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断罪の未来を避けたいのに、王太子から逃げられません 〜この人の想いを信じてもいいですか〜  作者: 華舞 このは
第二章 魔導訓練

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17/24

番外編1 王宮の片隅で、私は見ていた

 社交の場では、将来の商売のためにも顔を売っておくのが大事。


 私はナタリー・ルコント。

 今夜も愛想よく挨拶を重ね、ひとまず区切りをつけたところだった。


 ふと、会場が静まり返る。


 このパーティーで最も注目を浴びている二人が歩み出しただけで、空気が変わったのが分かった。


(これは見逃せないわね)


 手元のグラスをそっと置き、周囲を観察する。


 親友のアリーヌと、その婚約者である王太子殿下がダンスフロアへ進んでいく。

 楽団の旋律に合わせて踊り始めた二人は、まるで光を纏ったかのように美しかった。


 シリル殿下を狙っていた令嬢たちは、アリーヌの眩しいほどの美しさと品格にざわつき、嫉妬とも羨望ともつかぬ視線を投げている。

 入場時からアリーヌを目で追っていた若い男性陣はそろって肩を落とし、静かに現実を受け入れていた。


 そして――

 陛下、王妃殿下、公爵閣下といった上位貴族の一部が、なぜか“諦め”の色を浮かべているのが目に留まる。


(婚約の時、裏で何かあったのかしら……?)


 アリーヌを見るかぎり、この婚約は彼女が望んだものではない。

 政略の気配はある。

 でも――あのベルナール公爵一家が、娘をただの駒のように扱うはずがない。


(分からないわね……)


 ふと、王太子殿下の顔が視界に入る。


 柔らかな笑み。

 けれど、その瞳の奥に宿っていたのは――黒い炎。


 一瞬の見間違いだと思ったが、そうではなかった。


(……ああ、そういうこと)


 涼しい顔で踊るアリーヌに目を戻し、私は小さく息をつく。

 アリーヌはまだ、自分を取り巻く本当の温度に気づいていない。

 現実は、彼女が思うよりずっと熱を帯びているのに。


(アリーヌ……あなた、きっともう逃げられないわよ)


 彼女は、何も知らないまま、ただ音楽に身を委ねて美しく舞っている。

 あの清らかな優雅さが、かえって危うく見えるほどに。


「あなたはあなたのままでいて。たとえどんな状況でも」


 私は誰にも聞こえない声で、親友へとそっとエールを送った。

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