モダンルートだったら……(二)
「なんでこんなことになっているんですか!」
一番最初に来たのは、ソフィだった。目に涙を浮かべて、腹に抱きついてくる。
「治癒してくれてありがとう」
「そんなの当り前ですよ」
俺は、包帯を巻かれた足を見て息を吐く。頭からくらわなくてよかった。
足は痛いけど、モダンとアシュリーを助けられてよかった。
「どうして、こんな怪我をしたんですか!」
涙目で訴えるソフィ、扉からシュリス、マーシュ、ユウリも入ってきた。
「そうだぞ、大けがをしたんだ。理由は?」
「それは……」
俺は、なんて言っていいのかわからずに言葉を濁す。ゲームをしていたから、モダンに起こる展開を知っていて――。
こんなこと言ったら最後、疑われるな。
「えっと」
「入るぞ」
どうにか話し出そうとした時だった。再び扉が開き、膝に絆創膏を付けたアシュリーと申し訳なさげに入ってくるモダンの姿が見えた。
どうしてここに――、でも、二人が無事でよかった。
「お前が何の用だよ」
マーシュは次期国王のモダンを睨みつけて、俺を守ってくれる。
「謝りにきたんだ」
その言葉通り、モダンはアシュリーと共に頭を下げた。国王が簡単に頭を下げるなと教育を受けているはずなのに――。
「頭をあげてください」
謝罪を受け入れて、今の状況を変えようとしたが依然としてモダンは地面を見つめている。
「本当にすまなかった。俺とアシュリーはたいした怪我をしていない。君の婚約者を奪ったあげく勘違いで君を傷つけてしまった。本当にすまない」
「私もごめんなさい」
俺は、「大丈夫」だと言ってどうにか顔を上げてもらった。
そこで、もう一つ話さなければいけないことを思い出す。
「モダン様、この先もらう焼き菓子は絶対に食べないでください」
真剣に伝えた。イベントのストーリーの続きだ。鉢植えで相手の女性を傷つけた後、モダンに恨みを持った輩が焼き菓子の差し入れをしてくる。
そのどれもが、毒入りで一つでも食べれば命が危ないものだった。
「これのことか?」
モダンはが手に持っていたのは、ゲームに出てきたのと同じ桃色のリボンでラッピングされた焼き菓子だった。
「それです。絶対に、食べないようにしてください。これからも」
念には念を押して、そのお菓子も預かることにした。
「わかった。食べないようにする」
素直に頷いてくれたため、ほっと息をつく。
「それ、ホントに毒なんか入っているのか?」
マーシュが疑わし気に焼き菓子へと手を伸ばす。俺は、絶対ダメという意思を強く面に出すと彼は動きを止めた。
「わかったよ。食べようとしないから」
「はい、ぜひそうしてください」
「じゃあ、僕が預かるよ」
シュリスは一連の流れを見て、焼き菓子に手をかける。
「食べないでよ」
「ユウラ様、僕は食べませんよ。信頼して」
そんなことを言われると、「うん」としか言えなくなる。
折れた足を治すためにしばらくの間は、まともに動けなくなる。
学園も、行けず自宅療養だ。まぁ、自宅と言ってもマーシュの邸なのだが。モダンが心配で早く治そうと、安静を心掛けている。
「足どう?」
ユウリが、扉からひょっこり顔を出して聞いてくる。
「俺には、こうやっている分には痛みはないけど、動くとちょっとだけ……」
「そっか、僕も半分請け負ってあげたいな」
「半分だけかよ。まぁ、気持ちだけもらっておく」
少し照れて、顔が熱くなる。その様子を見ていたシュリスが、中に入ってきた。
「僕は全部変わってあげたいよ」
包帯が巻かれた足を優しく撫でながら、心配そうな表情を浮かべる。
「ありがとう。だけど、大丈夫だから」
「そう、何か欲しいものがあればどんどん言って」
シュリスは、手に持っていたリンゴを向きながら微笑む。
手先が器用で、あっという間にうさちゃんリンゴにしてくれた。赤い耳の部分の躍動感がすごい。
「ありがと、いただきます」
甘いリンゴをシャクシャクと食べている時。




