対抗
このアリとかの体重てどれくらいなんだろうてんだろうな結構重たそうだよね。
何とかアリを仕留めて生き延びる事が出来た。
足下には原型を留めていないほど殴り付けたアリの頭部が机の山の下から覗く。
「ひとまずは、教室に戻って本当に誰も居ないのか確認しに行こう」
アリは倒したし大丈夫だろう。だが念には念を。金属パイプが見つかったので持っていくことにした。
細くて振り回しやすいがすぐに曲がってしまいそうだ。とても頼りない。
「無いよりはマシか」
階段から降りて、二階にある自分達の教室に歩いていった。
教室に行くまで特にアリに遭遇することもなく教室前まで到着した。
教室の扉を開けようとしたが、やはりカギがかかっている。
「誰か居ないのか?俺だ、一誠だ!」
「一誠!?無事だったの!?」
教室の中から由奈の声が聴こえた。どうやら由奈は無事だったようだ。
「この教室に一誠だけ居なかったから心配したんだよ!?」
「俺は大丈夫だ!それより、カギを開けてくれ」
「机でバリケード作ってるから、上の窓から入ってきて」
「分かった」
「良かったぁ……一誠が無事で……本当に良かった」
声が若干震えてる。どうやら泣いているようだ。
「心配ありがとな。それより、何が起きてるんだ?あのデカイアリはなんなんだ?」
「分かんない……昼休みが終わる少し前だったかな……いきなり出てきて何人も……」
「そうか……でも俺倒したし、もうバリケードする意味無いんだよな」
「え!?倒したの!?」
教室の中からも驚く気配が伝わってくる。ここで、ガチャガチャやっていた上窓のカギが開いた。
「ホントに!?ホントうに倒したの!?」
「おお。屋上階段で逃げ道無かったけど、頭潰して倒したよ」
「す、すごいね。あんなのを全部倒したなんて」
全部?由奈がよく分からないことを言っている。
下の窓枠に足を載せて上がろうと手に力を込める。
「全部って?なに言ってんだ、あんなのが何匹も居るって?冗談だろ?」
「一誠、入ってきたのは一匹じゃないよ、四匹だよ!!」
どうやら一匹だけでは無かったようだ。教室の中を見ると由奈がこっちを見て何かを伝えようとしている。
「一誠!!右!!」
驚いて右側を見ると音もなくアリが迫っていた。こんな至近距離になって気付かないなんて……
アリが顎で俺を窓から叩き落とす。受け身は取れず背中が痛いがすぐに立ち上がる。
アリも着地してこちらを見据える。さっきの個体よりは小型だが、恐ろしいのは変わらない。
頼りにならなそうな金属パイプを構える。これでなんとかなるか分からないがやるしかない。
アリが高速で移動してきて腰部分を咬み千切ろうと顎を持ってくる。
俺は金属パイプを打ち上げるように振り上げてアリを打ち返す。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
少し吹っ飛ばしてアリが態勢崩した。金属パイプを振り上げて渾身の力で叩きつける。
「ってぇ……」
金属パイプが硬さで負けた。先端部分が変形する。
殴った衝撃が手に伝わり、痺れるような痛みが走って金属パイプを落としそうになる。
「かってぇな……こんなの何回も殴ったら手がおかしくなるっての」
先程の反撃で警戒したのか、様子を伺っているようだ。お互いに、ジリジリと少しずつ近づく。
先にこっちが動く。金属パイプを降り下ろして殴るが、アリが顎を持ち上げ受ける。
パイプを伝って顎を突きだす。
受けられた金属パイプを力ずくで首元を狙って振り抜く。攻撃はずらせたが、右腕に顎が当たって制服が破れる。
破れた所を確認すると、血が出ていた。勢いは無いので、そんなに深くは無いだろう。
速く決めないとこっちがやられそうだ。だが、対してダメージが無いような気がする。
「どうすれば……」
アリが顎をカチカチと鳴らす。なんだか、攻撃の合図のような気がした。
アリは廊下の壁を上がって俺の真上まで歩いてきて、いきなり飛び掛かってきた。
避けられず押し倒される。カチカチ鳴らした顎が首元を狙う。
金属パイプで顎を防ぐとあっさり両断された。再び噛み付こうとする頭を、左手のパイプで抑える。
右手のパイプは、アリの目を殴っているが、効果があるか分からない。
左手の力が抜けていく。顎が近づく。恐らく次で殺される。もう、ダメかも知れない――
ガシャン!!と何かが砕ける音がして、アリが吹き飛ぶ同時に白色の破片に水、花が顔にかかる。
何が何だか分からないが助かったみたいだ。アリの目に若干ひびが入ってる。
俺は切断されて鋭利になっている方をその複眼に突き刺した。
アリが苦しそうにのたうち回る。だがもう一本。暴れまわるアリの腹部に金属パイプを突き刺して持ち上げる。
「窓を開けろ!!」
先程花瓶を投げつけた人は素直に開けてくれた。
無理矢理持ち上げていたアリを窓から投げ捨てる。
落下している時は手足をバタつかせていたが、落下してパイプが深々と突き刺さると、動かなくなった。
「死ぬかと思った……」
何とか命拾いをした、もし俺を助けてくれた人がいなければ本当に死んでいただろう。
お礼を言おうとその人の方を向くと、それは見知った顔だった。




