↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第三章 学園一年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/63

41. 知りたくて

 街を歩いているうちに、いつの間にか昼時になっていた。


「シリー、あちらのお店が美味しいですわ。どうでしょう?」

「いいね、入ろう」


 案内したのは、ハンバーグで有名なレストラン。

 手頃で美味しいと評判のその店はすでに混雑していたが、運よく席に座ることができた。


「おすすめは?」

「初めてなら、定番のデミグラスソースですね」

「じゃあ、僕はそれにするよ」

「私も久しぶりにいただこうかしら」


 注文を終えると、殿下がこちらを見つめていることに気づく。

 いつもの王太子の表情ではなく、柔らかい笑みだった。


「どうかなさいました?」

「いや……気をつけないと顔が緩――」


 隣の席から上がった大きな笑い声に、殿下の言葉が消される。


「聞こえませんでした。もう一度お願いします」

「いや、いいよ」


 ほんの少し照れた彼の表情に、胸の奥が温かくなる。


「そういえば……シリーのこと、あまり知りませんわ」

「そう?」

「ですから、質問してもよろしいですか?」

「もちろん」


「では――好きな食べ物は?」

「……えっ」


 殿下は小さく吹き出し、肩を揺らしながら笑い出した。


「な、何がおかしいんですの!?」

「いや、ごめん。もっと重大な質問かと思ってね。……好きなのは、白葡萄のコンポート。母上が作ってくれるものが特別美味しいんだ」

「素敵ですわね」

「作ってくれてもいいよ?」

「作りません!」


 ちょうどそのタイミングで料理が運ばれた。

 ハンバーグにナイフを入れると熱々の肉汁がこぼれ、口に運ぶとほろりとほどける。


「じゃあ次は僕から」

「はい」

「アリの好きな花は?」

「うーん……どれも好きですが、やはり薔薇でしょうか。うちの庭の薔薇はとても綺麗なんです」

「そう。いつか見たいな」

「六月が見頃なので、ぜひ来年いらしてください。シリーは桔梗がお好きですよね?」

「好きなのは白百合だよ」

「……え? でも、贈り物はいつも桔梗で――」

「それは、アリーヌには桔梗を身につけていてほしいから」

「……? どういう意味ですの」

「ふふ、似合うって意味」


 誤魔化された気がする。けれど、胸が少しだけくすぐったい。


「では次の質問ですわ。犬派? 猫派?」

「猫派だね」

「まあ! 私は犬派です!」

「犬も好きだけど、猫の気ままさが魅力じゃない?」

「犬の忠誠心のほうが素敵ですわ!」

「自由に生きる猫のほうが僕は好きだな」


 犬派と猫派の“戦い”は、食事が終わるまで続いた。

 殿下の熱弁に少し揺らいだけれど――やっぱり犬派は譲れなかった。


「次、寄りたい場所があるんだ。いい?」

「もちろんですわ」


 店を出たあと、殿下は迷わず一軒の店へ足を向けた。

 高級ジュエリー店――煌びやかな光が並ぶ。


「母上への贈り物を頼まれていてね」

「そうでしたのね」


 殿下が店員と話している間、私はショーケースを見て歩く。

 その中で、一つだけそっと前に置かれたアクセサリーが目に留まった。


 淡い青をたたえるアクアマリンのネックレス。

 光を受けるたび、ふわりと水面のきらめきのように色を返す。

 金のチェーンは極細で、糸のように繊細でありながら、近づくと温かみのある輝きを宿していた。


(……綺麗。殿下みたい)


 手持ちがないので今日は見るだけ――そう思ったところで、殿下が戻ってきた。


「待たせたね」

「いえ。いいものは見つかりましたか?」

「きっと母上も喜ぶよ」

「それなら良かったですわ」

「じゃあ、行こう」


 殿下が扉を押し開ける。


 差し込む外の光が眩しく、私はそっとまばたきした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。