33. 魔導士試験へ
「昨日のアリーヌ嬢、本当にすごかった。
指示も的確だったし、最後の雷――痺れたぜ」
開口一番そう言ったのはラファエルだった。
「そんな! お姉さまの勇姿、見たかったですわ!」
言いながらローズが隣に座る。
昨日の戦闘を終えて訓練場に戻ったとき、ちょうどローズの討伐隊も帰還したところだった。
そこでばったり顔を合わせ、気づけばこうして集まっている。
パンの香ばしい匂いと温かいスープ。
食器の触れ合う音と、賑やかな声。
この空気が、少し前よりずっと優しく感じる。
「残念だったな、ローズ嬢」
「……悔しい!」
「もう、二人とも何言ってるのよ」
困ったように笑う私を、ローズがじっと見つめた。
さっきまで騒いでいた瞳が、ふっと真剣になる。
「悩んでいる時のお姉さまも素敵でしたけれど……やっぱり、前を向いているお姉さまが好きですわ」
「……心配かけたわね」
「本当ですわ! 心配しました!!」
ローズはぷくりと頬を膨らませた。
「正直さ……アリーヌ嬢とミア嬢がいなくなったとき、俺……どうしたらいいかわかんなかった」
ラファエルが照れくさそうにパンをちぎる。
「……ごめんなさい」
「いや、謝ることじゃない。戻ってきてくれて――本当によかった」
その言葉が胸の奥に静かに落ちた。
じんわりと温かくて、泣きそうになる。
「そういえば!」
ローズがぱっと話題を変えた。
「魔導士試験がもうすぐですわよね?」
「ああ。次の討伐が終わったら試験だよな」
「筆記もあるのでしたっけ……? 不安ですわ。お姉さま、一緒に勉強してください!」
「もちろん。みんなで頑張りましょう」
そう答えた瞬間、自然と笑みがこぼれた。
ああ――今度こそ、ひとりじゃない。
◇
その日から、討伐と訓練、そして勉強会が始まった。
討伐では連携を確認し合い、夜は教室に集まってみんなで筆記対策をする。
問題に悩んで頭を抱えたり、眠気に負けて机に突っ伏したり、些細なことで笑い合ったり。
そんな時間が、いつの間にか宝物になっていた。
――そしてついに。
魔導士資格試験当日。
張り詰めた空気に、緊張で喉が渇く。
静かな会場で、みんなの呼吸まで聞こえる気がした。
(大丈夫。大丈夫……私は、もう立ち止まらない)
やがて、試験開始の合図が響く。
紙をめくる音、走るペンの気配に心が揺れるが――
(焦らない。自分のペースで)
夜の勉強会で取り組んだ範囲からも多く出題され、思った以上に手が動く。
最後まで見直し、深く息を吐いた。
(――よし。できることはやった)
次は討伐試験。
ここからが本番だ。




