疑惑
バケモノに支配されてしまったこの町ではあまり出歩かない方がいいのだが……なるべく把握したいと聞かないので、少ない人数だけで行動することにした。
……本当ならこの道は学校に行く道だったのに。今は隠れながら移動しなきゃならないなんて……
だがもし国が動いたらアリどもはすぐに駆逐されるだろう。俺みたいな普通の人間でも倒せるようだし。
ある程度見回って時間が近づいて来ると、一旦合流して公民館へ移動した。
「あれ?皆さんは入らないんですか?」
公民館前に到着して一緒に入ってくるのかと思ったが、全員入ろうとしない。
「悪いな、一誠先に行ってくれ。他にも人が来るかも知れないから少し待っておくわ」
「あ、分かりました。待ってます」
蓮さん達は後で入るようだ。俺はそこまで気にせず公民館に入って広間に移動する。
そこでは、思ったよりも人が沢山いた。
ただ、老人が見当たらなかった。恐らく、ほとんどはアリに襲われたのだろう。
広間の奥のステージ近くに直人の姿を見つけたので手を振ると向こうも気付いたようだ。手を振り返してきた。
ステージの上に一人の男性が立った。近くには黒いスーツとサングラスを着けたいかにもな人が何人か立っている。
「待ちに待ったこの時が来た。ようやく我々は、悲願を達成するだけの力を手に入れた」
スクリーンに巨大アリの映像がながれる。
「今はまだ実験の多い物だが、それでも充分すぎるほどの戦果を上げられるだろう」
何の話をしてるんだろう。さっきからずっと語っているが、全然分からん。
そんなことより早くこの町から脱出したいんだが。
というか暇すぎる。マジやることねぇ。
しばらく適当に聞き流していると、ようやく終わったようだ。スクリーンの映像を切った。
「戦え、同士よ!!この国に、変革をもたらすのは我々だ!!」
回りから耳がおかしくなりそうなほどの歓声を感じる。
よくわからんが、巨大生物に対抗していくと言う事だろう。多分。
歓声が室内に轟いている中、突然背後の扉が勢いよく開いて、蓮さん達が入ってきた。
「片浜井方だな。貴様をテロ容疑から現行犯の方で逮捕する」
安藤さんが銃を構えてステージ上の男性を睨む。
「ほお、よくここまで生きて来られたものだな」
ステージ横の黒服が懐に手を入れようと動かした腕を蓮さんが撃ち抜く。
それを見て、本気で今何が起こっているのか分からなくなった。
安藤さん達は避難民を助けに来たんじゃ無かったのかどうなのか。
「余計な抵抗をするな。我々には、発砲の許可が出ている」
「ふん、それで?私を逮捕すると?」
「そうだ、抵抗さえしなければ腕の一本で許してやるよ」
「やれやれ……直人」
「終わってる」
どこからともなく地響きが聴こえてくる。これは、何かの足音!?
他の人や安藤さん達も揺れに気付いたようだ。辺りを警戒するように見回す。
公民館の正面玄関が轟音とともに破壊され巨大生物が大量に入り込んでくる。
一瞬で喧騒に包まれ、辺りは地獄と化した。




