26. 初陣
――シャリ。
ついに私たちは封鎖区域へ足を踏み入れた。
「……お、早速いるな」
隊長が立ち止まり、目を細める。
その視線の先では、黒いトカゲの群れが、じわりと砂の下から姿を現した。
いくつもの赤い瞳が、獲物を見据えるように光る。
「よし、まずは見習いたちのお手並み拝見といこう。ベルナールは右、アンドレは左、ポワリエは中央を任せた」
「了解です!」
指示と同時に、右へ駆けた。
私のすぐ後ろには、一定の距離を保ちながらエリックがついてくる。
魔導士と騎士は基本的にペアで行動する。つまり、彼が私の護衛ということだ。
背後からは、すでに剣戟の音と魔法が弾ける音が響く。
と同時に、一体の黒いトカゲがこちらを認識した。
赤い瞳と視線が合う。
息が止まる。
その瞬間、甲高い咆哮が空気を裂いた。
「……行きますわ」
トカゲが炎を吐きながら突っ込んでくる。
私は身をひねってそれを避け、雷を放とうとするも――素早い動きに阻まれる。
「でしたら……」
砂地で足が沈む。それでも止まれない。
足元の砂を巻き上げ、半円状の土壁を生成し、トカゲたちの動きを止めた。
動きが鈍った瞬間、私は指先が痺れるほど魔力を集中させる。
――ピシャァッ!
砂煙を裂いて、雷が走る。
焦げた匂いが一瞬漂う。
黒い身体が崩れ落ち、静かに粒子となって消えていった。
「……お見事」
背後から、落ち着いた声が響く。
振り返ると、エリックはすでに仲間の方へ歩いていた。
私は慌ててその背中を追う。
皆が合流すると、隊長が私たちを見渡して言った。
「初戦闘にしては悪くない。三人ともいい判断だった。
だが――魔力の出力がまだ荒い。次は余裕を持て」
「「はい!」」
息をつく暇もなく、私たちは次の魔物が潜む建物へ進む。
崩れた柱と蔦が絡み、足場はひどく悪かった。
そんな中、小型や中型の魔物は次々と襲ってくる。
そのたびに倒し、前へ進んだ。
「ベルナール! その威力だと巻き添えが出る! 魔力量を絞れ!」
「……っ、はい!」
まだ出力調整は難しい。
私自身、魔力量が大きい分、丁寧に扱わなければ暴走にも繋がる。
そう意識しながら進むこと、およそ数時間。
夕陽が差し込む広間へと辿り着いた。
「……ここは」
祭壇が置かれたその部屋は、ステンドグラスに照らされ神々しく輝いていた。
静かで荘厳な空気――しかし、その空気はすぐに破られる。
地鳴り。空気が震える。
「……来るぞ!!」
砂が爆ぜるように舞い上がり、巨大な影が姿を現した。
「っ……!」
真っ赤な舌が、ゆらりと揺れる。
見上げるほどの巨大な蛇が、そこにはいた。




