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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第二章 魔導訓練

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27. 蘇る悪夢

 「気をつけろ!!」


 隊長の声と同時に、巨大な蛇型の魔物が尾を振り上げた。


 ――ドガァァッ


 地面が砕け、祭壇が吹き飛ぶ。

 ステンドグラスの破片が、虹色の雪みたいに宙を舞った。


「動きを止める! 援護を!」


 ベテラン魔導士二人が手をかざし、蛇の周囲の砂が隆起する。

 砂に捕らわれた巨体が、のたうち回りながら怒り狂ったように唸った。


 合図と同時に、剣を持った騎士が地を蹴り、一気に間合いを詰める。


「……っ!」


 鋭い刃が蛇の右目に突き立った。


「ギャアアアアッ!!」


 魔物が凄まじい悲鳴を上げる。黒い体液が飛び散り、熱を帯びた砂の上に染み込んだ。


 しかし次の瞬間――


 地面が盛り上がる。

 砂壁が内側から爆ぜ、その衝撃で仲間が吹き飛んだ。


 痛みをこらえる呻き声があがる。


「今だ! 畳みかけろ!!」


 魔法と鋼の光が交差し、怒涛のように攻撃が続く。

 蛇が怯んだ瞬間を狙い、さらに追撃を加える――が。


 ずるり、と大蛇が砂の中に潜った。


「……ど、どこ……?」


 地の底から響くような振動だけが空気を震わせる。


「ベルナール、左だ!!」


 叫びと同時に、蛇が砂を割って姿を見せる。

 私は跳ねるように距離を取った。


 ――そのとき。


「きゃっ……!」


 ミアが足を取られ、砂の上に倒れ込む。

 蛇は、ねっとりと舌を伸ばしながら、確実に彼女へと近づいた。


「危ない!!」


 脳裏が真っ白になる。

 あの――アルベルクでの襲撃の光景が蘇る。


「……あ……ああ……」


 ミアは恐怖で身体を固め、逃げることすらできていない。


 気づけば、私はもう走り出していた。

 助けなきゃ。守らなきゃ。それだけで体が勝手に動く。


 ――だが、これが失敗だった。


 蛇と対峙した瞬間、周囲の岩がボゴリと浮き上がる。

 鋭い赤い瞳が、逃げ場を塞ぐ。


(落ち着け……大丈夫、集中するのよ……!)


 そう言い聞かせても、心臓は暴れ馬みたいに暴れ、呼吸は浅くなる。


 岩が、唸りを上げて飛んでくる。


(ありったけの魔力をぶつけないと)


 血が沸騰するみたいに熱くなる。

 魔力を集めようとしたはずが、逆に溢れ出して――止まらない。


(……まずい……)


 手首のブレスレットが熱を持つが、間に合わない。


 空気がビリビリと震える。耳鳴りがする。

 砂が浮き、周囲の小石がざわめいた。


 魔力が暴風みたいに渦を巻き、視界がゆらぐ。


「下がれ!!」


 誰かの声が聞こえた。

 でも、もう遅い。


 ――そのとき。


 ブレスレットが眩い光を放った。


(……きれい……)


 その光に触れた瞬間、世界がふっと遠ざかる。


 私はそのまま――静かに意識を手放した。

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