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森に潜む魔獣

「どこ行ったんだ! 聞こえたら返事しろ」

 何度も声をかけるが、返事はない。熱のせいで速く走れないため、置いてかれてしまった。


 森に入ったのに、意味ないじゃないか。

 大人しく、サナに相談をすればよかった。


 だが、後悔しても遅い。山の中腹までくると、魔獣のうなり声が聞こえてくる。

「誰かいるのか」


 もう一度、声をかけた時だった。

「助けて……だれか……」

 遠くから、助けを呼ぶ声を聞こえた。


 それと同時に、グアアアアアアという重低音が地面を揺らす。

 唇を噛みしめて、意識を保ちながらぼやける視界で向かう。

「誰かっ!」

 声が近付いてきた。


「そこにいるのか」

「――うん、助けてっ」

 少年は目に涙をため、俺を見つめる。

 尻もちをついた彼の傍に寄っていくと、魔獣は口を広げて俺たちに迫っていた。


 少年の前に立ちはだかり、盾になる。

「いや、死にたくないよー」

 後ろからは彼の情けない声が聞こえてきた。


「俺が盾になるから、その間に逃げて」

 少年は俺の言葉を聞き、服の裾で涙を拭った。


「ごめん、ごめんなさい」

 謝りながらも去っていく少年を視界に入れたところで、意識を失った。


 目が覚めると案の定、ベッドの上で、ユウリの顔が天井を遮る。

「ユウラ、何をしてたの」

「えっと、お金稼ぎ?」

「体調が悪い時くらいちゃんと休んで」

 毛布を胸元までかけられ、今回は見張り付きのようだ。


 そんな日々が数日続いたある日。

「ユウラ、お客様が来たよ」

 すっかり元気になった俺は、教会に行く準備を整えているところだった。


「また、外に出ようとしていたね」

「体調良くなったし、ユウリの薬の材料を探さないとだからな」

 てことで、ユウリの横を通り過ぎようとした。


 だが、腕を掴まれ止められてしまう。

「お客様だよ。イリアム侯爵家が来てるよ」

「俺は知らない」

「待って、それが息子を助けてくれたお礼を言いに来たんだって、心当たりない?」

 ユウリの言葉に記憶を掘り起こす。


 侯爵家の人間に会ったことはない。じゃあ、誰かを助けたのは……もしかして、森の中に入った少年?

「とりあえず行ってみる」

「うん」

 応接室に入ると、癖っ毛のある金髪の少年がお父さんと思われる男性の横にちょこんと座っていた。


「お待たせしてすいません。ユウラ・アイジェントと申します」

「いえ、この度は息子のマーシュを助けていただきありがとうございます」

 立ち上がって頭を下げる二人に、顔を上げてもらう。


「自分はたいしたことはしていませんので、気にしないでください」

「ありがたく存じます」

 こういった固い話は苦手なので、すぐに教会へ出向きたかったが、一向に出ていく様子がない。


「あの、他に何か用がありますか?」

 ドストレートに聞く。イリアム侯爵は堪えきれないように笑いだした。


「随分、正直にお聞きになるんですね」

「まどろっこしいのは苦手なので」

 そう言うと、また笑みを浮かべる。


「ユウラ様、うちの息子と友達になっていただけませんか?」

 その提案は、予想外過ぎて思わず「ええっ」と言葉が出るほどだった。

 だって、俺は国全体で嫌われている悪役令息。

 爵位も子爵と釣り合わない。何が目的なんだ。


「この子は、引っ込み思案で人との関りが苦手なんだ。森に入ってしまった時もお茶会から逃げ出していたんだ」

 大体の事情はなんとなく察した。だけど、それならより俺じゃない方が良いじゃないか。


「なんで俺なんですか?」

 自分で言うのは嫌だったため、濁して話す。


「命の恩人ということも理由の一つだが、ユウラ様が噂されているような性格なのか疑問だったので、息子に確認してもらおうかなというのが本音ですね」

 気さくな雰囲気で話される。

 自分のことを知ろうとしてくれている人がいることに、感動した。


「ぜひ、マーシュ様の友達にしてください」


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