↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第二章 魔導訓練

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/60

36. また会う日まで

「また半年後な」

「ええ、学園でお会いしましょう」


 ラファエルが手を振りながら馬車へ乗り込む。

 寮の前は帰宅する生徒たちで賑わい、まだ祝宴の余韻が残っていた。


「お姉さま……」

「ローズ?」

「お茶会、開きます! 遊びにも行きますし、街へも行きましょう!」

「ええ。楽しみにしているわ」


 ローズは名残惜しそうに私の手を握りしめる。


「ふふ、呼ばれているわよ。そろそろ行かないと」

「そうですわね……またお泊まり会もしましょう」

「もちろん」


 そう言うと、しぶしぶといった様子で手が離れる。

 ローズは何度も振り返りながら馬車に乗り込んでいった。


「アリーヌ嬢。これにて失礼します」


 背後から声がして振り返ると、エリックが控えめに礼をしていた。


「エリック様、お疲れ様でした。それから……ここだけの話。シリルに頼まれて護衛として来ていたのでしょう?」

「……それは、殿下に直接お聞きください」


 ほぼ肯定だ。

 誘拐事件が影響しているのかもしれない。


(……本当に、心配性なんだから)


 エリックはそれ以上何も言わず、馬車に乗り込んで去っていった。


「さて……私も帰る準備の続きね」


 部屋に戻り、荷物を整理していると、金の装飾が施された一冊の本が目に入る。

 手に取ると、背筋が自然と伸びた。


(そろそろ、対策を練らないと……)


 忘れていたわけではない。

 ただ、“悪役令嬢の学園入学前”については、物語には何も描かれていない。

 私にとっては、完全な未知の期間だった。


(もう一度、読み返しておきましょう)


 物語が動き始めるのは主人公が学園へ入る時――来年の秋。

 それまでにできることは、きっとある。


 そう思い、本をカバンに滑り込ませた。



「……よし。準備完了」


 荷物をまとめ終えて階段を降りると、一階の広間でお祖母様が待っていた。


「お祖母様。本当に、お世話になりました」

「お疲れさま。いい顔になったじゃないか」


 静かに抱きしめられる。

 その温かさには、旅立ちの寂しさと背中を押す安心が滲んでいた。


「アリーヌ。怖かったこと、悔しかったこと、嬉しかったこと……全部忘れなくていい。

 でも、それ以上に――これからのことを大切にしなさい」

「……はい」


 返事をすると、お祖母様は目を細める。


「アリーヌは私の誇りだよ。何があっても、私は味方だからね」


 思わず息が詰まる。

 胸がじんと熱くなった。


「……また、来てもいいですか?」

「もちろん。帰りたくなったら帰っておいで。

 ――いつまでも、アリーヌの家だよ」


 私は小さく頷き、馬車へ乗り込む。

 扉が閉まる瞬間、お祖母様がゆっくりと手を振った。


「行ってらっしゃい、アリーヌ」


 馬車が動き出す。

 見えなくなるまで、私は手を振り続けた。


 そして、窓の外の景色がゆっくりと流れていく中、私はそっと本を開く。


(未来は変えられる。必ず――)


 そう信じて、私は本のページをめくった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。