第十二話:The Shikigami Sanctuary・式神の社
京都駅は大きくビルも近代的なデザインで、古都というイメージではない。
だが市中には至る所に伝統的な木造建築が残っており、複雑でややこしく見える。
駅を降りるとすぐにタクシー乗り場に向かい、そのままタクシーに乗る。
幸い霊的に守られた?新幹線から降りても、今のところ特に何の変化もない。
「新幹線内で『繋がり』が切れたんなら、しばらく安全と思いたいところやけど……」
阿部はここからが本番と言わんばかりに緊張感を漂わせ、またどこかに電話している。
「せや、もう京都駅を出たところや。何?買い物?!……せやかて、春奈姐さん堪忍してや……ああ、分かった」
「何か微妙に不安になるワードが出てたけど……」
「ああ、まあ、こんなことにならん限りはただの主婦だからな……ちょっと途中寄り道せにゃならん」
そう言うと運転手に向かって「ちと悪いんやけどな……〇〇スーパーあるやろ……せや、そこに寄ってもらえへん?」「それはちょっと遠回りですよ?」「分かってんねん……頼むで」
タクシーは少し外れた場所のスーパーマーケットへ乗り付ける。
「悪いが近藤は、乗車したまま待っててくれ」
そう言うと、スーパーの前に行き、しばらくすると随分と、何というかボリュームのある紫色のヘアでテンパで丸いサングラスをかけた「おばちゃん」が阿部に連れられてやってきた。
「あんたが今回の……」
その派手なおばちゃんがオレの方をのぞき込む。
香水ではない……線香?お香?の匂いが微かにする。丸グラスの奥の目が見開かれる。
「あんた!……ちょっと、随分なもん持ち込んできはりましたな!!電話では聞いてましたけど……あきまへん!ウチは同乗ムリやわ。あとで追いつくさかいに、先に行っといて!」
とスーパーの方へ戻って行ってしまった。
そんなに酷いのか?……まあ、他人の札付き位牌って冷静に考えてヤバイのは分かる。
だけど、その筋の人が見て「一緒には居られない」ってどんだけ…なんか、改めて今の状況さえ怖くなってくるのだが……
「ほんましゃーないな……電話で説明したっちゅうに。寄り道したのが無駄やんか」
と阿部はそれでも隣に乗り込んでくれる。
「あんなに拒否されると、怖いんだが……阿部は良く付き合ってくれるな」
「ふん……まあ、気にするな。乗り掛かった舟や!(それにもう手遅れや……)」
阿部が最後にぼそっと言った言葉は聞き取れてしまい、心臓がキュッとなった。
まずいな……心臓の負担が。これ普通にストレス性の心不全とかあり得るのでは…?
と余計な心配をする。
タクシーは結局来た道をある程度戻り北上する。
「それで……どこに行くんだ?叔母さんの家か?」
「いや、直接神社に行く」
「神社?」
「せや、晴明神社の系譜だが、大物シバくには周囲に迷惑かけられんと……一条戻橋神社に行く」
「いちじょう…おおはし?」
「義経と弁慶が混ざっとるが、そっちは五条大橋や……戻る橋と書く。安倍晴明の式神が祭られとる」
タクシーは無言で、京都御所の前に停まる。
堀に囲まれた石垣と緑の敷地……
「ここって……公園だよな?御所っていうくらいだから」
「いいから付いて来い」
緑が生い茂る、京都内でも巨大な公園……その中を進むと、小さな鳥居がありそれを通ると静電気に痺れたようなピリっとした感覚がある。
先導する阿部はどんどん先に進む。
小さな社が見えてくる。
「え?小さくね?!」
薄暗い木々の合間によくある道祖神を祭るレベルの小さな社が鎮座していた。
「ここで叔母を待つ」
既に日は落ち、当たりは薄暗く明かりも無い中、風に揺れる木々の擦れる音が恐ろしく聞こえる。
「な、なぁ……阿部よ――」いつまで待てば?と聞こうとした瞬間
「待たせたね……」
阿部の叔母さんともう一人神主の格好をした初老の壮年が現れた。
阿部も驚いたようで「叔母ちゃんそちらの人は?」と聞く。
阿部の叔母さんは豪快に笑いながら自己紹介と神主の紹介をする。
「さっきは悪かったねぇ……可愛い甥っ子から珍しく連絡あったさかい、そんな大したもんやないやろと思ってたら、スーパーのところで見たらあたしじゃ適わんと思ってな……この方は【土御門家】の正当な陰陽師で――」
「寺社杜武士と申す者。よろしく頼む」
白髪の混じった総髪を後ろに垂らし、口の周囲をヒゲが覆い、眼鏡……といういかにもな雰囲気を持っている。
「そこに持っているブツが……うむ。中で話を聞こうか」
というと、小さな社に向かう。
そしておもむろに、社の小さな扉を開いて中に手を入れて何かの操作をする。
なんと、後ろに、ゴゴゴゴゴと音を立てて地下への入り口が現れる。
なんかオカルト越えてSFになって来ているのだが……陰陽師スゲエってなった。




