51. 魔導大会の一日
「我々は、本魔導大会において――」
闘技場に、マクシムのよく通る声が響き渡る。
「学園の名に恥じぬ節度をもって魔導を行使し、誇示ではなく、学び、競い、高め合うために戦うことを誓います。
また、いかなる時も人命を最優先とし、魔導の危険性と責任を忘れぬことを、ここに誓います」
その宣誓を合図に、魔導大会は正式に幕を開けた。
「生徒会、配置につけ!」
「次の担当、準備急いで!」
一気に慌ただしくなり、生徒会員は各所へ散っていく。
私も、早足で準備に向かった。
◇
「アリーヌ様、出番ですよー! どこですかー!」
「――今、行きます!」
気づけば、二年生、三年生の演目は終わっていて、私たちの番が迫っていた。
魔導競技場の入り口へ急ぐと、ナタリーが腕を組んで待っている。
「やっと来たわね。ほら、早くくじを引いて」
「ありがとう!」
紙を開くと、そこには大きく『B』の文字。
「Bチームはあっちよ」
「助かったわ」
そのとき、ひょいっと後ろから顔を覗かせる人物がいた。
「あー、俺はAだった。別チームだな、残念」
「……お互い、頑張りましょうね」
ラファエルとは違うチーム。
小さく息を整え、Bチームの集合場所へ向かう。
「皆さん、よろしくお願いいたします」
「アリーヌ嬢もBか。これは心強いな」
(マクシム先輩……?)
魔導士だったとは知らなかった。
少し、緊張が解ける。
そこへ、ナタリーが来て2枚のカードを差し出した。
「魔導擬装体の種類を決めるカードよ」
「了解。ありがとう」
マクシムが引いたカードには、一羽の鷹が描かれていた。
「……鷹か」
「高度を取られると厄介ですね」
「誰かを狙って降りてきた瞬間を狙おう」
「了解です」
「声を掛け合っていこう」
「「はい!」」
やがて、Aチームが大型蠍の魔導擬装体を撃破し、拍手と歓声の中で交代となる。
――次の瞬間。
目の前で、巨大な鷹型の魔導擬装体が羽ばたいた。
一斉に魔法が放たれる。
私も雷の魔力を強く練り上げ、狙いを定めた。
――直撃。
「……!」
怒りに満ちた鷹の視線が、こちらを捉える。
一直線に、私へ向かって突進してきた。
ぎりぎりまで引きつける。
炎が吐き出され、距離が一気に詰まった、その瞬間――
轟音。
マクシムの雷が、鷹の腹部を正確に貫いた。
「っ――!」
巨体が悲鳴を上げ、地面へと叩き落とされる。
「おい。無茶するなよ」
「信じておりましたので」
「……そういうのは、事前に言ってくれ。でも――よくやった」
ぽん、と。
頭の上に置かれた手の温度に、思わず力が抜けた。
勝利の歓声に包まれて、自然と笑みがこぼれる。
そのときだった。
ふと、視線を感じて顔を上げる。
競技場の入り口。
そこに立つ殿下と、目が合った。
距離があるせいで、表情はよく見えない。
けれど――その瞳だけが、妙に鋭く、こちらを捉えていた。
そして、このときの私はまだ気づいていなかった。
その視線とは別に、もう一つ。
私を静かに観察する目があったことを。




