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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第三章 学園一年生

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51. 魔導大会の一日

「我々は、本魔導大会において――」


 闘技場に、マクシムのよく通る声が響き渡る。


「学園の名に恥じぬ節度をもって魔導を行使し、誇示ではなく、学び、競い、高め合うために戦うことを誓います。

 また、いかなる時も人命を最優先とし、魔導の危険性と責任を忘れぬことを、ここに誓います」 


 その宣誓を合図に、魔導大会は正式に幕を開けた。


「生徒会、配置につけ!」

「次の担当、準備急いで!」


 一気に慌ただしくなり、生徒会員は各所へ散っていく。

 私も、早足で準備に向かった。



「アリーヌ様、出番ですよー! どこですかー!」

「――今、行きます!」


 気づけば、二年生、三年生の演目は終わっていて、私たちの番が迫っていた。


 魔導競技場の入り口へ急ぐと、ナタリーが腕を組んで待っている。


「やっと来たわね。ほら、早くくじを引いて」

「ありがとう!」


 紙を開くと、そこには大きく『B』の文字。


「Bチームはあっちよ」

「助かったわ」


 そのとき、ひょいっと後ろから顔を覗かせる人物がいた。


「あー、俺はAだった。別チームだな、残念」

「……お互い、頑張りましょうね」


 ラファエルとは違うチーム。

 小さく息を整え、Bチームの集合場所へ向かう。


「皆さん、よろしくお願いいたします」

「アリーヌ嬢もBか。これは心強いな」


(マクシム先輩……?)


 魔導士だったとは知らなかった。

 少し、緊張が解ける。


 そこへ、ナタリーが来て2枚のカードを差し出した。


「魔導擬装体の種類を決めるカードよ」

「了解。ありがとう」


 マクシムが引いたカードには、一羽の鷹が描かれていた。


「……鷹か」

「高度を取られると厄介ですね」

「誰かを狙って降りてきた瞬間を狙おう」

「了解です」

「声を掛け合っていこう」

「「はい!」」


 やがて、Aチームが大型蠍の魔導擬装体を撃破し、拍手と歓声の中で交代となる。


 ――次の瞬間。


 目の前で、巨大な鷹型の魔導擬装体が羽ばたいた。


 一斉に魔法が放たれる。

 私も雷の魔力を強く練り上げ、狙いを定めた。


 ――直撃。


「……!」


 怒りに満ちた鷹の視線が、こちらを捉える。

 一直線に、私へ向かって突進してきた。


 ぎりぎりまで引きつける。

 炎が吐き出され、距離が一気に詰まった、その瞬間――


 轟音。


 マクシムの雷が、鷹の腹部を正確に貫いた。


「っ――!」


 巨体が悲鳴を上げ、地面へと叩き落とされる。


「おい。無茶するなよ」

「信じておりましたので」

「……そういうのは、事前に言ってくれ。でも――よくやった」


 ぽん、と。


 頭の上に置かれた手の温度に、思わず力が抜けた。

 勝利の歓声に包まれて、自然と笑みがこぼれる。


 そのときだった。

 ふと、視線を感じて顔を上げる。


 競技場の入り口。

 そこに立つ殿下と、目が合った。


 距離があるせいで、表情はよく見えない。

 けれど――その瞳だけが、妙に鋭く、こちらを捉えていた。


 そして、このときの私はまだ気づいていなかった。

 その視線とは別に、もう一つ。

 私を静かに観察する目があったことを。

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