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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第三章 学園一年生

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46. 作戦B崩壊

「……なんで避けるの?」

「避けてなど――」

「嘘つき」


 逃げ場を失わせるような視線に、胸がざわついた。


「……もしかして、この前のデート、楽しくなかった?」

「とても楽しかったですわ」

「なら、どうして――」

「……からです」

「ん? 聞こえない」


 喉がきゅっと締まる。

 恥ずかしさが一気に上がって、顔が熱に浮く。


(もう……知らないっ! 作戦B、こんな初手で崩れるなんて聞いてないわ……!)


「このままだと、勘違いしてしまうからです!」

「何を……?」

「せ、政略結婚で仮婚約なのに……シリルが思ったより優しくするから!」

「だから……?」

「す、好きになってしまいそうで……!」


 言葉が落ちた瞬間、時間が止まったように静まった。


 恐る恐る顔を上げると――殿下は、真っ赤になって固まっている。


「み、見ないで……っ」


 腕で顔を隠し、耳まで真っ赤に染まっていた。


(え、えっ……これはどういう反応?)


「シリル……?」

「ご、ごめん……ちょっと待って……心の準備が……できてなくて……」


 つられて頬が熱くなる。


(わ、私……変なこと言ったっけ!?)


 混乱しているうちに、殿下がかすかに息をつき、顔を出した。


「勘違いじゃないよ。将来、結婚する予定なんだし……お互い、好意を持った方が幸せでしょ?」

「それは……そう、ですが……」


 本当は――来年、あなたはヒロインに恋をする。

 でもそんな未来を言えるはずもなく、唇がかすかに震えた。


「だから、もう避けないでほしい。……でないと、本当に逃げられないように策を講じるよ?」

「え……」

「冗談だよ」


 全然冗談に聞こえない柔らかな声音に、背筋がひやりとした。


(……作戦B、完全に破綻しているのでは?)


「……わかりましたわ。もう逃げません」

「よかった。ありがとう。……殿下って呼ばれたの、結構きつかったんだよね」

「その代わり、シリルも……もっと手加減してくださいませ」

「んー……それは、難しいかな」

「どうしてですの!?」

「ふふ」


 からかうように笑う。その笑顔に、さっきまでの空気が嘘のように溶けた。


「さあ、帰ろうか」

「はい」

「あ、そうだ。生徒会の件だけど、侯爵家以上の者は全員、生徒会に入る決まりなんだ」

「そうなのですね」

「だから、明日の放課後は生徒会室に来てね」

「了解いたしましたわ」


 カチャリ、と鍵が外れる音。

 夕陽が差し込む廊下は、さっきより少しだけ眩しかった。


(……はぁ。本気でどうしよう。なかなかうまくいかないわね……)


 そう思いながら、ふたり並んで歩き出した。

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