
デマならデマでいいやと準備をしようと布団から起き上がると、外から何か音がする。
「なんだ?まだ誰かいたのかな?」
窓から外を見てみると、武装をした人達が多数のアリと戦っていた。
「まさかあれが救助隊なのか?銃とか持ってるし……もしかして」
時間には全然早いが、安全確保のために来ていたのかもしれない。俺はバットを持って降りていった。
戦っている現場に行ってみるとどうやら苦戦しているようだ。既に何人も倒れている。
「あれは!?民間人!?」
武装した隊員の一人がこちらに気付いた。無線でなにか喋っているようだが聞こえない。
それは構わないが、このままでは全滅してしまいそうだ。俺が加勢してもあまり役には立たないだろう。だったら……
一度その場を離れて、近くの家に入った。その家の中で灯油を探してみると、見つかった。
ついでにマッチも仏壇の下から見つかった。
その二つを持って、外に出て灯油をばらまく。
撒き終えたらこっちに接近してきたアリを二匹バットで叩き潰す。
「動ける人はこっちに来てくれ!」
倒れている隊員以外がこっちに来たのを確認してマッチに火を点けて灯油に落とす。
炎が上がり、アリが来ないのを確認して、走り出した。
取り合えず近場の集会場に案内する。鍵は閉まっていたが、隊員の一人が鍵を開けた。
「危ない所を助けていただいて感謝する。私は安藤安威。このリーダーをしている」
ここのまとめ役であろう、女性が声をかけてきた。
大人の女性で、美人の部類なのだろうがその目には鋭い光が宿っていて、かなりの場数を踏んでいそうだった。
「いえ、こちらこそ。あの、皆さんは自衛隊かなにかで?」
隊員の顔を見ると、年齢に結構バラつきがあるような気がする。
熟練を思わせる年齢っぽい居れば、逆に俺より若いんじゃないかと思うような人もいる。
「自衛隊とは違うんだが……日本の警察系の組織の一つだという認識で間違いない」
どうやらマジで国から部隊が投入されたらしい。これは本当に助けが来るのが本当だったようだ。
「ということは、皆さんが俺達を町から脱出させてくるる人ですね?」
「?どういうことだろうか?」
「え?今日ですよね?逃げ遅れた人を公民館に集めて脱出させてくれるのって」
「いや、我々は、」
「いやいや、あってるあってる。それうちの事だわ」
安藤さんの言葉を遮るように、軽そうな隊員の一人が喋りかけてきた。
「俺らの目的はこの町の調査と、生存者を連れて帰ることでしょ?しっかりしてよリーダー」
「は?何を言って……」
「やっぱそうですよね!えっと、」
「佐端蓮蓮でいいよ」
「じゃあ蓮さん」
さん付けで呼ぶと、何故か嫌そうに手を振る。
「さんはいらねぇよ。えっと、そっちは?」
「一誠です。坂井一誠」
「オッケ、一誠な。一誠、俺らここの事あんま知らねぇんだ。知ってること教えてくれると嬉しいんだけど」
「もちろん良いですよ。まず何からですか?」
その後俺が体験したこと、気付いたこと聞かれたことを話した。
隊員の皆はこんな話を真剣に聞いてくれた。まあ実際あんなデカイアリを見たら信じるしかないと思うが。
「なるほどな。あんがとな。参考になったわ」
「それは良かったです」
「んー、話聞いてて思ったんだけど一誠ってつええの?その蛇を倒したりとか蜘蛛倒したりとか。俺らはアリの時点で下手すりゃ全滅ものだったし。
「まさか、俺はあくまで一対一だからなんとかなってるだけですよ。さっきみたいにたくさんいたらどうにもなりません」
「そえかねぇ……あのアリンコの頭ぶち割るなんて大したモンだと思うけどな」
「全然ですよ。普通です」
「まあ取り合えず」
蓮が立ち上がって隊員を見渡す。
「一誠の話を元に調査といこうぜ。そんで、時間になったら公民館に行ってみる。それでいいか?リーダー」
「それでいい。では各員、そろそろいくぞ。ああそれと、」
安藤さんがこちらを見る。
「一誠。お前には私たちの道案内を頼む」




