49. 魔導大会への序章
「魔導大会まで、いよいよあと一ヶ月だ」
入学してから初めて迎える、大規模な行事。
運用は、生徒会に一任されている。
「今日から準備を始める。担当は配った紙に書いてあるから、各自確認して、同じ担当同士で集まってくれ」
紙に目を落とすと、私の担当は
――『魔導士 vs 魔導擬装体』。
「あら、アリーヌとは別の担当になっちゃったわ。でも私、王太子殿下と同じよ。なんかごめんね」
「ちょっと、なんで謝るのよ」
「ふふ」
軽く手を振って、ナタリーは向こうへ行ってしまった。
「セドリック! アリーヌ嬢! ラファエル!」
マクシムに呼ばれ、そちらへ向かう。
どうやら、この四人が同じ担当らしい。
セドリック・コスト伯爵令息。
一つ上の先輩で、彼の家は魔導研究機関を率いていることで有名だ。
「去年の資料を用意してある。まずは各自、目を通しておいてくれ」
そう言って、束になった書類を配られる。
「それから、明日は研究機関を訪問する予定だ。来賓の確認と、魔導擬装体の貸し出しについて打ち合わせを行う。
今日はここまでにしよう。解散で」
終わるのが早い。
――さすが、生徒会長だ。
生徒会室を出て、ラファエルと並んで廊下を歩く。
「魔導士は二手に分かれて戦うらしいな。本番のチームは、その場でくじ引きだってさ」
「そうなのですね。知りませんでしたわ」
「最近、在学中に魔導士資格を取る生徒が増えたから、方式が変わったって」
魔物の出現が増え、それに伴って魔導士を志す者も増えているらしい。
危険な仕事ではあるけれど、その分、待遇が良いのも事実だ。
「だから組み合わせは運次第だな」
そう言って、ラファエルは少し笑う。
「できれば、戦いやすい相手がいいし……アリーヌ嬢と同じチームがいいんだけど」
「ふふ。ラファエル様が一緒でしたら、心強いですわ」
「でも、こればっかりは仕方ないか」
そう言って肩をすくめるラファエルに、私も小さく頷いた。
「魔導擬装体相手とはいえ、本番は人前ですものね。失敗はできませんわ」
「だよな。しかも、王宮の魔導騎士団や研究機関の貴賓も来る大会だし」
「そうですわね……緊張してきました」
「まぁ、アリーヌ嬢なら大丈夫だって。あの雷魔法の威力、正直反則だし」
「それは言い過ぎですわ」
照れ笑いを浮かべながらも、自然と拳を握る。
魔導大会は、ただの催しではない。
魔導士としての力も、覚悟も――きっと、試される。
(中途半端な姿は、見せられないわね)
そう心に決めたところで、校門が見えた。
ちらほらと下校する生徒が歩いている。
「じゃあ、また明日な」
「ええ。資料、きちんと目を通しておきます」
そうして、魔導大会に向けた日々が、静かに、けれど確実に動き始めた。




