第二話:I'm not calling the phone, I'm calling you.
スマホは深夜の暗闇の中で待ち受け画面が光り輝いている。
この時の違和感をなぜ考えなかったのか……
拾ったスマホ、待ち受け画面が今の時刻を指している。
「0:15」
触るとホーム画面に飛ぶ。
……?!ロックが掛かっていない?!いやいや……無防備すぎるだろ。
ホーム画面には標準的なUIのアイコンが並ぶ。
壁紙はデフォルトっぽく見えるが、ピンクや水色と言った明るい中間色がメインの若い女性が好きそうな色合いという印象がある。
より背徳感が高まる。
「女性だったら猶更――」
ピリリリ……ピリリリィ……
直後にスマホは震えてけたたましく鳴り響く
私は「心臓が止まる」という驚きの感覚をこれまで体験したことが無かったので、本当に心臓が跳ね上がる瞬間というのがあるのだと、どうでもよいことに感動しつつも、慌てて取り落とさなかった自分に感謝しつつ着信画面を見る。
「公衆電話」と着信名に出ている。
これは、さぞかし困った落とし主が、自分の携帯電話番号に公衆電話からかけているのだろうと察し、この時には直前の動揺もあったかもしれないが何の疑いもなく応答ボタンを押していた。
「もしもし?」
「はっ」という受話器の向こうから聞こえてくる息をのむ音――
コレは良くないと思い、懸命に言い訳っぽく現状を語る。
「ああ、すいません、私は丁度今〇〇町の三叉路のところで、このスマホを見つけたところでして……勝手ながら拾ったところ着信が来たので……落とし主さんでしたら、あの、指定いただければお届けでも何なら交番に届けるでも対応いたしますが……」
「あはっ!」
かけてきた主は、何故か楽しそうに笑った。
「え?……あの、何か?」
「やだぁ~お兄ちゃんじゃない!拾ってくれたの?!」
「あ……え?……あの?」
「もう、ビックリしちゃったじゃない~でもよかった!そのまま持ってきてね!!」
ガチャ――ツーツーツー
「いやいや、あの……クソ!折り返し!!……って公衆電話ぁ!!」
可愛い声の女性だった……じゃなくて。
心臓に痛みを感じるほどの驚きの後だったので、相手先の明るい女性の声に緊張感が一気に緩んだ。
少しほっこりしたが、問題は大きくなった。
恐らく今電話してきた女性がこのスマホの持ち主に違いない。
彼女は私のことを「お兄ちゃん」と勘違いしていた。
名乗ってもいない。特別特徴のある声だとも思っていない。一体何で私のことをお兄ちゃんなどと……
ちなみに私に妹はいない。




