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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第三章 学園一年生

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52. 年末を迎える準備

「年末のパーティーは一緒に参加してもらうことになるけど、問題ないよね?」

「はい。もちろん、そのつもりでした」

「そっか、よかった」


 今日は殿下に招かれ、王宮の温室でお茶を楽しんでいた。

 花の香りに包まれながらいただく紅茶は、自然と心を和ませてくれる。


「そこで提案なんだけど、パーティーの衣装を選んで欲しいと思っているんだ。来週、時間は取れる?」

「ええ。それは楽しそうですね」

「じゃあ、決まりだね」


 ふっと、会話が途切れる。

 殿下は一瞬だけ視線を落とし、わずかに間を置いてから口を開いた。


「この前の魔導大会、見事だったよ。いいチームプレーだった」

「ありがとうございます。シリルも、準備お疲れ様でした」

「ありがとう。無事に終わって、本当によかった」


 そう言いながら、殿下の視線がわずかに逸れる。


「……何かありましたか?」

「いや。ただ――戦闘で、マクシムと同じチームだったよね」

「はい。まさか先輩が魔導士だったとは思いませんでした。ご存じでしたなら、教えてくださってもよかったのに」

「……知っていると思っていたよ。準備担当も一緒だったし」

「先輩、何もおっしゃいませんでしたわ」

「……ふぅん」


 一瞬の沈黙。


「マクシムはね、相手の婚約者の有無に関係なく、人との距離が近い。

 アリーヌも、余計な噂を立てられないよう、気をつけてほしい」


 思わず、首をかしげそうになる。


「一緒に行動する中で、真面目で信頼できる方だと思いましたけれど……」

「それは分かっている。でも、周囲はそう見ないこともあるから。接触するときは注意して」

「……わかりました」


 理屈としては理解できる。

 けれど、二人きりになったわけでもなく、特別な振る舞いをした覚えもない。


(……ずいぶん、念を押されるのね)


 胸の奥が、わずかにざわつく。

 ――まさか、とは思うけれど。


「わかってくれたならいい。じゃあ、来週。迎えに行くね」

「はい。よろしくお願いします」



 王宮御用達の仕立て屋の前で、馬車が静かに止まった。


「いらっしゃいませ」

「ああ、次のパーティーの服を。今日は婚約者も一緒なんだ」

「あらあら、それはそれは。とてもお美しいお嬢様ですわ。どうぞ、ごゆっくり」


 殿下に促され、並んでドレスを見ていく。


(いつも贈られるのは青系……今日は、違うものにしようかしら)


 いくつか手に取って見比べていると、殿下がぽつりと尋ねた。


「……青いドレスは選ばないの?」

「青がよろしいんですの?」

「そういうわけじゃないけど……少し、寂しいなと思って」


 あまりにも素直な声音に、思わず微笑みがこぼれた。


「いつもは贈っていただくから、シリルの色を身につけておりますけど」

「うん」

「今日は、“一緒に選んだ”ということが大事だと思いますの」

「……そっか」


 殿下の頬が、わずかに緩む。


「それに、いただいたネックレスは身につけていきますわ」

「うん。俺も、あのカフスボタンを使うよ」

「ふふ」


 二人で意見を出し合い、最終的に選んだのは、淡いラベンダーを基調としたドレスだった。

 光を受けてほのかに色味を変え、水色の装飾品とも自然に調和する。


「……うん、それなら」


 殿下は満足そうに頷いた。


 二人でお店を後にする。


 面倒だと思っていたはずの年末のパーティーが、少しだけ楽しみに変わっていた。

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