学校から脱出
今更だけどバットだけで化け物とタイマン張ろうとする主人公何者だよw
校門にアリの姿を確認できなかったので、警戒はしつつ学校から抜け出した。
「やけに簡単に出れたな……まだアリは居るって聞いてたのに……」
道路には普通に車が通っていて、近くのコンビニも営業している。
俺と加奈は、家の方に歩き始める。
「全く平和だな……学校はあんな事になってるのに……」
「……仕方ない。私も……さっきまであんなことに……なってるなんて知らなかった」
「つーか、加奈はよく平気そうだよな。普通花瓶をぶつけようなんて思わないぞ。始めてなら尚更怖いだろ」
「平気じゃないけど……一誠君が大変な事になってたし……助けたかったから……」
目を合わせないように伏せる加奈。
今気付いたが加奈の手が震えている。どうやら表に出てなかっただけで、やはり怖かったみたいだ。
「その時はありがとうな。だけど、もうあんな危ないことは止めてくれよ?」
「うん……気を付ける」
「よしよし。俺はそんな加奈が好きだぜ」
「……テンション下がる」
「ひでぇ……」
返され方は少し傷つくわ。加奈の手の震えが止まっている。緊張は解せたようだ。
「ま、震えが止まったようで良かった。緊張しっぱなしだったら、疲れるからな」
「私からしたら……一誠君こそ平気そう……もう少しで殺されそうだったのに……」
怖いに決まってる。学校で見た光景は、全部夢だったと思いたいぐらいだ。
「俺はいいんだ。なんか慣れたわ」
「……あっ」
加奈が何かに気付いたのか後ろを見て声を上げる。
「どうした?」
「アリが来たよ……」
「マジで!?」
振り返ると、学校の方から一匹のアリが追いかけてきていた。
「逃げるぞ!早く走れ!!」
アリは真っ直ぐこちらを追ってくる。その速度が速い。
このまま走れば追い付かれてしまう……
「きゃ……」
加奈が派手に躓いた。その間にアリがすぐ目の前まで走る。
加奈に噛みつこうとしたアリをバットで横から殴り飛ばす。
「おぉぉぉ!!」
体勢を整えて反撃される前にバットを降り下ろして頭部を砕く。
躓いて倒れている加奈の状態をみる。
膝を少し擦りむいているだけだ。血が少し出ているが大丈夫だろう。
「立てるか?」
「うん……つっ……」
痛そうにしながらもゆっくり加奈は立ち上がる。
「悪いな、ドラッグストアまでいけるか?肩貸すか?」
「心配し過ぎ……大丈夫。これ以上迷惑掛けないから」
「迷惑とかいいからやっぱ無理ならすぐに言えよ?すぐ言えよ?加奈は顔に出ないから分かりにくいからほんとに言ってよ?」
「本当に心配し過ぎだから……行こう」
それだけ言って一人で歩いていった。
さっき頭を砕いたアリを見ると、さっきから動いていない。多分死んだだろう。
ちなみに学校から家に帰るまで大体一時間程だ。で、近くのドラッグストアまでは歩くなら10分程度。時間はかからないのだが……
「……」
加奈の脚の傷口がなんか痛々しい。見てるこっちが痛みを感じそうだ。
「……もういい」
不意に呟いた俺に、加奈が振り返る。
「……どうしたの?」
「見てて気分よくない。やっぱ支えるわ」
「……いいって。大丈夫よ」
「支えるのが嫌なら抱えるわ。どっちが嫌?」
「……どっちも嫌」
「じゃあ抱える。もう歩かなくてもいいから」
素早く手を腰に右手を回して左手で量膝を持ち上げる。
特に抵抗をしなかったが、不満を漏らした。
「はぁ……どうせならこんな時じゃないほうが良かったな……」
「俺は心配してんだぞ!?仕方ないだろ!見てられなかったんだから」
「だから……こんな時じゃないほうが良いって言ってるのに……」
「それより走るぞ。揺れるけど我慢してくれ」
「血つくから、やめた方が……」
「加奈の血だから平気だわ」
「……」
「無言やめてくださいせめてやっぱ降りるくらい言ってくださいボケを放置しないでくださいほんと頼みます」
加奈を抱き抱えてドラッグストアまで歩こうと一歩踏み出した時、背後のアリが動き始めた。
完全に死んではいなかったようだ。カチカチと音をたてながら襲いかかる。
「加奈が居るし逃げるか」
加奈を抱えている分走る速度も遅くなる。だが殴ったからか、アリも速度が落ちている。
とりあえずドラッグストア前まで行ったら加奈を下ろしてアリと戦おう。
俺が戦ってる間に加奈には手当てしてもらってそのまま逃げてもらう。
ドラッグストアが見えてきた。あともう少しだ。
「加奈!もうすぐでドラッグストアだ!そこでいろいろ買ってこい」
声をかけると、なんで?と不思議そうな顔をした。
「連れてってくれるんじゃないの?」
「後ろからアリが来てるんだよ!俺が引き付けて置くから、傷の手当てをしてこい!」
加奈は後ろの方を見ると学校から持ってきた硬球ボールを手に持った。
「なにしてんだ?」
「振り向いて。ここからじゃ投げれない」
加奈はどうやらボールを投げつけて足止めをするつもりのようだ。効果はないと思うのだが……
「いやいやいや、ボール投げたくらいじゃどうにもならんだろ」
「……大丈夫。ちゃんと額に当てるから」
「そういう問題じゃねえ」
「大丈夫だから、信じて」
無感情というかなんというか、そんな無表情で言われても全く信用できない。
「マジでやるの?」
「……うん」
「分かった……絶対当てろよ」
全速力で走っていた体を、素早く半回転する。
「当てろ!」
「……問題ない」
まあ、せいぜい当たればいいなーぐらいだった。加奈の体勢も悪いし。期待なんてなかった。
加奈から放たれた硬球ボールは、恐ろしい程の速度で移動し、割れていたアリの額をぶち破り、腹を貫通していった。




