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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第二章 魔導訓練

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35. 祝宴の夜

 ――ざわざわ、ざわ……。


 かつて、オリエンテーションで集まったホール。

 テーブルが並び、色とりどりの料理が華やかに広がっている。


 ただ、あの頃とは違う。

 この場にいるのは――厳しい訓練を乗り越えた、50名弱の精鋭だけだった。


「お姉さま? どうされましたの?」

「ふふ。向こうから駆けてきたローズのことを思い出したのよ」

「そうでしたわね。あれが始まりでしたわ」

「ええ。長かったようで、あっという間だったわね」


 半年。

 骨が軋む訓練、夜明け前の走り込み、何度も倒れた実戦――

 たった一言では語りきれない時間だった。


 痛みも、涙も、迷いもあった。

 それでも――確かに前へ進んだ。


「皆さん、魔導士試験お疲れ様でした。合格者は登録手続きがありますので、後ほど担当者の案内に従ってください。

 ――さて」


 ピィィッ!


 壇上のお祖母様が突然笛を鳴らす。

 直後、扉が勢いよく開き、討伐隊の面々が雪崩れ込んでくる。


「本日の訓練修了と、我らが新人魔導士誕生を祝うぞっ!!

 グラスを手に――乾杯!!」

「「乾杯ーーーっ!!」」


 笑い声が跳ね、音楽が流れ、宴が始まった。



「お姉さまとラファエル様は、今年の秋から学園に通われるのですよね?」

「そうね」

「いいなぁ……私も今年入学できません? 飛び級とかで」

「飛び級って……その頭じゃ絶対無理だろ」

「ッ……今、ものすごく失礼なこと言いましたわよね!?」


 ローズがいつも通りぷくっと頬を膨らませる。

 この愛らしいやり取りも、しばらく聞けなくなるのかと思うと――胸が少し寂しくなる。


「同じ学年ではないけれど、来年には学園で会えるわ。もう少し我慢ね」

「うう……会う頻度が減ってしまいますわ……」

「ふふ。ラファエル様にもね?」

「俺!? いや……別に減っても……」

「そうですわよ! 清々するってもんですわ!」

「ローズ嬢、お前な……!」


 笑い声が絶えず、楽しい時間が過ぎていく。


「おっ、うちの見習い達はここにいたか!」

「隊長!」


 オベール隊長が笑いながら近づいてくる。


「よくやったな。誇っていいぞ。

 ……それにしても、ベルナール。最後の実戦で少し動きが硬かったな?」

「えっ、気づいて……」

「当たり前だ。でも失敗を恐れる必要はない。あれくらいの暴走を立て直せないなら、隊長の名折れだ!」


 豪快に肩を叩かれ、思わずよろめく。

 ……かなり飲んでいる。


 そして隊長が立ち去った直後――


「……素敵、ですわ……!」

「ローズ!?」

「筋肉……触りたいですわ……!」

「まじかよ……」


 落胆するラファエルの肩に、そっと手を添える。


「アリーヌ」

「お祖母様!」


 振り向くと、お祖母様が穏やかな笑みを浮かべ立っていた。


「三人とも――よくやった。その成長を誇りに思うよ」

「「ありがとうございます!」」


 声が重なった瞬間、視界がふっと滲んだ。


(……うん。本当に。私はここまで来られた)


 誇りと安堵が胸に広がる。

 その温かさは、夜が更けても胸の奥で静かに灯り続けていた。

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