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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第二章 魔導訓練

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17. 養成所の門をくぐって

 ――ざわざわ、ざわ……。


 オリエンテーションが行われる広大なホールへ足を踏み入れた瞬間、むわりと熱気が押し寄せた。

 視界いっぱいに人の背が続き、ざっと見ても千人は下らない。


 これから、この人たちと一緒に魔導士として学び、鍛えられるのかと思うと、胸の奥がそっと熱くなる。


「お姉さまーっ!!」


 弾む声に、反射的に振り返った。

 黒髪のツインテールを揺らしながら駆け寄ってくる少女の姿が目に飛び込んでくる。


「……ローズ?」

「お姉さまっ!! やっぱり本当に来ていました!」


 満面の笑みを浮かべたのは、ルデュック公爵家の長女、ローズ・ルデュック。

 ひとつ下の幼馴染で、昔からなぜか私を“お姉さま”と呼ぶ可愛らしい子だ。

 興奮で潤む濃いピンク色の瞳が、きらきらと輝いている。

 ここ数年は留学していたはずだけれど――。


「なんでローズがここにいるの? 留学は?」

「お姉さまがここへ来られると聞きまして!」

「……ローズ、本当のことを」

「うっ……ば、バレてしまいましたわね」


 観念したように、ローズは胸元を押さえて小さく肩をすくめた。


「……実は、つい一ヶ月前に留学先での履修が全て終わったのですが、帰国したら“魔力コントロールが甘い”と言われまして……」

「まぁ、そんなことを言われたの?」

「お父様は“良い経験になるだろう”とだけおっしゃっていたのですが……お兄様がこっそり教えてくださったのです」


 ローズは声を潜め、周囲をちらりと見回した。


「どうやら、“どこかの偉い方からの推薦”があったらしいですわ」


 その言葉に、思わず息をのんだ。


「偉い方……?」

「はい。でも、理由なんてどうでもよいのです! こうしてお姉さまとご一緒できるのですもの!」


 ローズは、はにかむように笑って私の手を取った。


(……まさかね?)


 胸の奥の疑念を振り払うように目を瞬かせ、小さく息を吐いた。



 オリエンテーションでは、養成期間の流れや規則の説明に続き、簡易的な魔力量テストが行われた。

 慣れない魔力の使用で、肩も背中もどっと重い。


「疲れましたわぁ……」

「ええ、今日は帰ってすぐ休みたいくらいだわ」


 人混みを避けながら歩いていると、ローズがふと思い出したように言った。


「そういえば、お姉さまは寮にはお泊まりにならないのですよね?」

「ええ。お祖母様のお屋敷に滞在しているの」

「……お姉さまとお泊まりしたかったのに……」


 しゅんと肩を落とすローズが可愛らしくて、小さく笑った。


「お祖母様が許してくださるなら、今度泊まりに来る?」

「……い、いいのですか!?」

「もちろんよ」


 ローズの顔がぱぁっと輝いた。


「絶対ですわよ! 絶対に泊まりに行きますからね!!」


 勢いよく指を立てて念押しした後、ローズは寮へ駆けていった。

 その背を見送りながら、胸の奥でそっと息を吸う。


(……よし。明日から、頑張らないと)


 そう気合いを入れなおし、静かな夜気の中、お祖母様のお屋敷へと足を向けた。

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