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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第一章 運命の始まり

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6. 運命への備え

「お嬢様、大丈夫ですか」

「大丈夫よ。ありがとう、アニー」


 どうやら、執務室に行ったことはすぐに伝わったらしい。

 駆けつけてきたアニーに覗き込まれ、つい苦笑する。

 表情を見る限り、まだ具合が悪いと思われているようだ。


 こうなれば、大人しく寝ているふりをするしかない。


 ――それにしても。


 お父様に確認したことで、現実と物語の違いを探すどころか、むしろ細部まで一致していることがはっきりしてしまった。

 となれば、次に考えるべきはひとつ。


(これから、どうしたらいいのかしら)


 物語の中の悪役令嬢は、最初から高慢で意地悪だったわけではない。

 むしろ、婚約を誇りに思い、立派な王太子妃になろうと努力していた。


 しかし、王太子が格下の少女に心を奪われ、次第に冷たくなっていく姿を目の当たりにする。

 無視され、疎まれ、陰で嘲笑され――それでも婚約者であろうとした結果、歪んでいったのだろう。

 愛情が憎しみに変わる過程は、読んでいて痛々しいほどだった。


 けれど、それはいじめをしていい理由にはならない。


(なぜ、そこまでしたの……?)


 今の私は、婚約にそこまで執着していない。

 公爵家に生まれた以上、王太子妃にならなくても十分やっていける。


 それに、物語の中の王太子は、婚約者に対して誠実とは言い難かった。

 そんな相手を愛せと言われても、無理な話だ。


 もちろん、現実の王太子が物語どおりとは限らない。

 だが、顔が整っていて優しそうに見えても、人として信頼できるかは別問題。

 イケメンは遠くから眺めて、目の保養にするくらいが丁度いい。


(まずは“婚約しない”ところから始めればいいわね)


 最初は酷似した運命に怯えたけれど、冷静に考えれば破滅は決まった未来ではない。

 選択次第で変えられる。


 ただし、油断は禁物。


 青い鳥の忠告を思い出す。

 “誰を信じるかで、運命は変わる”。


 信じる相手を間違えれば、真実さえねじ曲げられる。

 つまり、これからは人を見る目を養わなければならない。


 優しさの裏に何があるのか。

 笑顔の奥に、どんな思惑が潜んでいるのか。

 誰を信じ、誰から距離を取るべきか。


 それを見極めることこそが、破滅を回避する鍵になる――。



 今後の方針が定まって安心したのか、いつの間にか眠っていた。

 ふと目を覚ますと、階下が妙に騒がしい。


 誰かが訪ねてきたようだ。

 胸の奥に、嫌な予感が走る。


 ベッドを降りかけた、その瞬間。


 廊下を駆ける足音とともに、扉が激しくノックされた。


 ――まさか。


 その音で、予感が的中したことを悟った。

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