番外編2 お泊まり会
ついに迎えたお姉さまとのお泊まり会。
本当はもっと早く開催されるはずだったのに、私が風邪をひいて延期になってしまったのだ。
胸を弾ませながら、私はお姉さまのいるお屋敷を訪れた。
「お祖母様、ローズですわ」
「本日はよろしくお願いいたします」
スッとカーテシーをすると、お姉さまにそっくりの金色の瞳が柔らかく細められた。
「いらっしゃい。そんなに畏まらなくていいよ」
「恐縮ですわ」
お姉さまと目が合うと、ふわりと笑って「部屋はこっちよ」と案内してくれる。
「まぁ……可愛らしいお部屋ですわね」
「ありがとう。お祖母様が用意してくれたの」
「趣味まで素敵だなんて……お姉さまのお祖母様、何者なのですの!?」
思わず身を乗り出すと、紅茶を運んできたメイドが小さく笑った。
フルーティーな香りが部屋に広がる。
「お祖母様はね、昔は魔導騎士団長だったのよ」
「まあ、それはすごいですわ!」
「私と同じで魔力量が多くてね。雷魔法で魔物を薙ぎ倒す姿から“稲妻の悪魔”って呼ばれてたらしいわ」
くすくす笑うお姉さまの横顔があまりにも自然で、強くて、美しくて――思わず見惚れてしまった。
◇
宿題を終え、ご飯を食べ、お風呂にも入り――気づけばもう就寝時間。
ゆるい寝巻きを着たお姉さまは、いつもより少し柔らかい雰囲気で、胸がきゅっとなった。
「あれ?」
「どうしたの、ローズ?」
「いえ……お姉さまのブレスレット、私のとちょっと違いません?」
私のブレスレットは、ただの金の輪。兄のものと同じ、質実剛健な形。
対してお姉さまのものは、アクアマリンの宝石がはめ込まれ、繊細な細工が施されている。
「お姉さまも陛下からいただいたのですよね?」
「そうよ」
「王太子殿下の瞳の色と同じで、ぴったりですわね!」
「……言われてみれば、そうね?」
初めて気づいたのか、お姉さまは驚いたようにブレスレットを見つめた。
その表情が可愛くて、胸が温かくなる。
「ふふ、案外、王太子殿下がご用意したものだったりして?」
「これをもらった時は、まだ知らない仲だったのよ。それはないでしょうね」
「まあ……残念ですわ」
少しからかってしまったけれど、お姉さまは困ったように笑ってくれた。
「そういえば、この前のラファエル様とのペア実習はどうだったの?」
「それ、聞いちゃいます……?」
「ふふ。こちらの方まで賑やかな声が聞こえてきたのだけれど?」
「ひどいんですのよ! 私が魔法を撃つ前に、全部ラファエル様が魔導擬装体を倒してしまうんですの! 私だってやりたいのに!」
「それで喧嘩したのね?」
お姉さまがにこにこしているのが、なんだか悔しい。
「そうですわ! 弱いお嬢様は後ろに下がってろなんて言って! 私の方が魔力量も攻撃魔法の威力も強いのに!
……まぁ、的に当てるのが上手いのは認めますけれど」
うっかり小声で付け加えてしまい、少しだけ顔が熱くなる。
「ふふ……楽しそうで良かったわ」
「お姉さまっ……!」
布団の上であれこれ話して、笑って、愚痴って――
気づけば、夜が更けていた。
やっぱり、お姉さまは最高ですわ。




